3「オメェは何がしてぇ?」
「おかえりいただくことって?」
「無理に決まってんだろ」
ザクロは即座に否定し、カトレアはやっぱり。と希望を打ち砕かれる。
「つーか、オメェ。やるせない死に方したくせに、何もしなくてもいいのかよ」
ザクロはまるでカトレアの悲劇を見てきたかのような物言い。カトレアは、唇を噛み、思い返す。
「願ったところで、もう、遅いでしょう?」
優しかった母も父も使用人たちも。みんなみんな、私より先に絞首刑にされた。一番最後に刑を言い渡される予定だった私は、おかしなことに家族よりも長生きをしてしまった。
願いを叶えてもらう資格なんかない。
「…本当に何も知らねぇんだな」
過去を振り返り、落ち込んでいるカトレアにザクロは小さく「メンドー」と呟き、頭を掻いた。
「オレも、何もせずに帰るわけには行かねぇんだよ。オレらの契約の基本は等価交換。オレはオメェの残りの運命を前金としてもらった。その分は働かなきゃなんねぇ」
「つまり、何かは願わなくてはならないということでしょうか?」
「そういうことだ」
げんなりした顔でザクロは返す。死にかけのカトレアの残りの生命力は僅かだった。願いを叶えてもらうにしてもカトレアは何も思いつかず頭を抱える。
かつてであれば、国のため、人々のためなどと言えたが、裏切られた今となっては、何もない。
「オメェは何がしてぇ?
過去に戻って元凶を倒してぇとは思わねぇのか?」
「え?」
カトレアにとって、一番叶えたいことそれは家族を守り、この悲劇の原因を知ること。
その点で言えば、ザクロの言葉は霹靂の提案だった。
「できるのですか?過去に戻ることが…」
しかし、聖女と呼ばれた女とて、ただの人間。過去に戻るなど考えもしなかった。
カトレアもまじまじとザクロを見る。
「できるぞ。だが、これはちゃんとした契約になる。必要な対価はいただくぜ」
私はどうなろうと、守りたいもののために戦う。
ならば、カトレアに迷いはない。
「構いません。お願いします」
覚悟を持って、カトレアはザクロに願った。
ザクロはにいっと悪魔顔をさらに歪め、大鎌を取り出し、カトレアを斬りつけた。
鎌で斬られた感覚はあれど、不思議と不快感はない。
カトレアの意識が再び、地の底まで沈んでいった。




