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意識する美少女

 悟の母の計らいにより、悟達は二人分の電車賃をもらって家を出た。日暮里まで電車を乗り継ぎ、そこからは京成線で成田を目指した。


「櫻井さん、スカイライナーに乗っていこう」


 日暮里駅で、悟は茜にそう提案した。


「え、でもスカイライナーって、ちょっと高めなんじゃ?」


「そうだけど、母さんそれを見越した電車賃をくれてたから大丈夫。成田空港まで出て、一駅戻るってした方が、現地に着くのが少し早くなるよ」


「……なんだか申し訳ないかも」


 茜は久しぶりに、完璧少女らしい一面を覗かせた。


「良いんだよ。母さんだって、現地に早く着いて少しでも長い時間遊んで欲しいから多めにお金をくれたんだ。その好意に甘えようよ」


「……そっか。じゃあ、そうしようか」


 二人で微笑み合い、悟達は今や楽天監督のドジャース時代のポスターを見つつ、それからまもなく到着したスカイライナーに乗り込んだ。


「櫻井さん、窓側の席に座りなよ」


「いいの? ありがとう」


 スカイライナーから見える景色は、都内では高層ビル群が最初に見えて、それから住宅街が広がり、空港に近づくにつれて一面緑の自然いっぱいな景色が広がっていく。特に序盤は、発着駅を減らすためか都内に建てた陸橋、地下と忙しないアップダウンが続くので、通からしたら結構楽しめる景色となっていた。


 日暮里を出たら、次駅はもう成田空港。成田空港から他国へ旅立つつもりらしい大きめのトランクを引き連れた人達の間に、悟達は軽装で電車に乗り込んだ。

 スカイライナーは最近、某アイドルグループを広告塔に据えて、車内にもそのアイドルの写真、車内アナウンスを採用するなど、奇を衒った行いをいくつか行っていた。


「まさか、ここまであの人の名前を押し出すなんてね」


 二人は、そう苦笑した。


 快調に進む車内、まもなく目的駅までの半分に差し掛かろうとした頃、茜は苦笑しながらふと思った。


 あれ、もしかして……。




 楽しい……!

 凄く楽しい。


 想い人と、微笑み合いながら電車に揺られて、これからへの妄想を膨らませて……!


 幸せって、こういうことを言うのだな。


 シミジミと茜は思った。そして、こうも思った。宝田君と初デート。緊張するよう。粗相がないようにせねば。


「……櫻井さん」


「は、ひゃい……!」


 唐突に悟は、真剣な眼差しで茜を呼んだ。

 口をわなわな震わせて、茜が悟の方へ顔を向けると、悟はゆっくりと茜に顔を近づかせているところだった。


 ……まさか!

 ドクンドクン、と自分の心臓が高鳴っていくのが、茜はわかった。心拍数が百五十を超えたあたりで、茜は我慢出来ずに目を閉じた。


 しばらく待っても、悟からのあれこれは成されなかった。

 茜がゆっくりと目を開けると、


「見て見て、あそこにまだスカイツリーが見えるよ。関東平野だから、霧がかってなかったり角度が良ければ、見えるんだねえ」


 悟は、窓の外の景色に執心していた。

 茜は、まもなく頬をぷくっと膨らませた。


「席、変わろうか?」


「え、いいの?」


 肩透かしを食らったが、窓の外の景色を悟が楽しんでいるのであれば、変わってあげるべきだと茜は思い提案した。

 それに乗っかる悟の顔は、これまで見たことがないくらい楽しそうだった。


 席を変わってあげて、キラキラ眩い目で車窓からの景色を楽しむ悟を見て。


「……笑うともっとカッコいい」


 茜は、さっきまでの怒りも忘れて、悟の笑顔に見惚れるのだった。

案件並の京成線推し。

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