間話 インフィニティの胎動 後編
【間話 インフィニティの胎動 後編】をお送りします。
宜しくお願い致します。
午後16時30分
女子更衣室
ここ一月余、噂になった【緑の悪魔】は現れなかった。学園側は、魔力発動の痕跡が無かった為、ルバンスの仕業では無いと結論を出した為、嫌疑は晴れている。そもそも何故嫌疑をかけられたかと言うと、当の本人にも、身に覚えがあり過ぎて、弁解が、しどろもどろになった為である。
だがこの日の更衣室の雰囲気には、妙な邪気が篭っていた。今日は一年に一度の球技大会だった為、片付けの為に、運営委員が数人残っていた。その背後から、凄まじく素早い何者かが迫っていた!
「そこに直れ!! ルバンス!! 」
振り向き様、フェルミナ嬢が、一喝するが、そこに現れたのは、ルバンスでは無く緑色のスライムだった!
「スライムだと!? 」
緑色のスライムが飛び上がり、フェルミナに覆い被さろうとしたが、瞬足のスキルで、回避し、腰の剣を居合抜刀して、スライムを真っ二つにした!
「な、なに?! 残像だと?! 」
真っ二つにしたと思われたが、目の前のスライムが、陽炎のように、ゆらめき消える。驚愕したフェルミナを押し除けて、頭のカツラを剥ぎ取ったライラックが、緑色のスライムに、火炎魔法をかけた!
「?! 火炎を弾くだと?! なんなんだコイツは?! ただのスライムじゃないぞ! 」
わざわざ女装して待ち構えていたライラックも、ある意味只者ではないと思いながら、フェルミナが声をあげる! 凄まじいスピードで、スライムは更衣室の窓を破壊して、中庭に飛び出した。念話でジークフリードに連絡する。
『ジーク様! 予定通り中庭に追い込みました……ただし、予想した犯人【ルバンス様】ではありません。緑色の特殊なスライムです! 』
『特殊なスライム?? 』
中庭で待ち構えていたジークフリード・ランドルフは、目の端に緑色のスライムを確認した。そのスライムが、ジークの存在を認識し、まず素直に向かってくる。
「なんだ、この巨大な魔力は?! 致し方ない!! 本気で行くぞ!! 我が神竜バルフレアの一撃で! 」
そう呟き、ジークの身体から黄金のオーラが吹き上がる! 背後から巨大な黄金竜が具現化し、向かってくるスライムに、一気にそのアギトからブレスを放射した!
「きゅ〜っう!! 」
弱体化した声を出して、弾け飛んだかと思われたスライムは、直角に方向を変えて、ある部屋の窓に飛び込んだ!
「い、いかん! あの部屋はルバンス様の?! だ、大丈夫ですか?! ルバンス様!!! 」
ルバンスの事となると、冷静さを無くすジークである。スライムの後を追って窓から室内に飛び込んで行く!!
「……………ルバンス様………なんです? それ? 」
そこには、大量の女性物のパンティや、ブラに塗れたルバンスに、小さく弱ったスライムが、生みの親に甘える様に頬擦りする姿があった。そこにフェルミナと、ライラック、そして遅れてドリスやエルトリアも入ってくる。
「やあ、皆んな……最近は窓から入ってくるのが流行りなの? 」
ルバンスは、流れる冷や汗を思わずパンティで拭ってしまう。その瞳と、ドリスの和やかな瞳が合う。
「ごほんっ!……ルバンス様……これは、このスライムはいったい?? 」
咳払いをしてジークが間に入る。
「あぁ、昔の偉人が作り出した【エロー50】って特殊個体のスライムがあったろ? あれに精霊術式を織り交ぜて、新たな新種生命体【エロー50インフィニティ】を、生み出したんだ! エロー50は、衣服の繊維を溶かす特殊スライムだけど、このインフィニティは、その能力を3倍に増やして、さらに衣服を溶かさずに体内に保管する事も出来て、あらゆる攻撃魔法耐性を身につけた超生命体なんだ! 」
「要するに、女子更衣室で、下着を剥ぎ取らせて、あんたの部屋に運ばせてたってわけね……ふーん! 何を研究してるかと思えば、そのヘンテコなスライムを生み出してたのか、ふーん! 」
ドリスが両手の拳をポキポキいわせてる。
「へ、ヘンテコとは失敬だな〜、スライムの、いや粘性生命体の頂点とも言える究極の存在であり、アリストラス超帝国の魔導科学者ですら、到達出来なかった高みに至った至高の存在でだねっぶっふあ!! うごっ! 」
最後の方は、ドリスの左フックがルバンスの右脇腹にめり込み、下がった顎にドリスの右アッパーが炸裂したため、声にならない声となったとか、ならなかったとか……その瞬間、ルバンスは一瞬でお花畑に到達し、自分では到達しえない極限に入ったとか、入らなかったとか……
【間話 インフィニティの胎動 後編】をお送りしました。
(映画【ワンダフルライフ】を観ながら)




