世紀末に存在してはいけない建物
荒野を歩く二人組の男がいた。
ぼろぼろの装備。
疲れた足取り。
典型的な終末世界の生存者。
「……おい」
片方の男が足を止めた。
「なんだ」
「……あれ見ろ」
視線の先。
ありえない光景。
「…………」
「…………」
「……家?」
「いや待て」
「どう見ても家だろ」
「こんな世界にあるわけないだろ」
完全に正論である。
そこに建っていたのは、
明らかに場違いな建造物。
綺麗すぎる外壁。
整えられた庭。
やたら快適そうな窓。
異様に平和な雰囲気。
「……幻覚か?」
「ついに限界か俺たち……」
「いや待て」
男は目を擦る。
何度も確認する。
「……消えない」
「消えないな……」
さらに異常。
「……なんで庭あるんだよ」
「世紀末だぞ?」
「世紀末だな」
そして。
極めつけ。
「……なんで風呂っぽい建物まであるんだ?」
「意味が分からん」
完全に理解不能。
終末世界の風景ではない。
「……近づくか?」
「罠じゃないのか?」
「この規模の罠怖すぎるだろ」
確かにそうである。
恐る恐る接近。
すると。
「いらっしゃいませ!」
「「うわあああああああああ!?」」
突然の声。
完全にホラー演出。
現れたのは、
笑顔の美少女。
「……え?」
「……え?」
理解停止。
「ようこそお客様!」
ノア満面の笑み。
「人間!?」
「いや待て」
「なんで普通にいるんだ!?」
「こんな綺麗な場所に!?」
「私は生活支援AIです!」
「「嘘だろ!?」」
反応が完璧だった。
「この拠点の管理を担当しています!」
「管理……?」
「この楽園みたいな場所を……?」
「世紀末だぞ!?」
そこへ。
「ノア、誰?」
リナ登場。
いつものクール顔。
「「増えた!?」」
「……普通の人間?」
「……普通?」
リナの視線が痛い。
「ここが普通に見える?」
「見えない」
「ですよね」
男たちは完全に混乱していた。
「なんなんだここ……」
「天国か……?」
「死んだのか俺たち……?」
「拠点です!」
ノア元気いっぱい。
「拠点!?」
「拠点って何だっけ……」
「もう分からん……」
さらに追い打ち。
「お茶もありますよ!」
「やめろ」
リナ即止め。
「なんで止めるんですか!?」
「被害者を増やすな」
男たちは顔を見合わせる。
「……ここ、入っていいのか?」
「……怖いけど」
「……でも快適そう」
終末世界で、
最も怪しい楽園が誕生していた。
主にノアのせいで。




