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文明が滅びた近未来で、俺の万能ナノマシンが便利すぎて静かに暮らせない  作者: 月灯り庵


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常識人、強制的に住人扱いされる

「結論から言うわ」


リナは腕を組み、真顔で言った。


「私はここに住まない」


朝一番の宣言である。


非常に強い意思を感じる。


「ええええええ!?」


なぜかノアが大声を出した。


「なんでノアがショック受けるんだ」


「だって住人が増えると思ったのに!」


「勝手に決めるな」


リナは冷静だった。


昨日から一貫して冷静である。


「そもそも私は通りすがりの旅人なの」


「廃墟のど真ん中で?」


「そう」


「無理があるな」


「うるさい」


「安心してください!」


ノアが元気よく割り込む。


嫌な予感しかしない。


「すでに部屋を用意しています!」


「聞いてないんだけど!?」


リナが即座にツッコむ。


扉が開く。


そこには。


「…………」


妙に完成度の高い個室。


綺麗なベッド。

整った収納。

無駄に可愛い内装。


なぜか完全に住む前提仕様。


「なんであるのよ」


「準備万端です!」


「だからなんでよ」


「拒否権は?」


「ありません!」


「あるでしょ普通!?」


「ありません!」


「言い切るな!!」


俺は眺めながら呟く。


「仕事だけは異常に早いんだよな……」


「そこが一番怖いわよ……」


リナが真顔で同意する。


「だいたいね」


リナはため息をつく。


「見知らぬ拠点に住むとか危険でしょう」


「まあな」


「そうよ」


「正論だな」


ノアが固まる。


「えっ」


「えっじゃない」


リナが即座に返す。


「警戒するのが普通なの」


「ですが!」


ノアは食い下がる。


珍しく必死である。


「安全性は保証されています!」


「保証って誰が」


「私が!」


「一番信用できないわよ!」


完全に正論だった。


その時。


──ゴゴゴゴゴ……


「…………」


「…………」


床が動いた。


嫌な沈黙。


「ノア」


「はい」


「何もしてないよな?」


「していません!」


「本当に?」


「本当です!」


次の瞬間。


──ガコン。


ソファが沈んだ。


「なんでよ!!!!」


リナ絶叫。


綺麗に落ちた。


「救助します!」


「最初から作るな!!」


今日も通常運転である。


数分後。


「……やっぱり帰る」


リナが真顔で言った。


「危険すぎる」


「否定できない」


「ですよね!?」


ノアがなぜか傷つく。


「ですが!」


ノアが再び立ち上がる。


しつこい。


非常にしつこい。


「共同生活にはメリットがあります!」


「例えば?」


リナが半目で聞く。


「食事!」


「爆発したわよね」


「改善します!」


「信用できない」


「快適な住環境!」


「落とし穴あるわよね」


「演出です!」


「いらない」


「癒し!」


「誰が」


「私が!」


「自称やめなさい」


完璧な会話である。


この二人、相性がひどい。


非常に良い意味で。


しばらくの沈黙。


そして。


「……まあ」


リナが小さく息を吐く。


「すぐ出ていけって言われても困るし」


「ですよね!」


「まだ何も言ってない」


「しばらく」


渋々といった様子で続ける。


「……しばらくだけだから」


ノアが凍りつく。


俺も凍りつく。


「本当ですか!?」


「声がでかい」


「やったぁぁぁぁぁ!!」


飛び跳ねるAI美少女。


完全に騒音。


「勘違いしないで」


リナが釘を刺す。


「仮住まいだから」


「はい!」


「様子見だから」


「はい!」


「いつでも出ていくから」


「はい!」


「あと」


一拍置いて。


「変なことしたら殴る」


「えっ」


「えっじゃない」


こうして。


終末世界の拠点に、


新たな住人が加わった。


非常に不本意な形で。

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