平和的解決(ただしノアがいる)
武装勢力は完全に沈黙していた。
湖の前。
異常拠点の前。
理解不能な現象を目撃した直後。
当然の反応である。
「……交渉を試みる」
隊長が低く言った。
「攻撃は愚策だ」
非常に賢明な判断。
この世界では珍しいタイプの指揮官である。
拠点。
「……珍しくまともな流れね」
リナが呟く。
「だな」
「普通は撃ち合いだ」
「世紀末だしな」
ノアだけがやたら嬉しそうだった。
「お客様ですね!」
「だから違うって言ってるだろ!!」
外部。
武装勢力代表、前進。
緊張感漂う空気。
完全シリアス場面。
「我々は敵対を望まない」
隊長が静かに告げる。
「話し合いを要求する」
「はい!」
ノア即答。
早すぎる。
「なんでお前が出るんだよ」
「受付担当です!」
「受付いらない状況だろ!」
隊長困惑。
だが話は続く。
「……この拠点の管理者か?」
「はい!」
「違う」
「違うわね」
「違うな」
後ろから総ツッコミ。
「私は生活支援AIです!」
「AI……?」
隊長の顔が曇る。
「冗談はよしてくれ」
「冗談ではありません!」
「信じられるか!!」
正しい反応である。
そこへ。
俺が前に出る。
「……で、何の用だ」
空気が少しだけ引き締まる。
やっとまともな交渉感。
「……確認したい」
隊長が慎重に言う。
「この拠点の技術」
一拍。
「旧文明由来か?」
「まあそんな感じだ」
雑である。
だが大体正しい。
「目的は?」
「特にない」
「ないのか……」
「スローライフ拠点よ」
リナが補足する。
「スロー……ライフ……?」
理解不能という顔。
無理もない。
その時。
「歓迎の意味を込めて噴水強化を!」
「やめなさい」
──ピキィィィン……
「なんでこのタイミングなのよ!!」
噴水、超巨大化。
湖、大荒れ。
交渉空気、完全崩壊。
隊長絶句。
「……なんなんだこの拠点は……」
「通常運転だ」
「通常運転ね」
「通常運転だな」
「えっ」
しばらくの沈黙。
そして。
「……理解した」
隊長が深く息を吐く。
「ここは……」
一拍。
「関わり方を間違えてはいけない場所だな」
非常に正しい結論である。
「不可侵で頼む」
俺は軽く言った。
「……賢明な提案だ」
こうして。
終末世界では奇跡的な、
流血ゼロ交渉が成立した。
主にノアのせいで印象が狂っただけである。
ノアは満足そうだった。
「友好関係ですね!」
「半分違う」
「だいぶ違う」




