表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/65

44 幻惑の羽衣 参

【幻惑の羽衣 参】をお送りします。


宜しくお願いします。

 ロードグランデ大迷宮の最終階層……


 転生の儀式を執り行っている最中に、その強烈な波動を感知することとなる。世界中の恐怖と絶望を集めた様なこの場所に集う者達にすらこの波動は規格外だった。


「……魔神並みの魔力波動……まるで堕天使ルシファーでも召喚したか? 」

 首からロザリオのネックレスを下げた男が呟く。まるで神父の様な服装をしているが、首から逆十字のロザリオを下げている。



「これは神具と呼ばれるアーティファクトの波動ですよ。アリストラス超帝国より遥か太古に存在した神々の遺産です。普通の人間では制御はおろか、手にする事すら出来ない物……」



「そんな物を動かせる人間が存在すると言う事だな。大丈夫なのか? 」



「問題はありません。既に走り出した計画に変更は無い。我らはローマ帝国にあがらった反逆児の受肉に集中しましょう」

 三人の人影の前に祭壇があり、その床の魔法陣には赤黒い肉塊が不気味に蠢いていた。ロシア政教の祈祷秘術呪文、呪禁道の呪言、真言が重なり合って詠唱され、その肉塊はさらに膨れ上がり人の形をとり始める。世界の最も深き場所の闇が、更に色を深くした。




◆◇◆




 ドリスは怒っていた。せっかく皇帝陛下主催のダンスパーティーにルバンスを誘ったのに、苦手だと皇帝陛下に直接辞退を伝えたと言う。それではどうにもならない。せめて会場へのエスコートくらいしてくれても良いのにと、今朝からプンプン怒っている。


「さっさと行くわよ! なんか騒がしいわね」

 ドリスはエルトリアを引き連れて歩きながら、なんだか正面入り口の方が騒がしい事に気がついた。



「なんだろう? あれは警護騎士団だね。なにを慌ててるんだろ? ん? 」

 エルトリアは自分達の前を焦りながら横切るジークフリードに声をかけたが、ジークは気づかずに正面入り口に向かって走り去る。



「なんなのよ? 早く行くわよ。出来るだけ皇帝陛下の近くに陣取るわよ」

 ドリスは気にせずにジークとは反対の方へ歩きだす。



「なんか変だよドリス! 」



「関係ないわ、もうダンスが始まるわ」

 ルバンスが居ないパーティーなんか正直どうでも良かったが、社交界でのラゲージ男爵家の立ち位置を護る為には参加辞退など出来なかった。半分はやけっぱちだが仕方がない。

 皇帝陛下の周りには近衛騎士団が陣取り警戒している。どう見ても何か問題が起きているのだが、ドリスにはルバンスの事でイライラしている為に目に入らない。



◆◇◆



 「ルバンス様! クリス、お前なんて事を! 」

 ジークフリードは信じられない物をみた。【幻惑の羽衣】では無いか! あれは封印の間で厳重に思考減速結界に守られている。結界に入った瞬間、思考速度が極端に遅くなり、結界内での物理的活動はほぼ不可能になる。時の流れが遅くなる事と同義だった。どうやって持ち出したのか? って言うか、そそれは?!



「ドドドリス! それは、紐ブラか? そんな恐ろしい物を! 」

 乳輪を隠す極小の布から脇と肩に真珠をあしらった紐が伸びている。実にエロい。



「煩いわね! お兄様は警備担当なのだから、外で皆様を守ってらして、私はルバンスとダンスを踊るわ」

 何とかクリスを止めようとしたが、羽衣の物理攻撃無効化の結界に阻まれてクリスを掴む事が出来ない。クリスが認めた者でしか近づく事が出来ないのだ。ジークフリードは目眩を覚えて、膝がガクガクして来た。強烈な多幸感が襲ってくる。



「ジーク! 大丈夫か?! 」

 ルバンスが駆け寄るが、結界から出られない。



「さっさと行くわよ! 陛下がお待ちだわ。ほら音楽が変わった! ダンスが始まるわよ」

 どう考えてもそれどころではないが、ズンズンとクリスは会場に突き進む。周りの貴族達が次々と多幸感に襲われ、快感の海へと沈んでいく。それは男も女も関係なく。クリスが歩むと、まさに海が割れて行く様だった。





【幻惑の羽衣 参】をお送りしました。


(映画【レザボアドックス】を観ながら)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ