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狂家族

作者: 風間聖人

 ボクの素敵な家族の話をしよう。


 ある日ボクはお父さんとお母さんの下に生まれた。

 生まれたあと、ボクはお父さんとお母さんに大切に育てられた。


 赤ん坊の頃には、危ない目に遭わないようにずっと傍にいてくれた。

 「素敵な子」って2人とも言ってくれたよ。


 2歳になってから、ボクがおしゃべりを覚えたら、2人ともすごく喜んだ。

 「可愛い子」って2人とも言ってくれたよ。


 3歳ぐらいから、ボクは歩き始めた。もちろん危ない目に遭わないように、ずっと一緒にいてくれた。

 「元気な子」って2人とも言ってくれたよ。


 5歳になってからは字を書き始めた。汚い字だったけど、「おとうさん」と「おかあさん」って書いたら2人ともすごく喜んだ。

 「賢い子」って2人とも言ってくれたよ。



 そう、こうやってボクは大切に育てられた。

 危ない目に遭わないように危険なものは全部どこかにいっちゃった。危ないから外には出してくれなかった。

 ボクはお父さんとお母さんが大好きだった。きっと、お父さんもお母さんもボクのことが大好きだったと思う。

 だからボクは2人以外にはあまり興味が湧かないで育った。

 でも、いいじゃないかとは思う。それで2人は喜ぶんだから。



 幼稚園に入ってからは、友達なんかできっこなかった。

 お父さんとお母さん以外はべつにどうだってよかったからね。


 ああ、そうだ。他の園児を叩いて泣かせたこともある。その時は先生にボクは叱られたけど、その後お父さんとお母さんが乗り込んできて、しっかりと先生に怒ってくれたよ。「うちの子は悪くない」ってね。お父さんとお母さんはやっぱりボクのことを大切に思ってくれているってわかったよ。



 小学校も基本的には似たようなものかな。

 他の児童に興味すら湧かなかったし、遊ぼうと誘われても遊ぶ気にはならなかったよ。なぜかって?だって危ないじゃないか。ボクは怪我をして2人を悲しませるわけには行かないからね。

 

 そんなボクを嫌う奴も5年生くらいになったら出てきた。

 ボクのことを「マザコン」だの「ファザコン」だの言ってきてげらげらと笑うんだ。意味はわからなかったけど、なんだか無性に腹が立って、ある時バットで相手を力いっぱい殴ったよ。

 そいつは頭から血を流して、ボクはそいつの仲間にぎたぎたにされてボロボロになった。

 

 そいつが入院したことなんて、ボクにはどうでもいいことなんだけどね。

 腹が立つのは、あの後先生にボクがもの凄く叱られたことなんだよ。

 「どうしてボクが悪いの?変なこと言ったアイツが悪いじゃないか」と言ったって、先生は聞く耳を持たなかった。ボロボロで先生から叱られているボクの方がよっぽど可哀想だと思わないらしい。


 そんな時、僕を助けてくれたのはやっぱりお父さんとお母さん。

 「うちの子がボロボロじゃないか」と先生に問い詰めて、あれこれ言ったら先生は謝った。

 そしてその後お父さんは「お前は何も悪くないからな」と言って頭を撫でてくれた。

 ボクの中ではお父さんとお母さんはヒーローだったよ。



 中学に行ってから、ボクは本が好きになった。

 だからね、書店に行ってはカバンの中に本を詰めてそのまま帰ったよ。なんだか世間では万引きって言われている行為らしいけどね。

 でもしょうがないじゃないか。こんなものにお金を使うくらいならボクはお父さんとお母さんにプレゼントでも買うよ。だからただで持っていくくらい、いいじゃないか。


 そしてしばらく経たないうちに見つかって捕まっちゃった。

 書店の人にこっぴどく怒られて、お父さんとお母さんも呼び出された。

 万引きの理由を聞かれたから、ボクは「本にお金をかけるくらいならお父さんとお母さんにプレゼントを買います。だからこの本はただで読んで後で返そうと思いました」って答えたよ。

 そしたらさ、店員さんは顔を真っ赤にして怒っていたけど、お父さんとお母さんはとても嬉しそうな顔をしていたんだ。

 2人は店員さんに「うちの子は悪くない。頼むからただで本をあげてやってくれ」って言ってくれたよ。残念ながら貸してくれなかったけど、やっぱり2人ともボク想いの素敵な両親だよ。

 


 高校に入ってから、家に知らない大人の人が立ち寄るようになった。

 なんだか「金早く返せ」だの言ってたから、借金絡みの話だったと思う。

 まぁボクには関係はなかったんだけど、お父さんが土下座して、お母さんが泣きながら頭を下げているのを見てそうも言ってられなくなった。

 お父さんとお母さんを悲しませる奴らは絶対に許せなかった。


 だからボクは・・・・殺した。

 夜中に大勢の大人が入ってきたことを確認した後、隙をついて一斉に包丁を思いっきり投げまくった。

 狙い違わず全弾命中して、全員あっけなく死んだよ。7人くらいだったかな?

 家の中が汚い血で汚されることも許せなかったけど、これで少なくともお父さんが土下座する必要もお母さんが泣く必要もなくなったわけだ。


 その後ボクは何故か警察に捕まった。

 どうしてボクが捕まるのかわからない。お父さんとお母さんを悲しませる奴らを殺したことは正義だと思っていたのに・・・。


 警察に取調べを受けて動機を聞かて答えたけど、刑事さんはなんだか哀れみの視線をボクに向けていたよ。

 その後お父さんとお母さんも来て、刑事さんに「うちの子は悪くありません」って言ってくれたよ。

 でも警察ってのは頭が悪いんだね。全く聞いてくれなかったみたいだよ。

 そうしたらお父さんは頭を下げて、お母さんは泣いて謝ったんだよ。

 

 ボクはそれが許せなかった。


 それからボクがどうなったかって?

 あの後刑事に、襲い掛かったよ。もちろん、殺すつもりで。

 だけど殺せなかった・・・手についている忌々しい手錠のおかげでね。

 とても悔しかったよ。悔しくて、憎くて、だけど何も出来なくて・・・泣くことしかできなかった。

 人生の中でも、あの時ほど大泣きしたことは無いと思う。


 でもね、そうしたら、奇跡が起きたんだ。


 お母さんが包丁を取り出して刑事さんを殺してくれた。

 お父さんが死んだ刑事さんの頭を蹴り飛ばしてくれた。そして記録係の警察官も殺してくれた。


 「うちの子を泣かす奴は許さない」


 ボクは、2人の子供で本当に良かった。


 素晴らしい父親と母親に恵まれたんだ。



 その後3人で抱き合っていたら、お父さんとお母さんも捕まったよ。

 家族揃って刑務所入りさ。

 そうしたら、またしても警察の馬鹿共はやらかしてくれたんだ。


 ボクとお父さんとお母さんを別々の刑務所に入れるなんてふざけた真似をね・・・。


 とても許しがたいことだったけど、ボクは耐え続けたさ。

 ボクとお父さんとお母さんは何も悪くない。だから裁判だってきっと無罪判決が下る。

 無罪になれば、また会えると思っていたから・・・。


 だけどやっぱりあいつらは馬鹿だったよ。

 どうしてボクは懲役15年で父さんと母さんは懲役10年なんだよ。

 誰がどう聞いたっておかしいよな。この国の司法制度は終わっている。

 

 だからボクは裁判官を殺そうとした。

 「お前らは間違っている、ボクらは悪くない」って叫びながら。

 だけど、やっぱり手錠のおかげで殺すことはできなかった。

 悔しくて泣いていたら、お父さんとお母さんも暴れだして裁判官を殺そうとしてくれたよ。

 「うちの子を泣かす奴は殺してやる」って叫びながらね。

 だけど2人でも手錠のせいで殺すことは出来なかったみたいだった。


 家族3人で泣いたよ。

 そしてお互いの涙を見るたびこんな気持ちが芽生えるんだ。

 『うち(ボク)の子(お父さんとお母さん)を泣かせる奴なんてぶっ殺してやる』ってね。

 だけどその願いはかなえることは出来ずに、結局は泣くことしかできなかったんだ。


 そんな絶望的な状況の中で、さらに最悪な出来事が待っていた。

 刑務所の服役中、一切ボク達家族は会うことを禁じられ、刑務所も別々という処分になった。

 そんな処分が、ボク達に受け入れられるはずは無かったのに・・・。


 だから最後の面会で、ボク達家族は決意した。


 お父さんとお母さんは、優しい顔をしていた。ボクもできるだけ優しい顔をした。

 

 お互いの顔を見て、頷き合った。


 ボクは自分の舌を思いっきり噛み千切った。

 お父さんとお母さんも舌を噛み千切った。


 ボクらは・・・・死ぬことを選んだんだ。



 理由だって?簡単なことじゃないか。

 どうしてお父さんとお母さんに会わずに15年という時間を過ごすことを選べるんだろう。

 そんなの無理に決まっているじゃないか。

 きっとお父さんとお母さんも同じ気持ちだよ。


 まぁ、それとほかにも理由はあるんだけどね。

 ボクらの家族愛を認めないこんな世界なんて生きている価値なんか無いって思ったんだ。

 これはお父さんとお母さんがどう思っているかはわからないけど、同じ気持ちだったら嬉しい。

 

 まぁこうしてボク達は死んじゃったわけだ。

 死んだ後、ボク達が再会できたかは秘密だ。


 話はこれで終わりだよ。

 だって死んだらもう話すことなんか無いよね?

 

 まぁ最後に言いたいことは、家族とはやはりこうあるべきだよねってことだよ。


 子供は親に与えられた恩を忘れてはいけない。だから親が悲しませてはいけないんだ。

 親を悲しませる存在なんて‘この世から’消したって何も問題ないんだよ。


 親は我が子のためならどんなことでもしてやる決意を忘れてはいけない。

 子供を悲しませる存在なんて‘この世から’消したって何も問題ないんだよ。


 法律なんか関係ないよ。

 家族は絶対だ。全てだ。

 それを理不尽に侵害する奴らを許してはいけないんだよ。


 その点で言うとボク達家族は最高の家族だったよね!

 やっぱり家族はこうじゃなきゃね!


 世界中の家族がこうあるべきだね。

 

 これにてボクの素敵な家族のお話は終わりだ。



 お父さんとお母さんを大切にしてね。

 悲しませてはいけないよ。

 そして、いつも感謝の心を忘れずに・・・。


親を思いやる心も、子供を愛する心もとても大切なものです。

ですが、親は子供を正しく育てる義務があります。

正しいことは正しいと、駄目なことは駄目としっかりと言える家族が望ましいですね。

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