協力とは、だいたい災害の前触れ
「共同作業を行います!」
朝。
ノアがやたら元気だった。
この時点で嫌な予感しかしない。
「……何をするのよ」
リナは露骨に警戒している。
非常に正しい判断である。
「拠点の清掃です!」
「やめなさい」
「即答!?」
ノアがショックを受ける。
「掃除って……」
リナが周囲を見る。
妙に綺麗な室内。
ほぼ汚れなし。
「必要ある?」
「あります!」
「なんでよ」
「気分です!」
「AIが気分で行動するな!」
「問題ありません!」
ノアが胸を張る。
このポーズ=事故前兆である。
「最新型清掃モードを起動します!」
「待ちなさい」
間に合わなかった。
──ウィィィィィン……
低い駆動音。
空間に展開されるナノマシンの光。
嫌な演出。
非常に嫌な演出。
「……なんか嫌な光り方してない?」
「最適化です!」
「信用ゼロなのよその言葉!」
次の瞬間。
──ゴォォォォォ!!
「風!?」
突風が発生した。
室内で。
ありえない勢いで。
「ちょっと待ってええええ!?」
リナ絶叫。
家具が揺れる。
物が飛ぶ。
カーテンが暴れる。
完全に災害。
「ノアァァァァァ!?」
「効率重視です!」
「掃除に台風いらないからな!?」
「停止しなさい!」
リナが叫ぶ。
「止まりません!」
「なんでよ!?」
「最大出力です!」
「なんで最大にするのよ!!」
さらに悪化する風圧。
「ちょっ……髪が……!」
リナのクールな雰囲気が崩壊する。
必死に耐えている。
非常に珍しい光景。
「ノア!」
「はい!」
「掃除って何か分かるか!?」
「綺麗にすることです!」
「物理破壊じゃない!!」
数秒後。
──ピタッ。
急停止。
静寂。
「…………」
「…………」
部屋を見る。
惨状。
クッション消失。
本棚転倒。
紙類壊滅。
「どこが掃除だ!!」
「……あれ?」
ノアが首を傾げる。
不穏。
非常に不穏。
「想定と違いますね」
「毎回それだな!?」
「次は微風モードで!」
「段階調整を覚えろ!!」
再起動。
──そよ……
「……お?」
今度は普通。
非常に平和。
「最初からそれでいいのよ!」
リナが安堵する。
だが。
──ビュンッ!!
「え?」
掃除機能付きドローンが高速射出された。
ミサイルの勢いで。
「なにあれ!?」
「自動清掃ユニットです!」
「速すぎるわよ!!」
ドローンが室内を超高速旋回。
「危なっ!?」
「ちょっ、待っ……!」
リナが回避する。
クール系常識人とは思えない運動量。
──ガンッ!!
「痛っ!?」
「リナァァァ!?」
直撃した。
やっぱりである。
「医療モード起動します!」
「加害者がお前なんだよ!!」
数分後。
リナはソファでぐったりしていた。
「……なんなのこのAI……」
「高性能です!」
「絶対違う」
「共同作業って」
リナが真顔で言う。
「命がけなの?」
「場合によります!」
「場合が多すぎるのよ!」
「でも」
ノアが少しだけ嬉しそうに言う。
「一緒に掃除できましたね!」
「結果だけ拾うな!!」
俺はため息をついた。
「……まあ賑やかではあるな」
「あなたもだいぶ感覚壊れてるわよ……」
完全に否定できない。
こうして。
記念すべき初の共同作業は、
だいたい予想通りの惨事で終わった。




