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29 漆黒の感情

【漆黒の感情】をお送りします。


宜しくお願いします。

 制圧した赤の回廊から、ルバンスはライラック達共々、青の回廊へ移動する事にした。青の回廊には先にヨシアとアトワイトが到着し、善戦していた。ヨシア達とは逆の入り口からソリウリスが溢れ出す屍を槍で串刺しにしてゆく。


「どうも変だ……なんだこの違和感は? 」

 アトワイトは屍人を始末しながら、この変な感覚に違和感を覚えた。たしかに意表をついた攻撃だが、それほど驚異だと思わない。むしろそこに違和感がある。敵の首魁の意志が働いているなら、もっと強力な、例えば暗黒騎士などを送り込んできても良さそうだが……

 駆けつけたルバンスは直ぐに詠唱に入る。詠唱に集中し過ぎた事で隙が生まれた。それを見逃さない存在がルバンスに術をかける!



「な! なんだと?! うっががぁあ!」

 ルバンスの身体を筒状の結界が包み込み、手足の自由を奪った。

全身を激痛が走り抜け、気を失ってしまった。



 「ルバンス様! 」

 ライラックはルバンスに術をかけた黒装束の男に雷撃剣を叩き込もうとしたが、視界から姿が消えた! 見失った存在から首筋に手刀を叩き込まれ、崩れ落ちる。

 ライラックを倒した男に向かってノーモーションの突きを放ったソリウリスの首筋に短剣の刃を当てて、その動きを止めた。



「学生風情が、【雷撃剣】に【月影】だと? こいつらラウンズか?! 」

 黒装束の一人が指揮官と思しき男に話しかける。



「皇帝が代替わりすると、その親衛隊も入れ替わるという。こいつらは新世代なのだろう」

 倒れたライラックの髪を掴んで、その顔を上げさせる。ミランが暴れるが、二人がかりで抑え込まれて動けない。だがその時、気を失っていたと思われていたルバンスの右手の親指と人差し指が、指を鳴らす。ミランを抑えつけていた二人の至近距離で炸裂が起こり、爆風に煽られた。その隙を突いてミランがソリウリスに刃をたてていた男に当て身を喰らわせた。



「ターゲットは回収した。撤収する! 」

 【黒の蛇頭騎士団】団長ルーベリアはそう言うと、速やかに撤収を始めた。あっと言う間の出来事だった。忽然と黒装束の集団が消えたのだ。



「……奴ら……あれはプロだぞ。ターゲットだと? 」

 ライラックは頭を振りながら起き上がり、考えを巡らすが纏まらない。ルバンスもこめかみを押さえなながら、振れた意識を覚醒させ、結論に思い至る。


「不味い! 」

 そう言ってルバンスは補修棟に向かって走り出した。皆が後を追う。勢いよくさっきまで宿題をしていた補修室に駆け込んだが、辺りは教科書が散乱していて、その中にエルザがうつ伏せに倒れ込んでいた。


「エルザ! 大丈夫か?! 」

 エルザを仰向けにして、呼吸と脈を確認し、意識を回復させる魔法を施した。


「……ルバンス……様……? 」

 目を開けて、ぼんやりとルバンスを見つめる。


「何があった?! ドリスは? 」

 ルバンスは速る気持ちを抑えながら、ゆっくりとエルザに語りかける。そうこうしていると、ジークやライラック達も追いついて来た。黒装束の集団が消えると同時に空間跳躍陣も掻き消えた。



「……ドリスが黒い連中に連れ去られました……私、なにも出来なくて……うぅっ……」

 意識が覚醒したエルザはボロボロと泣き出してしまった。

 

「奴ら、何か言ってなかったかい? 」

 そういえばと、エルザは辺りを見渡して、1枚の紙を手に取る。そこにはアリストラス語で【黒曜の祭壇で待つ。51, 09 】と書かれていた。


「これを渡されて直ぐに気を失わされたの。ドリスは火球の魔法を放ったけど、黒い連中に当たる前に魔法が掻き消えて……」

 やっとエルザは落ち着きを取り戻し、回廊で騒ぎが起きて、ルバンスとエルトリアが補修室を出て行くと、直ぐに黒装束の男達が五人入ってきた事をルバンスに伝える。

 詳細を確認したルバンスの背中は明らかに怒りに支配されているのがわかったが、エルザにはどうする事も出来なかった。


「ルバンス様。黒曜の祭壇とは、アリストラス皇室の祭事場の一つですね? この数字は? 」

 ジークフリードはこの嫌な状況にルバンスが冷静でいられる事を願いながら、恐る恐る確認する。




【漆黒の感情】をお送りしました。


(映画【仁義なき戦い】を観ながら)


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