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26 器と魂魄

【器と魂魄】をお送りします。


宜しくお願いします。

 燃え盛る炎のかな、ゴドラタンの騎士団は磔にされた民衆を何とか助ける事に成功した。まだ大半の者は生きているが、出血が酷い為、予断は許さない。


 「さあ! 今のうちに! 」

 ラウンズが辺りの死霊共を駆逐しながらも、騎士団と民衆を安全な方向へ誘導する。前方ではルバンスとあの異様な鎧武者が対峙している。



「……皆、そろそろ撤退の用意。俺も後から撤退する」

 ルバンスは振り向かずにラウンズの面々に向けて呼びかける。



「ラウンズ! 魔法攻撃防御、物理攻撃防御、撤収するぞ」

 ジークフリードの指示で、各々が防御の魔法を重ねかけしながら徐々に撤収を開始した。だが鎧武者はそんなラウンズの動きには反応を示さない。ルバンスと視線を合わせながら、大上段に太刀を構えてゆく。次の瞬間、ルバンスが右手を振り上げたかと思ったら、一気にその右手を振り下ろす。すると、上空に巨大な火炎の球体が五つ、六つ浮かび上がって、それが一気に平将門に向かって落ちて来る。極大の爆裂魔法の連鎖爆発が起こるその瞬間にルバンスは空間跳躍した。連鎖した衝撃波が周囲を吹き飛ばす!

 爆風に舞い上がる粉塵がおさまり、視界が開けてきた。バラバラになった鎧が散乱しているが、その破片が意志をもつかの如く、集まろうと蠢いている。



「やはり効かないか……」


「ルバンス殿! 」

 急に後からグラウス皇帝に呼びかけられた。この方も気配を消すのだお上手だ……


「陛下! この様な場所に。危険です」


「よい気にするな。あれが例の鎧武者か? あれだけ破壊してもまだ復活するか。我が虎の子の手帳を持って来たが、さて……」

 グラウス皇帝は右手を顎に添えて考え込む。


「陛下、あれの器を封印しても、魂魄が残ればまた別の依代を使って復活します。あれだけ巨大な怨霊の魂魄を封印するにはかなりの神霊力が必要です」


「ふむ。ならばどうすれば良いと思う? 」


「器と魂魄の繋がりを切るしか無いかと」


「どちらかを封印しても繋がりは残る。それを断ち切らねばまた復活するか……わかった。ならば一旦引くぞ! 」


 そう判断したグラウス皇帝の行動は速い。ラウンズ共々即撤収に入る。あの怨霊は魔法攻撃、物理攻撃共に効果が薄い。消滅させるには準備が必要だと判断した。




◆◇◆




 【黒の蛇頭騎士団】ルーべリア団長は、目の前の銀髪の男の底しれない闇に内心、恐怖した。ここはスタージンガー城塞都市の内側にある市場からほど近い宿屋の一階だ。この宿自体が情報ギルドの持ち物なのだろう。騎士団を前にして話しをするこのギルド長の底を測るどころか、闇にあてられている。



「帝国の中枢たる城にいたる道はこの隠された抜け穴が確認されています。ただし、皇族が不測の事態の脱出に使用する為に、敵を防ぐ罠も多数あるかと思われます。流石に地図までは入手困難ですが……」

 銀髪の男は手短に要点だけをルーべリアに伝える。その間、ルーベリアは冷や汗が止まらない。

(団員達はこの男の異様さを感じて無いのか? 修行不足だな。だが今はなまじ感知出来るこの身を呪うぞ)



「上出来だ。ときに貴方はナイアス大陸の東方地域の方か? いや余計な詮索だったな」

 ルーべリアはこの男の情報を少しでも聞き出すつもりだったが、後悔した。



「いえ、私は東方地域の貧乏騎士家に生まれました。三男だった為、この様な事を生業としています」

 全てを見透かした様な目に、蛇頭騎士団の歴史で最強だと言われる男は、内心を隠すだけで精一杯だった。魂の根源を掴まれた様な不愉快さがある。

(……本当に人間か? )



「そうですか、失礼した。我らはこれで」

 席を立つルーべリアに銀髪の男は柔らかい笑みで答えた。その笑みを見た瞬間、心の臓が凍りつく思いを味わった。




◆◇◆




 爆炎で焼き尽くされた屍人の軍勢だったが、少しずつ再生されてゆく。屍人を再生と言う表現も変だから、破壊された器を繋ぎ合わせると言うべきか。



「……奴ら、軍勢を再構築する気です。このまま居座るような事になれば、外部との物流が止まってしまいます」

 玉座の間で、ランドルフ伯は苦々しい思いだった。主だった者が集まったいる。



「あれをやるには、器と魂魄との繋がりを断ち切る必要があります。その為の準備が必要です。何処か別の場所に結界を構築して奴を封じ、そこで魂魄との繋がりを断ち切って、引き剥がすしか方法が無い。ではいまから作戦をお伝えします」

 ルバンスは一同の顔を一通り確認してから話し始めた。この時、別の事態が進行している事をまだ誰も知らない。

 














【器と魂魄】をお送りしました。


(映画【イージーライダー】を観ながら)

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