1「助けて」
神様、なぜですか?
氷塊のような真冬の冷たい石床で衰弱している少女は朧気ながらも神に問う。
無実の罪で投獄された。何を言っても、証拠を揃えても、誰も聞く耳を持たない。
加えて、将来を誓った婚約者からの婚約破棄と一族郎党死刑が言い渡された。
横暴だ、と声をあげてくれた者は1人もいなかった。
私、なんのために聖女なんてしていたのかな。
どんどんと、身体の熱が消えていく。寒い、痛い。
死の間際、走馬灯が駆け巡った。
優しく、気品に溢れていた母は幼い私に教えてくれた詠があった。
「ささげます、ささげます。このともしびが、きえるまえに、われらをしゅごせしものや、さいごの、いのり、ついぞはたされよ。我が名は、カトレア・ツィーア」
最後は声が掠れてしまったし、うまく口が回っているとも思えない。それでも、母が教えてくれたこの詠は、祖先が大切に伝えてきたものだ。気休めだとしても良い。もしも、一族が死を迎えることになればうたうようにと言われ続けていた。
カトレアは詠い終えると襲いくる睡魔に身を任せた。
そして目を覚ました。
真っ白な空間で何もない。
凹凸のある歯に眉間に皺を寄せた男が不意に現れカトレアの顔を覗き込んでいた。
同作者の「フォルトゥーナ学園物語」や「見知らぬ美女が旦那の部屋で寝ていたのだけれど」と同じ世界ですが、要素はほとんどなく、その上、結構昔だと思ってください。
興味があればぜひ、上記の作品を読んでみてください。




