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積極的な美少女

 二人並んで帰宅し、家に着き一度別れて、悟と茜は悟の家で、夕食の時間に再会した。


「頂きます」


 手を洗い、目を瞑り、丁寧に手を合わせた茜。悟もまもなく、それに倣った。

 夕方のクイズバラエティ番組をテレビで流しながら、静かに悟の母を含めた三人で夕食を楽しんでいた。

 悟の父は、今日も残業帰りだった。しかし、あまりにそれが日常になっているため、父不在を寂しがるのは血縁関係のない茜のみだった。


「ご馳走様でした」


 先にご飯を平らげたのは、茜だった。食器を持ち、シンクへ。その後、三人の食事が終わったところで、茜は悟の母の

食器洗いを手伝う手筈になっていた。それは、毎日二食を振る舞ってもらうことに対する、茜の精一杯の恩返しだった。

 悟は、二人の仲睦まじい洗い物風景とテレビとを交互にぼんやり眺めていた。


 ふと、悟は思い出していた。

 それは、悟の母が、まだ悟が小さい頃に、冗談めかして本当は女の子が欲しいと言っていたこと。自分や、父と絡む時より幾分か楽しそうに茜と絡む母を見ていると、あながちあの時の言葉が嘘ではなかったのだと気付いた。


 テレビを見るのも飽きた悟は、一足先に自室へ戻った。


「おまたせ」


 嬉々とした茜が部屋に現れたのは、悟が部屋に戻って数分後だった。


「おつかれ。いつもありがとう」


 ひとまず、悟は茜にお礼を述べた。悟なりに、茜に洗い物を強いている状況に多少の負い目を感じていた。


「いつもご飯振る舞ってもらってるんだから、これくらい当然だよ」


 一方茜は、まともな返事をした。ようやく悟に対しての浮足立つ気持ちが軟化されつつあったのだ。先程までは悟の顔を見れば見惚れてクラリと倒れかけたものだが、今ではこの写真鑑賞会にも、悟から目を逸らす程度で平常心で参加出来るようになっていた。


「櫻井さん、今日、本当に体調大丈夫だった?」


 リビングの食卓から椅子を持ってきた茜に、悟は隣人としてそう尋ねた。もし、体調が万全でないなら寝覚めが悪い。


「うん。全然、平気だよ」


「そう。良かった」


 悟は安堵のため息を吐いた。朝方よりも落ち着いた茜の言い分に、ようやく腑に落ちたのだ。

 一方、自らのことを心配していてくれた悟が、茜はひどく嬉しかった。


「それにしても櫻井さん、熱出した翌日にも風景写真を見たいだなんて、本当に好きなんだね」


「……え?」


 茜が首を傾げると、まるでそれが伝播したかのように悟も首を傾げた。


「あれ、風景写真が好きだからこの写真鑑賞会をやってるって話じゃなかったっけ?」


 そう言えばそうだった、と茜は思っていた。先週までは、茜は風景写真を見たいから写真鑑賞会を行ってもらっていた。

 ただ、今週……具体的には日曜から、茜は別の理由で悟の部屋に集まっていた。


 それは最早言うまでもなく……茜は、悟と一緒にいる時間を増やしたくて、写真鑑賞会にやってきていた。


「と、とにかく、今日もたくさん写真見せてっ。あたし、楽しみで寝れなくて」


 悟への回答を有耶無耶にしつつ、茜はカメラマンが嬉しくなりそうなことを言った。

 がしかし、それは本心からによるものでないことは明白だった。


「……櫻井さん?」


 リビングから持ってきた椅子を学習机の近辺に設置する際、茜は悟に呼び止められた。


「何?」


「椅子、近くない?」


 先週の写真鑑賞会時よりも近付いている椅子。普通に座れば、二人の肩が触れ合うような距離。さすがの悟も、羞恥からそれを指摘するしかなかった。


「えっ、そうかな?」


 茜は白を切った。正直に言えば、確信犯での犯行だった。犯行動機は、悟との距離を縮めたかったから。物理的に。

 ただ当然、悟と肩を触れ合わせながら写真見たかったの、とはまだ言えるはずもなかった。だから白を切った。


 それから二人は、引っ越し二週目夜の写真鑑賞会を始めた。

 しかし、隣にいる男への好意を自覚した今、茜は先日までの鑑賞会と同じ態度は取れそうもなかった。

 東海道線沿いの相模湾らへん。線路と無人ホームと、度々流れる電車の写真。悟が見せてくれる写真は、いつだって予想を超えた素晴らしい写真だ。先週までの茜であれば、写真を見るたびに凄い、と、大喜びしていたことだろう。しかし生憎、今の茜は悟しか眼中になかった。


 結果、茜は写真、悟の説明そっちのけで悟に魅入っていた。

 うっとりとする顔で、茜は思っていた。この時間がいつまでも続けばいいのにな、と。

完璧と言える描写少なかったし、ぶっちゃけ現状ポンコツヒロイン

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