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42 幻惑の羽衣 壱

【幻惑の羽衣】をお送りします。


宜しくお願いします!

 ルバンスはクリス・ランドルフに手を引かれて、着替えを行う控室に入る。ここはランドルフ家専用の控室である。迎賓館として使われる【悠久庭園の離宮】に控室がある時点でランドルフ家の帝国での立ち位置がわかる。



「こんな硬っ苦しい服……やだな〜」



「何を仰るの? 殿下はかりにもアリストラス皇國の皇太子であらせられます。皇帝陛下の前で見窄らしい姿を晒すとなれば、お世話役を仰せ使った我がランドルフ家が仕置きを受けます」



「……で、君はその紐パンで出るの? 」



「いやですわ〜 皇帝陛下の御前ですわよ。もっと社交界に相応しい紐パンを用意していますわ」

 結局紐パンかい! そんなんでいいんかい!


「それとも、ルバンス様もお履きになりますか? 」


「履くか! 」


 そんなやりとりの末に、クリスが着替えをして出てきたその姿は、強烈だった。なにが強烈かというと、その紐パンの神々しさに目を奪われてしまう。目が離せない。まずフロントのブイゾーンがさっきの紐パンよりかなり鋭角だ。エロ過ぎる! 男なら誰でも視線誘導されてしまう。バックなんてただの紐だし、サイドにはこれまたシースルーの煌めくフリル生地の飾りがついた紐だ。要するに紐だ。ただそれよりも、この溢れ出る魔力……魅力される。



「この紐パンは、アリストラス三女神が一人、【アーネス】様が、魔王達と戦う際に使用した神々のアーティファクト【幻惑の羽衣】の紐パンですの。魔王すら惑わし、魔人如きならその魔力で配下にしてしまうという最強のアーティファクトですのよ! 」

 なんじゃそりゃ?? なんでそんな物を持ってるの? って言うか、そんなの履いて社交界に出てどうする気? 国を乗っ取るの?



「……あの〜。それって不味くない? 皇帝陛下や重臣の皆さんが、そのアーティファクトの力で魅力されたらやばいんじゃ? 」

 ルバンスは必死にレジストしながら、なんとか意識を保っている。かなりヤバイ。愚息まで暴れ出しそうだ……



「大丈夫よ! 私が邪な気持ちを持ってたら駄目だけど、こんなに澄み切った清純派の私なら変な事にはならないわ! 」




◆◇◆



 「クリスは何処だ?! 」

 ランドルフ伯爵は焦っていた。クリスが【幻惑の羽衣】の紐パンを持ち出してしまった事に。あれで皇帝陛下の前に立ち、皇帝陛下がクリスに求婚でもしたら大変な事になる。アーティファクトを使って魅了し、求婚を引き出したなどとなれば、謀反を疑われてしまう。

 「大至急、離宮に人員を送れ! 警備のジークフリードに止めさせろ! 儂もすぐに行く! 」


「旦那様!! 」


「今度はなんだ? まだ何かあるのか? 」


「【幻惑の羽衣】三種のうち、羽衣自体は結界の部屋にありました……ただ、アレもありません」


「な何?? 紐パンだけでなく、アレまで持ち出したのか? 不味い……それは不味いぞ! 魔導団に連絡しろ! 」



◆◇◆



「さ〜ってと! そろそろ上着も、着替えなきゃね! ルバンス様手伝って貰えます〜」



「え!? いいの? 」

 いやダメダメだ! これは罠に違いない! 手伝い始めた途端に、ドッキリの立て札を持ったジークフリードが入って来るのか?

 警戒しまくるルバンスを尻目に、さっさとクリスは着替え室に入っていった。あと15分ほどで、ダンスパーティーが始まる。ルバンスはどうも嫌な予感がしてならない。


【幻惑の羽衣】をお送りしました。


(映画【人間失格】を観ながら)

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