カセットテープ
音楽を聴くために、カセットテープを使用していた時の話だ。CDプレイヤーを持っておらず、カセットテープのウォークマンを持っていた私は、CDをレンタルしたら家にあるラジカセでカセットテープに録音していた。だが、ラジカセで録音する際には流した音を録音する為、周囲の音を拾ってしまうのだ。それを防ぐために、録音するときには押入れの奥に隠して録音していた。
「これでよし」
いつものようにラジカセを奥に入れ、録音ボタンを押す。後は音を立てない様にふすまを閉め、奥からちゃんとCDが再生されていることを確認すると、部屋を離れる。CDを丸々一枚録音しているので、大体の時間を計算して部屋に戻る。音は聞こえない。完了しているようだ。奥からラジカセを取り出す。
「ちゃんとできてるかな」
ラジカセに入れたままカセットテープを再生すると、問題なく再生される。CDの録音は成功したようだ。外出がてらCDを返してこようと思い、ウォークマンに今しがた作ったカセットテープをセットし、イヤホンを装着する。再生しながら外に出ようとしたその時。
「ん?」
なにか雑音が聞こえたように思う。もう一度再生し直すと、同じところでやはり何か聞こえる。
「せっかく静かにしてたのに」
またやり直しだ。何が原因だったのかと音の正体を確かめるべく、音量を上げると。
『聞こえる?』
「!」
知らない女性の声が流れ、思わずイヤホンを外し、ウォークマンを投げ捨てる。
「今の……声……!?」
床に落ちたウォークマンからカセットテープが外れてしまっている。確認の為と拾い、再生しようとしたが、ウォークマンが壊れてしまったのか何も聞こえない。
「………」
怖いけど、確認しないと気が済まない。部屋に戻り、ラジカセにカセットテープをセットして……再生ボタンを押す。そして先ほど声が聞こえたところが来る。
『ほら、聞こえてる』
先ほどと同じ女性の声。だが、発言は先ほどとは違っており、やがて……
『あははははは!』
ラジカセから笑い声が部屋に響いたかと思うと、ブツっと音を立てて何も聞こえなくなる。再生はされたままだ。恐怖で立ち尽くしていたが、我に変えると停止ボタンを押し、カセットテープを取り出す。それをすぐにゴミ箱に入れ、部屋を離れた。それ以降、あのラジカセは使ってないし、カセットテープで音楽を聴くことも無くなった。だからあれが何だったのかは、未だ不明だ。
完