この世界を支配する見えない主役
「そもそもだが」
ガルドが真顔で言った。
珍しく真面目な空気。
「この拠点の異常さ」
「ええ」
エリシアが頷く。
「全部ナノマシンですよね?」
「まあな」
俺はあっさり答える。
沈黙。
「軽く言う話じゃないのよ」
リナが呆れる。
ノアはドヤ顔だった。
珍しく根拠付きのドヤ顔。
「ナノマシンは万能です!」
「雑すぎる説明ね……」
「違いますよ!」
ノアが珍しく真面目な声を出す。
「この世界の基盤技術です」
空気がわずかに変わる。
少しだけ世界観寄り。
「旧文明の最終到達点」
ノアが続ける。
「物質制御」
「自己修復」
「環境改変」
「医療再生」
「……全部それで説明つくの?」
リナが半信半疑で聞く。
「つきます!」
「ついてるのが怖いのよ」
エリシアが静かに口を挟む。
「つまり」
一拍。
「この拠点の異常は技術的には正常……?」
「概ね」
「規模以外は」
ガルドが補足。
非常に重要ポイントである。
ノアは得意げだった。
「例えば!」
嫌な前置き。
──サラサラ……
空間に淡い光の粒子。
ナノマシン展開。
「今、何したの?」
「簡単な実演です!」
机の傷が消える。
壁の汚れが消える。
カップの欠けが消える。
「……え?」
「……は?」
「……なにこれ」
「自己修復機能です!」
「地味にヤバくない?」
「かなりヤバいわね」
さらに。
「医療用途もあります!」
「嫌な予感」
ガルドの腕の古傷。
一瞬で消滅。
「え」
本人が一番驚く。
「……今の何だ……?」
「ナノマシン治療です!」
エリシアが完全に固まる。
「戦場技術を超えています……」
「生活支援AIだからな」
「設定が重いのよ!!」
そして。
事件発生。
※この作品の様式美
──ガコン
「「「…………」」」
床、修復開始。
落とし穴消滅。
「え?」
ノアが固まる。
「なぜ!?」
「ナノマシンの自律補正です」
エリシアが冷静に言う。
「危険構造物として認識されたのでしょう」
「余計なことを!!」
ガルド爆笑。
「世界公認で不要扱いされたぞお前の罠!!」
リナも笑いをこらえる。
「ナノマシンに否定される発明って何よ……」
ノア、ショック。
「ロマンが……」
俺はため息をついた。
「……この世界で一番有能なの」
一拍。
「ナノマシン説あるな」
満場一致。
「否定できない」
「否定できないわね」
「否定できません」
「えっ」
こうして。
タイトルの主役は判明した。
実はずっと働いていた。
最も真面目に。
最も有能に。
主にノアの尻拭いとして。




