世紀末に存在するはずのない楽園の噂
その噂は、静かに広がり始めた。
最初は誰も信じなかった。
当然である。
「湖がある?」
「世紀末だぞ?」
「馬鹿言え」
典型的な反応だった。
だが。
「いや、本当に見たんだ……」
「水が湧き出てて……」
「しかも……」
一拍の間。
「噴水まであった」
「「「は?」」」
信じられるはずがない。
この世界は終末。
水資源は貴重。
噴水など狂気の産物。
別の場所でも。
「綺麗な拠点があるらしい」
「……またまた」
「嘘だろ」
「それが嘘じゃないらしい」
「しかもな」
声を潜める。
「管理してるのは美少女だ」
「「「もっと嘘くせえ」」」
だが目撃証言は増え続けた。
一致していた。
奇妙なほどに。
✔ 湖がある
✔ 異様に快適な拠点
✔ 意味不明な設備
✔ 異常な技術
✔ なぜかいる美少女
そして。
最悪の尾ひれがついた。
「旧文明の遺産らしい」
「超レア級技術らしい」
「無限物資拠点だとか」
「絶対奪い合いになるぞそれ……」
噂は変質していく。
いつの世も同じである。
拠点。
「……嫌な予感しかしない」
リナが真顔で呟いた。
「何がだ?」
「この手の噂が広がると」
一拍。
「ろくなことにならない」
「否定できない」
ガルドが即同意。
ノアは呑気だった。
「有名になるのは良いことです!」
「元凶が言うな」
「問題ありません!」
「その台詞が一番不安なのよ!!」
その時。
ノアが外部反応を検知。
──《長距離移動体を確認》
「……ほら来た」
リナの反応が早い。
モニター展開。
遠方。
砂煙。
明らかに組織的な移動。
「……人数多くない?」
「多いな」
「軍隊規模じゃない……?」
ノアが淡々と告げる。
「武装勢力の可能性が高いです」
沈黙。
「……ほらあああああああああ!!」
リナ絶叫。
ガルドが真顔で呟く。
「噂拡散イベント、早すぎないか……?」
終末世界に、
ついに本格的な面倒事フラグが立った。
主にノアのせいで。




