-裏-
-表-の兄視点です。R指定は付けませんが、近親相姦注意。
仕事を終えて家に帰ると、俺と2人暮らしをしている妹はソファに座って何かの雑誌を読んでいた。音も無く近付くと、どうやらそれはファッション雑誌の様だった。俺の存在に気付かないくらい集中して見ているらしい。そんなに真剣に見なくたって、お前ならどんな服だって似合うのに。
そっと背後に寄って、妹の頭にあごを乗せる。ねぇ、帰って来たよ。
「おかえり」
やっと俺に気付いた妹は、パッと雑誌から目を離して俺を見。あぁ、やっとこっちを向いてくれた。
「ただいま。ご飯は?」
「今日春雨炒め。温めるね。お風呂先に入ってきたら?」
「うん。ご飯よろしく」
「はいはい」
スーツを脱いで、自室に鞄を置きに行く。ご飯は先に食べてていい、とは言ってあるから一緒に食べる事はあまりないし、食べ終わったら自室で課題をやっていたりする妹。でもレポートなり何だりで色々と忙しいだろうに、俺が帰ってくるこの時間は必ずリビングにいてくれる。なんて可愛い妹なんだろう。
家にいるのに1秒でも顔が見れない時間が惜しくて、風呂はさっさと済ませる。
体は一応しっかり拭くが、髪は雑に拭いておく。リビングに戻ると、妹は俺を見るなりくっと顔を顰めた。
「あーもーまたそんな濡らしたまんまで」
「ん」
「ん、じゃないでしょ。兄さんいくつよ」
「24。ほら早く」
「まったく…」
風呂上がりに髪を濡らしたままで居るのが気になるらしい妹は、毎日俺の髪を拭いてくれる(まぁ俺がねだってるっていうのもあるけど)。小さい頃はよく俺が拭いてあげたもんだけど、妹が成長した今となってはなんだか奥さんに世話焼かれてる新婚の気分だ。あー気持ち良い。
妹が髪を拭き終えると、俺は一言お礼を言って夕飯にありついた。ご飯を食べる時は妹が話しかけてこない限り俺は大抵無言で食べ進める。喋る暇よりも味わう方が大切だから。だって妹がせっかく、俺の為に作った料理だ。味わわずして何とする。
……というのは建前。いや本音でもあるけど。
「…美味しい?」
俺が無言でいると、沈黙が耐えきれないのか、はたまた俺に何も反応が無いのが気になるのか、妹は不安そうに眉尻を下げてそう聞いてくる。そう、俺はこの顔が見たいんだ。とっても可愛い妹が、俺の様子を伺って弱った顔をする、これが。でもその先まで見たいとは思わないから、俺は意地悪せずにきちんと本心を口にする。
「うん、美味しい。お前の料理は何でも美味しいよ。俺黒焦げでも食べれる自信あるし」
「いや、黒焦げ料理なんて作らないけどさぁ…。まぁ美味しいならいいや」
「本心だよ。いいお嫁さんになれるね」
「そうだといいなー」
お世辞なんかじゃない。けど、妹は俺が「お嫁さん」と言うと今にも溜息をつきそうな、呆れた様な顔をした。
まぁ、そんな顔をされるのも無理は無いと自覚はしている。今まで妹が付き合ってきた男は全く見込みの無い奴らばかりで、全然駄目で、仕方ないから俺が手を加えて全員別れさせてきた。中には精神科に送った奴もいたっけ。もちろんそんな事妹が知る由もない。妹は多分、「兄が自分に過保護だから付き合いづらくなって振られてしまった」と思っているだろう。それでいい。今までの男なんてどうでも良いし、妹がそれを気にする必要もない。
「いつかお前に子供が出来たら、お前似の女の子がいいな。きっと可愛いよ」
そう言う俺に、妹は気が早いと言った。そんな事ないと思う。まぁ俺似の子供でもいいけれど、やはり似るなら妹がいい。
「子供の前に結婚、結婚の前に恋人でしょ?私今彼氏とかいないし」
「そっか。まぁそのうち出来るって。大丈夫大丈夫」
でもきっと新しく出来た男も、また俺が別れさせる事になるだろう。妹を任せられる男なんていないよ。今の男なんてどいつもこいつも駄目な奴ばっかりだしさ。
「はー、どっかにいい人いないかなぁ」
そうぼやく妹。作ろうと思えば作れるさ。だってお前はとっても可愛いから。だから大丈夫。心配する必要なんでどこにもない。あぁでも、何処の馬の骨とも知れない男は駄目だよ?
「大丈夫だって」
俺は妹を安心させる様に、にっこりと笑んでそう言った。
俺がいるでしょ?