見栄水た(みえすいた)
どうして人は見栄を張るのだろうか…
どうして自分に無いものを
追い求めてしまうのだろうか…
霧島メイは夢の中で、
誰かに何度も…何度も…責められている。
黒い人影がメイの首に手を掛ける所で
夢から覚める
夢から覚めても、黒い奴が誰なのか
何を言われていたのか解らない
先月からもう5回目の同じ夢を見ている
メイはベッドから立ち上がり
1階の洗面台へ向かう
鏡に映るのはセミロングの
ソバカスやニキビが目立つ暗い少女、
ため息をつきながら髪を整え薬を塗り
学校へ行く準備をする
高校2年生のメイは、
スポーツと勉強はイマイチで
クラスのカーストは下から数えた方が早いだろう
お昼は1年生の時からクラスが同じだった
秋本さんと外にある日陰のベンチで昼食を頂く
秋本さんは、細く身長が高いモデルのような
体形であったがメイと同じ様な陰の気を出していた
夕方は部活やバイトをしていなかったので
学校から二十分ほどの歩いて早めに帰宅する
部屋に戻り勉強、家族と夕食、風呂…
眠る前の自由な時間…
最近は少し夜更かし気味だ
寝れない…いや寝たくない
あの夢を見ると思うと憂鬱だった
深夜、テレビをつけて
お笑い番組を探すが
今日はどのチャンネルもやっていなかった
テレビを消そうとした時、
リモコンを床に落としてしまった
落とした拍子にチャンネルが変わる
どうやら通販番組のようだが異様であった
紹介してるのは人でなくブサイクな人形であった
なるほど…少しでも他と違う事をして
視聴率を上げたいのだろうと思っていたが
紹介している商品もどこか変で、魅入ってしまう
黒い羊「ハイハーイ♪
今日紹介するのは美女になれる水!」
白い虎「すっごーーーい!
これを飲めば美女なれるんですかァ↓」
思わず吹き出してしまった、
メイ「これはダメでしょ…」
黒い羊「それがダメじゃないですよ!
誰でも美女になれます」
メイ「え…」
気のせいだろうか?今、テレビの人形と喋った…
白い虎「でも…お高いんじゃないのぉ↓」
黒い羊「なんと…」
黒い羊がメイを凝視して
テレビであり得ない間をとりゆっくり喋る
黒い羊「1リットル…寿命1年の所…なんと!
なんとなんと…半年!…お買い得ですょおおおおおお
欲しいでしょ?欲しいですよね!」
テレビの人形は動かなくなりこちらを見つめている
メイはポツリと
「欲しい…」
と言ってしまった
そこから睡魔が襲い
朝まで倒れるように眠りについた
朝起きると、机に透明な液体が入った
1リットルペットボトルと手紙が置いてあった
非科学的な事に身震いして
恐る恐る手紙を開ける
ごこうにゅうありがとうございます
ちゅういじこうが、ふたつほどこざいます
ひとつめは、
のみかたです、こっぷいっぱいずつ、のむようおねがします。こっぷいっぱいにつき12じかんびじんになれます。
ふたつめは、
このミズは美女になるミズなので、おとこがのむと
たいへんなどくなので、きをつけてください
と書いてあり、裏には黒い羊のシールが貼られていた
恐怖より試したい興味が強かったメイは
急いでコップを準備し水を1杯飲み干し
1階の洗面台に向かう
何ということか、
鏡に映ったのはメイの面影を残した黒髪美少女
顔にあったソバカス、ニキビ
嫌いな輪郭目、鼻、口
自分に似ているが全く違う
驚いていると、母親が顔を出す
しばらく目が合うと
母親はメイの顔に手を伸ばし
驚きながら見つめている…
メイ「学校遅れるから…」と
手を振りほどき、準備をして家を後にする
学校では皆が彼女の話題で持ちきりだった
整形?整形にしては昨日の今日で早すぎる?
元々そうだったぁ↓!と誰かが言うと
皆の認識は操られたように変わっていった
昼休み、3人の男性から告白されたが
メイは全員振り、いつも昼食を取っているベンチへ
笑いながら向かう
秋本さんがベンチで静かに待っていた
話掛けると、秋本さんはビクッと体を震わせ
秋本「あ、あの、ほ、ホントに…霧島…」
言いたいことは直ぐに分かった
メイ「そうだょ!私!霧島メイ!あのね…」
と昨日の夜から起こった事を秋本さんに話した。
秋本「寿命の半年は…大きいね…」
メイ「そうかな〜♪いい買い物だったと思うよ!」
と完全に浮かれていた…
メイ「それでね!思ったんだ!今ならアノ林先輩と付き合えるんじゃ無いかって!」
秋本「サッカー部の…キャプテンでイケメン…すごいね…メイちゃん…」
メイ「そうだ!明日例の水持ってくるね!」
秋本「え…怖い…けど、そう言うのは好き…」
と2人は雑談し昼休みは終わった
夕方帰るまでに5人から告白された
そして、その中に林先輩がいた
林先輩は美人好きですぐ来るとは予想していた
1日目に来るとは思っていなかったが…
先輩からの告白にOKし付き合うことなった
林「じゃー、今日はもう遅いから、また明日ね♪」
と爽やかに手を振る
メイは家に帰ると、今日の出来事にニヤついていた
携帯に連絡が入る
どうやら父も母も今日は遅いらしい
さらに母から話がしたいとの事…
夕食を済ませ、風呂を入りに洗面台に行くと
鏡にはニキビズラの陰キャ女が映る…
驚き尻もちをつく
映ったのは私…だけど…前の私を忘れていた…
混乱しながらまた鏡を見るとやはり
この姿の自分を忘れていた
携帯を見ると19時半…
朝7時に起きて、あの水を飲んでいる…12時間…
今の自分にショックを受けながら風呂に入る
先輩とラインをしていたら直ぐ夜中になっていた
テレビであの番組を探すが、やはり無い…
今日は色々あり過ぎて疲れた…
と母が帰ってくるまで耐えられず眠りに落ちた
次の日の朝
またあの水を1杯飲み干し
残りの水を秋本に見せる為カバンに入れ
学校へと急いだ
学校に行くと、カースト上位の女が睨んでいた
男にモテるのが嫌なのだろう…
あまり敵を作りたくないので、
そそくさと教室に向かう
昼休みに入るとカバンを持って
急いでベンチに向かった
向かう途中
校庭では後輩に教えている先輩が目に入った
ベンチにはソワソワしている
秋本の姿があった
メイは昨日の事を秋山に話した
秋山「本当の自分を忘れるって…ヤバい…」
秋山はメイが持ってきた水を
興味津々で見て笑っていた
メイ「秋山も…飲んでみる?」
秋山「ええ…ぜひ…頂くわ!」
秋山もコップ1杯分の水を飲み干した
すると見る見るうちに秋山の顔が変わる
目も鼻も口も鋭く美しくなっていく
元々モデルのような体形だった秋本は
本物のモデル顔負けの容姿に変わった
メイ「すごい…こうやって変わっていくんだ…」
秋本は自分の手鏡で顔を確認した
秋本「すごい美しい…私のような私じゃない存在…」
2人で秋本の変化を確認していると
林先輩が走ってこっちにやって来た…
林先輩は息を切らしながら喋る…
林「ごめん!水貰うよ!」
とアノ水を口をつけないように飲もうとした
メイと秋本は驚き林を止めに入るが
遅かった…
ゴクッと音をたてる喉
次の瞬間、林は顔が青くなる
メイ「林先輩!」
そのまま倒れ真っ青になり口から泡を吹く
体が小刻みに揺れ5秒後全く動かなくなった
?「キャーーーー!林ィ!林ィ!」
と後から声が聞こえる…
朝、睨みつけてきたカースト上位の女が
高い声を上げて林先輩に近づき泣きわめく
校舎から続々と人がベンチ側を覗き込んできた
秋本はすでに、救急車を呼んでいた
ボーゼンと立ち尽くすメイ…
メイ「あ…あ…」
メイはベンチの上のアノ水を見て考える…
この水は毒で…警察が調べたら…
その瞬間メイはペットボトルのままアノ水を
飲み干そうと口に流し込む…
秋本が気づきメイを止める
秋本「メイちゃんダメだよ!
注意事項を破っちゃ!だめ!」
同時にメイは思い出す
夢で見ていた光景
まさにこの瞬間だ…
どこからとも無く声が聞こえる
「あーあぁ↓」
秋本は諦めていなかった
メイの口に指を突っ込んで
水を吐かせた…
メイの顔が元の顔に戻る…
しばらくして
救急車と警察が来た
林とメイは病院に運ばれた
林先輩はすでに息絶えていた…
メイは入院する事になった
警察が調べるも毒物の反応は
全く出ず、熱中症ということで処理された
メイが入院中
母が重い口を開く
母親も昔、アノ水を飲んでいたのだと言う
1リットルペットボトル1本…寿命の半年
コップ1杯200ml、5杯で無くなる計算
母は、アノ水の虜になり
何本も何本も買って
寿命の15年分使ってしまったらしい
そう言う手口なのだろう…
すぐ体調は良くなり
1日で退院して、
秋山にお礼を言いに家にいった…
秋山はあの時の事を思い出し恥ずかしそう照れていた
深夜…どこかの女子の部屋
黒い羊「ハイハーイ♪今日紹介するのはーーー」