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34 霊体動力

【霊体動力】をお送りします。


宜しくお願いします。

 ゴドラタン帝国南部の某所。


 薄暗い洞窟を物々しい一団が進む。その人員は様々で、学者の様な男や、技術者、護衛の帝国騎士、よくわからない機材を運ぶ人足などだ。かなり広い鍾乳洞を下へ下へ降りてゆく。地下水で滑りやすくなった岩を慣れない者達が必死に降りてゆく。



「……あった。伝承の通りだ! 」

 分厚いウールのコートを羽織った男は、小さな杖をツルツルした金属の表面に近づけると、杖の先端が青白く輝きを発した。



「ナルザラス様! これが船なのですか? この巨大な金属の壁が船の一部なのでしょうか? 」



「ああ、超帝国時代に星の海にまで到達したと言われる船の胴体部分だ……ファーストコンタクトと呼ばれる最初の災厄の渦、その戦いでこの地に落とされた船だ」

 ゴドラタン帝国の宮廷魔導士ナルザラスは、懐から文献を取り出し、ページをめくりながら事のほか興奮していた。



「よし! 皆の者、各部署毎に調査を開始する。騎士団の者は早速皇帝陛下に報告をお願いする。魔導団はこの山全体に結界をはり、外界との隔離を! 他国の魔導士に気取られるな! 」

 ナルザラスはこれから十年以上に及ぶ発掘作業と、そこで得られるであろう超帝国の魔導科学技術や知識を想像すると、心が打ち震えた。




◆◇◆




 黒曜の祭壇の間から大扉を熱エネルギーで破壊して現れたその巨大な鋼鉄の存在【自律機動陸戦兵器ハヌマーン】は、体長五メルデはある巨体であるにもかかわらず、素早い動きで暗黒騎士や蛇頭騎士の区別なく攻撃を開始した。四本の足と二本の腕は巨大な蟷螂(カマキリ)の様だが、それよりも重量感がある。魔法で対抗する蛇頭騎士を足で踏み潰し、暗黒騎士の振り下ろす大剣を片手で受け止め握り潰した。



「何だあの出鱈目な強さは?! 」

 ヨシアとアトワイトは妖弓を引き絞り爆裂魔法付与された矢を放つ。


「私が援護する! 体力向上、反射向上、腕力向上、治癒向上! 」

 フェルミナの奏でるリュートから魔法の音色が周囲を包み込み、全員の身体能力を向上させていく。



「ジークフリード! ルバンス様のフォロー! ソリウリスとミランは奴の足をとめろ!」

 ライラックは愛刀に雷撃魔法を付与し、雷撃剣をハヌマーンに放つ! だが直撃したが意に介さず向かってくる。ミランがその足を止めるべく、熊と虎の縫い包みを放った。巨大化した動く縫い包みはハヌマーンの足を抑え込むが、それでも止まらない。平将門から爆発的な妖気が周囲に噴き出した!



「わが妖剣の錆にしてくれる! 」

 将門が大上段に構え、その漆黒の妖剣が一気にハヌマーンの体長を超える長さになり、そのまま振り下ろした! ハヌマーンの装甲に剣が襲いかかる! 装甲に施された防御術式が発動し、剣圧を跳ね返そうとする! 凄じいエネルギーがぶつかり爆風が周囲を巻き込んだ! そのタイミングをみはからって詠唱を完了したルバンスが右腕をハヌマーンに向けて叫ぶ!



魔神爆鎖波動陣(ストアルバードドリンガー)!!! 」

 ハヌマーンを中心に結界が展開され、魔界の粘菌生物が召喚された! ハヌマーンの足元から粘菌が這い上がってゆく。





「ふん! 無駄な事を! 霊体動力(アストラルドライブ)発動! 」

 ハヌマーンの遠隔コックピットで王弟ドライアードは、この呪われた機体の核心的エネルギー源を発動させた。するとハヌマーンより女の叫び声の様なものが響き渡る。



 ギャガァッァァアアアアアアアガガ!!!!



「クライン! さあ死んでしまえ! はぁははは!! 」

 狂気に取り憑かれたドライアードはハヌマーンのパワーゲージを一気に上げた。ハヌマーンの装甲が発光し始め、それに触れた魔界の粘菌生物が蒸発してゆく。結界にも亀裂がはいり崩壊した!



「やはり凄じいエネルギーだ。この動力炉を量産できれば世界制覇も夢ではない」

 ルーべリア団長は遠隔コックピットの側で動力炉調整を行いながら野望の炎を燃やし始めていたが、ふと胸に走った激痛で我に返った。



「な、ななんだ、と? 」

 ルーべリアの胸から白刃が生えている。口から大量の血を吐いた。


「その様な夢を見る時間はもう有りませんよ」

 ルーべリアの耳元で蘭丸は囁いた。






【霊体動力】をお送りしました。


ついに災厄の渦で活躍するあの船が登場です。


(映画【藁の盾】を観ながら)

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