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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第四章 エルナ&アイリス西方視察
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第二十九話 ヴィンセントの基準

 街道を進む視察団。


 侍女たちはヴィンセントの手を借りながら、旅の準備を進めていた。


「ヴィンセント様?」


「はい?」


「これもお願いできます……?」


 侍女が荷物を差し出す。


 ヴィンセントはそれを見る。


 一瞬だけ。


 ほんの一瞬だけ、眉が寄った。


「…………」


 侍女が固まる。


 しかし次の瞬間。


「いいですよ!」


 ヴィンセントは笑顔で荷物を受け取った。


「ありがとうございます……?」


 侍女は首を傾げる。


 今のは何だったのだろう。


 その様子を見ていたアイリスとエルナも、顔を見合わせた。


「……謎の基準ですわよね」


「ええ」


 エルナが頷く。


「嬉々として自分から世話をしておりますのに」


「それなのに、ここにいる者では、わたくしたちとリゼット以外がお願いすると、露骨に嫌な態度をする瞬間がありますわね……」


「でも、結局はしてくださいますものね」


「ええ」


 二人ともヴィンセントを見る。


 ヴィンセントは何事もなかったかのように、別の侍女の荷物を運んでいる。


「……やはり、気分屋なのですわね」


「そういうことなのでしょう」


「…………」


 その時。


 ヴィンセントの手にある鐘鎚が揺れた。


 ごーん。


「…………」


「…………」


 エルナとアイリスが鐘鎚を見る。


「鐘鎚まで気分屋ですわね……」


 アイリスが呟いた。


「なんなんでしょうねこの鐘鎚?」


 ヴィンセントはいつものように首を傾げた。


 ◇


 やがて視察団は、西方へ向かう途中の都市へ到着した。


 ここでは、道路整備と食文化の普及について、簡単な説明を行うことになっている。


「こちらが道路の敷設方法ですわ」


 アイリスが都市の担当者たちへ説明する。


 どのように地面を整え。


 どのように土台を作り。


 どのように道を舗装するのか。


 必要な資材や工程についても説明していく。


「なるほど……」


「これなら我々でも……」


「ええ。必要な材料と人手を揃えれば可能ですわ」


 続いて料理。


「そして、こちらが料理の手順です」


 調理法や材料。


 火加減や味付け。


 実際に料理を作りながら説明していく。


「この料理はこうして――」


「ほう……」


「これは美味しい!」


 都市の人々も興味深そうに話を聞いていた。


「では、わたくしたちは先へ進みますわ」


 エルナが告げる。


「道路も料理も、わたくしたちが全部やるのではありませんわよ」


「ええ」


 アイリスも笑う。


「ここからは、皆さんで発展させてくださいませ!」


「はい!」


 都市の者たちが一斉に頭を下げる。


 視察団は再び馬車へ乗り込む。


「では、進みましょう」


 西へ。


 一行は再び歩みを進めた。


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