53 絶望への呪い
【絶望への呪い】をお送りします。
宜しくお願い致します。
ツインヘッドドラゴンに喰らい付いたその顎から黒い閃光が溢れ出した。喰らい付いたまま、カオスドラゴンロードは、ダークブレスを放った! ツインヘッドドラゴンがおたけびを上げて、堪らず後退る。それと同時に、カオスドラゴンロードは、その巨大な尾で水平にジーク達を薙ぎ払う。
「耐えろ!!! 」
ジークの物理障壁結界で、その攻撃を抑え込みにかかるが、相殺出来ずに跳ね飛ばされた。ヨシアとアトワイトが、妖弓を放つが、殆どがその硬い鱗に弾かれる。
「直接魔力を流し込まないとダメージが通らねーぞ! 」
ソリウリスの槍が、カオスドラゴンロードの背中に突き刺さった。一気に魔力を流し込むと、カオスドラゴンロードは苦しみながら雄叫びを上げた。間髪いれずに、ジークがドラゴンの足を切り裂く!
◆◇◆
闇の波動が激しく魔法陣に触れ、魔法陣の輝きがさらに増し始めた。ナルザラスの結界が押し戻どされる。
「これじゃ、埒があかないわね。私の魔力で結界を支えるから、ルバンスは外に出て戦って! 」
そう言って、クリスは一気に魔力を解放し、結界内をクリスの魔力で満たす。それと同時にルバンスは駆け出していた。家の外に飛び出した目の前に、ライラックが倒れている。
「カオスドラゴン?! 」
辺りにダークブレスを撒き散らし、それをジークが魔法障壁で何とか耐えていた。
「ルバンス様!! 」
「わかっている! なんでこんな奴が地上に出て来るんだ?! 」
カオスドラゴンは、迷宮の奥深くか、この世と地獄の境目にある冥府を根城とする、呪われたドラゴンである。遥か太古の時代、神々と邪神との戦争で、神々側のドラゴン族から、邪神側に寝返った者共。その中でもカオスドラゴンロードは、上位クラスに位置する。ルバンスが指を鳴らして爆炎攻撃を行うが、黒煙の向こうで蠢くドラゴンは、悠然とルバンスを睨みつける。
「ほぼ無傷かよ、ならジーク! ライラック! 」
ルバンスは腰に差した【妖刀村雨】を抜き放ち、その白刃に神霊力を注入していく。
ジークとライラックが、剣に雷撃と、火炎魔法を付与して、同時に放った!
魔法剣の爆発力で、カオスドラゴンの前足を狙う。
つかさずヨシアと、アトワイトも同じ箇所に妖弓を叩き込む!
「ガルス アルス ドラアナロス! 灰燼とかせ闇の住人よ、爆滅せよ暗黒の王よ、 滅爆衝撃波!!! 」
ルバンスの詠唱が完成し、【村雨】に強力な魔力が宿る。それを一気にカオスドラゴンに叩きつけた! その波動をその身に受けたカオスドラゴンは、肉体の内側から連鎖爆破を発生させ、最後には分子崩壊を起こし、灰燼とかした。
「くっくくっ、素晴らしい! 暗黒魔法と神聖魔法を混合したのですね。一歩間違えれば、自らに魔力が逆流しますよ。 だが真打はこれからです」
ルバンス達から遥か上空で、悦にいる蘭丸が、素早く印を結ぶ。
「ノウモウ バギャテイ ソワカ、ノウモウ バギャテ ソワカ アドパドバ ビシャエイ ソワカ! ……流石は帝国随一の魔導士ナルザラス殿、そして【黒龍の巫女】の神巫でもある。だが、この術は破れませんよ」
◆◇◆
「?! ナディア様の様子がおかしい! どうした? 」
カインは結界の外からナディアの異変にいち早く気がついた。意識は戻ってはいない。だが身体に変化がある。
「……これは?! いかん外部より呪いを強化されている。何者かが、我が結界をすり抜けて……皆、下がれ! 」
ナルザラスは結界を解き、皆を魔法陣から下がらせる。
それに合わせる様に、ナディアの上半身が手も使わずに、ゆっくりと起き上がる。
ナディアの瞳は真紅に染まり、口から犬歯が覗いている。
「吸血鬼化している。不味い、戦闘態勢! 」
ナディアが両手を天井に向けて、全身から暗黒の神霊力を解放した! カインの家の屋根が吹き飛び、さらに家全体が爆散する!
【絶望への呪い】をお送りしました。
(映画【ダンスウィズウルブス】を観ながら)