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導入の雰囲気
目覚めたその日、俺は「拠点」を手に入れた。
と言っても、大層なものではない。
崩れかけたビルの隅っこ。
雨風がしのげて、壁がまだ生きている場所。
それだけだ。
「ここなら住めそうだな」
──《構造強度、問題なし。簡易補修を開始します》
俺が座り込んだ直後、壁のひび割れがゆっくりと塞がっていく。
「おお……」
──《地味な作業は得意です》
「いや十分すごいからな?」
文明崩壊後の世界で、壁の修理に感動する日が来るとは思わなかった。
しばらくして。
──《居住環境を整えました》
そこには、
・綺麗な床
・簡素なベッド
・小さなテーブル
が用意されていた。
「早すぎない?」
──《快適な生活を保証します》
やっぱり便利すぎる。
けれど問題はない。
誰もいない世界で。
急ぐ理由もない。
「……まあ、のんびりやるか」
窓の外では、草が風に揺れている。
静かな世界。
悪くない。
少なくとも、研究所よりはずっと平和だった。
──《本日の予定はどうしますか?》
「そうだな……」
少し考えて。
「散歩でもするか」
──《素晴らしい選択です》
こうして俺の近未来スローライフは、
驚くほどゆるく始まったのだった。




