8 魔法剣闘部 (改訂-3)
【魔法剣闘部】をお送りします。
宜しくお願いします。
森の木々の間から、
木漏れ日が降り注ぐ……
キラキラした光の帯が、行く道を照らす……
帝都スタージンガーから少し南に行くと、マースの大森林が広がっている。この辺りは人里が近いから、強力なモンスターなどは出てこない。
入学式から十日がたった。今日は数人でパーティーを組んでの山岳行軍の訓練だった。
魔導を志す者は体力も必要だと考える学園だけに、かなりハードな行軍だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、あ〜ぁ! もう嫌!! 」
ドリスが不平を漏らす。
「こんなの、はぁ、はぁ、殆ど、山登りじゃない! はぁ、はぁ、誰よピクニックみたいなもんだとか言ってたのは?! 」
人が二人通れるかどうかの細い山道をかれこれ一刻は登っている。
「仕方ないだろ? 話しをすると体力が落ちるぞ」
そう言うルバンスは軽やかにヒョイヒョイっと登って行く。
「ルバンス君みたいに進めないよ〜」
エルザまで泣き言をいいだした。
「ルバンス! 君はペースが早いから、一番後ろの方が良くないか? 」
エルトリアは何とかルバンスについて来ている。
「そんな事したら、またパンツを抜かれるわ! 駄目よ! 」
「駄目よ! 」
エルザも同意見だ。
「……たっくぅ……仕方が無いな……みんな足出して」
そう言ってルバンスが何事かを呟き、簡単な印を切り、その指で皆んなの足首に触れて行く。
「わっ! わ! なな何? これ? 」
ドリスがその場でジャンプする。
「風獣を付与した」
「わわ私も! 凄い軽い! 」
エルザも、エルトリアも軽々と登っていける。
「卑怯よ! こんな術を使っていたのね? 」
ドリスがめくじら立てて詰め寄ってきた。
「ち違うよ。俺は使って無い」
「じゃぁ、私達だけ? 」
「そうだよ。たしかドロア先生は、魔法は使っては駄目とは言っていない」
「これなら楽々だが、ルバンスも術を使わなくて大丈夫なのか? 」
「俺は大丈夫だよ。それより先を急ごう。昼食が無くなるよ」
さらに五百メルデほど進むと、開けた場所に出た。先客が大きな木の下の木陰に座っている。先行していた第二学年の上級生の班だ。俺たちを見つけると、すぐに立ち上がりこっちに向かってくる。
「……君、ルバンス君だよね? 」
「……そうですけど? 何か? 」
「……君に別段の恨みは無いが、俺たちと立ち合って貰うよ」
そういっていきなり男は木刀を抜き放つ。
「ちょっと! 何よあんた達!! 」
ドリスが食ってかかるが、ルバンスは彼女を後ろに引っ張り、自分が前にでる。
「ひょっとして、魔闘技部の関係者か? 」
「いや……俺は魔法剣闘部主将、二年のフェルナンデスだ。宜しくな」
木刀を青眼に構えながら、短い詠唱を行う。付与魔法だ。
「戦う理由は?? 」
「この学園が戦国魔導学園と呼ばれる意味を知っているか? 」
「……いや」
「この学園では強い奴が正義でな。生徒会長が一番格付けが上、おれはランキング八位だ。君が倒したクロトワは十一位。強さによって学園での発言権や部の予算まで決まる。現生徒会を潰して、新たに支配権を握りたい反生徒会勢力に、君は興味を持たれている。取り込まれる前に、叩かせてもらう。もし君が生徒会側に入るならば、引いても良い。そうでなければ……」
「くだらない……要するに権力が欲しい連中の争いだろ? 興味ないな。俺はどっちにも入る気は無い。自由に魔法研究がしたいだけだ」
「そうはいかん。君が良くても回りは黙っていない」
「……やれやれ。エルザ、このリュックを持っててくれる? 」
ルバンスは背負ったリュックをエルザに渡して、屈伸運動を始めた。
「やるからには手加減しないよ」
「望所だ。此方は木刀使用だ、君も武器を持ってくれていいよ」
「いらねーよ」
「……そうか、なら行くぞ」
そう言って一瞬でルバンスとの間合いを詰めた! 上段からの斬撃!!
「きゃぁああ! 」
思わずエルザが声を上げる。
ルバンスが斬られたと思ったのだ。だがすでにそこにルバンスは居なかった。凄じい速さでフェルナンデスの右側面に移動し、フェルナンデスの顔面に左ストレートを放つ!
その攻撃をギリギリでかわし、左上から剣で突きを放った! だがすでにルバンスはそこにいない。
射程圏から既に離脱している。
「凄じい動きだな。クロトワがやられたのも頷ける」
そう言いながら、ルバンスとの間合いを詰めて斬撃を繰り出す。木刀が何故か二重に見える。残像が見えるのだ。なんとかその残像攻撃をかわして体制を整える。
「飛燕もかわすか? 何者だ君は? 」
「ただの学生ですよ」
【魔法剣闘部】をお送りしました。
次々と刺客が送り込まれてきます。
(映画 【十三人の刺客】を観ながら)