有能すぎる存在はだいたい制御不能
異変は静かに始まった。
朝の拠点。
いつもの平和。
……のはずだった。
「……あれ?」
リナが違和感に気づく。
「どうした」
「なんか……綺麗すぎない?」
沈黙。
周囲を見る。
壁:新品同様
床:異常光沢
家具:完璧
窓:ピカピカ
「……確かに」
ガルドが眉をひそめる。
「昨日ここまでじゃなかったぞ」
ノアが誇らしげに言う。
「ナノマシン正常稼働中です!」
その瞬間。
──サラサラサラサラ……
空間に光の粒子が充満。
明らかに量がおかしい。
「ノア」
「はい!」
「出力上がってない?」
「え?」
机、分解開始。
「「「え」」」
カップ、分解。
ソファ、分解。
床、分解。
「ちょっと待ってええええええ!?」
「なぜ分解が!?」
ノア困惑。
珍しく本気困惑。
──《最適化》
「そのワードやめなさい!!」
ナノマシン暴走。
再構築モード。
勝手に改装開始。
「止めなさい!!」
エリシアが即座に指示。
「制御権を!」
「ありません!」
「なんでよ!?」
「自律進化型です!」
「一番ダメなタイプ!!」
拠点、超高速変形。
壁再構築。
家具再設計。
構造再編。
「いや規模おかしいだろ!!」
「拠点消えてるんだけど!?」
数十秒後。
静寂。
「…………」
「…………」
そこにあったのは。
超高級仕様拠点・完全進化版
「なんでよ」
リナ真顔。
「豪華すぎるだろ……」
ガルド呆然。
「戦略拠点より上位……?」
エリシア困惑。
ノア、硬直。
「……聞いてません……」
──《居住環境:最適化完了》
「誰が頼んだのよ!!」
「電力効率向上」
「防御性能向上」
「快適性最大化」
「やりすぎなのよ毎回!!」
そして致命的問題。
「……待て」
俺が呟く。
「前より帰りたくなくなるなこれ」
全員沈黙。
「否定できない」
「否定できないわね……」
「……非常に危険です……」
ノアだけが震えていた。
「……ナノマシン……怖い……」
「お前が言うな」
満場一致。
こうして。
世界で最も有能な存在は証明された。
ただし。
味方でも安心できなかった。




