43 幻惑の羽衣 弐
【幻惑の羽衣 弐】をお送りします。
宜しくお願いします。
「法皇陛下! やはり神具の魔導反応です」
北の大地にそびえるクリスタルパレスと呼ばれる白亜の宮殿につめる僧侶達は慌ただしく動いていた。この北方六カ国を纏めるグランドロア聖教の中心にて、中枢機関の幹部連ではいきなり発生した巨大な魔導反応にパニックを起こしていた。
「……神具の解放……千二百年ぶりか……この波長は【幻惑の羽衣】か? 」
「あり得ません。あれは人が扱える物では無い。いくら守り人の血筋でも無理です」
魔導科学を信奉する大僧正達は、これが神具だと判断したが、その名の通り神具は人が扱える物では無い。アリストラス超帝国が崩壊する前から封印され、その護りとして神具の持ち主たる神に連なる血族、眷属が【守り人】として封印の管理を行なっていた。
「だが扱えた……血族の中から神に近い者が生まれた。そう考えるしかあるまい……災厄の渦が近いからかもしれぬが……」
「災厄の渦が……」
◆◇◆
「じゃ〜ん! 」
更衣室を仕切るカーテンが左右へと一気に開けられ、中からあられもない姿のクリスが上着を着替えて出てきた。
「?! ……ほんとに、ほんとうに、その姿で出るの? 本当に? 」
ルバンスは何度も念を押す。自分は聖人君主では無いから、エロい事は好きだ。って言うか大好きだ……だけど、一割ぐらいの分別は持っている。これは流石に不味いだろう。二人きりで、迫られたら大興奮だろうけど、この姿で今から、皇帝陛下や、重鎮たち大貴族の前で踊って見せるなんて、本来なら罰ゲームだよ。なんで平気なの??
「当たり前じゃないの? なんの為にここまで来たのよ? 」
俺はあんたに連れて来られたんだよ!
「露出狂の罪で、捕まるんじゃ? 僕には将来を誓ったエロい、いや可愛い女の子が居てですね……」
「そんなんだったら、とっくに捕まってるわよ」
開き直りやがった! だが、確かになんで放置されてんの? 伯爵家だからか?? そんなんだったら、貴族は何でも有りになってしまうから、そんな訳ないよね……
「ごちゃごちゃ、男のくせに女々しいこと言わないでよ! さっさと踊りに行くわよ! 」
◆◇◆
「……なんだ? この魔力量は? 人ではないな、アーティファクトか? 」
グラウス・ラア・ボナパルト・ゴドラタン皇帝は、いち早く異変に気がついた。
「はあ、どうも魔力の発動点が離宮に向かって移動しています。陛下はお下がり下さい」
武官筆頭のバルバロッサ公爵は、近衛騎士をグラウス皇帝の警護に付け、自らは離宮の入口に向かおうとする。
「だが、これはクリスの魔力が混ざっている。あの者がアーティファクトを身につけているのではないか? 」
「であったとしても、この強烈な魔力は捨て置けません。離宮の前で止めさせまする」
そう言い残し、バルバロッサ公爵は離宮入口に向かい出した。
「近衛騎士団は、陛下を御守りしろ! ジークフリードにも離宮入口へ来る様に伝えろ、本当に相手がクリス嬢ならジークフリードの身内だ。説明させろ! 」
バルバロッサ公爵が離宮入口に到着した時には、すでにクリス・ランドルフと、もう一人の少年が警護騎士を倒していたところだった。正確には、勝手に騎士団員が自らバタバタと倒れこんで行く。
「なんだ? アーティファクトの力か……うっ……」
そう言うバルバロッサ自身も眩暈を覚え、急激に多幸感に包まれ、意識が遠退き、意識を失ってしまった。
「何だか、みんな倒れて行くわね? こんなところで寝たらお風邪を召しますのに……」
やばいよ! お前のその恐ろしいアーティファクトが原因だよ!
「絶対にやばいよ! 出直した方がいい。その上下の下着の魔力は普通の人には魔導兵器とかわらないよ! きっと怒られるよ」
ルバンスといえば、さっきから愚息が起立しっぱなしで、痛くて仕方がない。歳をとったジジイなら、最高のアーティファクトだろうけど、若人には拷問だよ。倒れた騎士団連中の股間が心なしモッコリしてる……
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