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文明が滅びた近未来で、俺の万能ナノマシンが便利すぎて静かに暮らせない  作者: 月灯り庵


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35/69

最上位護衛官、ついに限界を迎える

異変は、静かに進行していた。


誰よりも冷静だった女。


誰よりも常識的だった女。


ヘリオス連合最上位護衛官。


エリシア。


そして現在。


「……なぜ私はここに馴染んでいるのでしょう……」


完全におかしくなり始めていた。


「慣れだ」


俺は即答する。


「慣れって怖いわね……」


リナも深く頷く。


「いや待て」


ガルドが真顔で割り込む。


「順応早すぎないか?」


エリシアは庭を眺めていた。


あの異常な庭。


湖付き。


噴水付き。


世紀末要素ゼロ。


「……最初は異常だと思っていました」


「今も異常だぞ」


「ですが」


一拍。


「……悪くない気がしてきました」


「ダメだこの人」


リナ即断。


「精神汚染が進んでるな……」


ガルドも同意。


ノアだけが大喜び。


「素晴らしいですねエリシアさん!」


「何が素晴らしいのよ!?」


「快適性の理解者が増えました!」


「違うわよ!」


さらに異変。


「……このソファ」


エリシアが真顔で呟く。


「危険です」


「なにがだ」


「柔らかすぎます」


「文句そこ!?」


「警戒心が削がれます」


「平和な証拠だろ」


「戦場では致命的です」


「ここ戦場じゃないのよ!!」


もはや職業病である。


「あと」


エリシアが真顔で続ける。


「風呂が快適すぎます」


「評価ポイントそこなの!?」


「長時間入浴の危険があります」


「普通の感想よそれ!」


ノアが満面の笑み。


「自信作です!」


「自信持つな!!」


極めつけ。


「……この拠点」


エリシアが静かに言う。


全員が一瞬だけ真面目な空気になる。


「長期駐留向きですね」


「落ちたあああああああああ!?」


「完全に堕ちたわよ!?」


「最上位護衛官が何言ってんだよ!?」


「問題ありません!」


ノアだけが肯定。


「問題しかないのよ!!」


エリシアは本気で首を傾げていた。


「……何か問題が?」


満場一致。


「全部だ」


こうして。


鉄壁のクール護衛官は、


静かにスローライフ側へ侵食され始めた。


主に拠点のせいで。

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