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60 虚無の世界

【虚無の世界】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 ルバンスが眼を見開くと、瞳が紫色の魔力を輝かせ、凄じい魔力が全身を駆け巡った。全身が痙攣し、頭の先から、つま先まで膨大な魔力が流れて行く。【村雨】に流れた魔力は、増幅されてルバンスに逆流して行く。



「魔力暴走が起きている。このままでは……どうすれば……」

 ジークは強引にルバンスの手から【村雨】をもぎ取り、魔力の逆流を止めた。【村雨】からの魔力で、ジークの掌は火傷を負うが、気にする場合では無い。



「ルバンス! しっかり! 」

 ドリスは必死にルバンスの暴走を止めようと、ルバンスの魔力を打ち消す為に気を流し込む。



「ドリス! 君は奴の封印に入ってくれ! ここは僕が何とかする! 」



「でも!!? 」



「奴を封印出来なければ、結局誰も救えない! 」



「……わかったわ! やってみる! ……ルバンス……またね……」

 ドリスの表情は硬い決意に溢れていた。






 カーリーの受肉した身体を魔導リングが締め付ける。カーリーの魔力を巻き込んで、さらに拘束を強めていく。


「成る程、魔力を糸の様に細くし、それを編み込み、このリングを作っているのか……よく考えたものだな。悪魔族なら効果的だろうな。だが妾を悪魔族などと下等な者共と同じにするでないぞ」

 その言葉が終わらないうちに、カーリーの姿がリングの外側に出現した。



「な?! なんだと? 」

 ナルザラスは焦りを覚えた。カーリーが二人?? いや、リングに囚われているのはナディアの肉体だった。では外側に出現したのはカーリーの霊体か? だが質量のある霊体だと?



「愚か者ども! 爆ぜよ! 」

 カーリーを中心に空間が炸裂した! 周囲に衝撃波が発生する。

 それまで結界を維持していた皆が吹き飛ばされた。カーリーは倒れ伏したナディアの首を掴み、


「……こいつはもう駄目だな……」

 そして、首を握り潰し、放り投げる。



「ほう〜。妾を恐れぬのか? 」

 カーリーの見つめる先にドリスが佇んでいた。その瞳には決意の光がある。



「丁度よい。依代が無ければ、妾を現世で維持出来なくなるでな。貴様の身体を頂くとしよう」

 カーリーがドリスの首を掴み、その瞳を覗き込む。不可視のエネルギー体がドリスの精神に纏わりついて行く。カーリーの霊的存在がドリスの精神を侵食して行く。



「?! なんだ? この世界は? 」

 人間の精神世界に入ると、大体はその主人の記憶で構成された世界が広がる。だがこのドリスの精神世界には真っ白な空間に巨大な紅色の魔法陣が描かれていた。その魔法陣の中心にドリスが佇んでいた。



「……貴様、最初から? 」



「ええ、貴女をここに封印するわ」



「そんな事をすれば、貴様の精神も崩壊するぞ……」

 いつのまにかカーリーの足元に魔法陣の中心が移動している。



「この私の精神世界に顕現した心象結界【ナイトメア】こそが、ラゲージ男爵家に初代皇帝陛下から賜った能力。そしてこの能力は生涯で一度だけの能力……あんたに使ってあげるわ。光栄に思いなさい! 」

 その途端、世界が一変した。白い空間にあった魔法陣が、いつのまにか宇宙に浮かんでいる。そして徐々に魔法陣が狭まって行くのだ。そして宇宙を物凄いスピードで突き進む。否、収縮している。



「貴様の精神世界ごと時間跳躍しているだと? このままでは?! 」

 魔法陣はどんどん狭く、そして小さくなって行く。




「もう九十億年ぐらい経過したわね……もう少しよ」



「こんな能力信じられるか?! 貴様を殺して戻ってやるぞ! 」

 カーリーは周囲に向かって衝撃波を放つが、全て意味を成さない。



「無駄よ。もう終着点だわ」



「ま、まさか? 百三十八億年を経過しただと? 」



「そう、世界が始まる前の世界……虚無の世界よ。私の精神世界が崩壊すると同時にこの魔法陣の足場も無くなる。終わりよ 」



そして、なにも無い世界に到達した。



ルバンス……もう一度、話しをしたかった……



もう一度だけ……


【虚無の世界】をお送りしました。



(映画【インターステラ】を観ながら)

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