24 超帝国の血統
【ルバンスという存在】をお送りします。
宜しくお願いします。
ルバンスの行手から屍人の軍勢が襲いかかって来る。自然界のあり様を否定する存在達は、ただ目の前の生ある者を襲う事でのみ、その自らを肯定した。その怒涛の波を見てもルバンスは歩みを止めなかった。
「……死して魂を縛られる可哀想な者達……」
ルバンスはタイミングよく右手の親指と人差し指を連続して鳴らす。すると屍人の軍勢の中で、火炎魔法と氷雪魔法が交互に炸裂し始めた。二千度近い高温の火炎流の渦が発生したかと思うと、すぐに屍人達が纏めて凍りつく。それらが間隔を開けずに連続して敵を蹂躙する。ナイト・オブ・ラウンズの面々は呆気に取られた。ルバンスは消し炭になった屍人を踏み越えてゆく。
「何だ? このデタラメな強さは?! 全て無詠唱だと? 」
ライラックは負けじと、火炎魔法を放ち焼き払ってゆくが、どうしても詠唱を行う為に攻撃速度は遅くなる。その間もルバンスはどんどん前に突き進んでゆく。
「ソリウリス! ミラン! 二人はルバンス様の左右に付け! ルバンス様が撃ち漏らした敵を始末しろ! アトワイトはヨシアと共に後方から援護射撃! 」
ライラックはラウンズ左翼に指示を出して、自らはジークと共にルバンスの両翼の役割を果たす。エルトリアとフエルミナは遊撃的に各個撃破してまわった。ルバンスに襲いかかる屍人の群れをミランの傀儡人形が間に入って蹴散らしにかかる。
「やっと認めたか? 」
ジークは揶揄するように言いながら、ライラックの後ろから襲いかかるスケルトンナイトを両断した。
「認めたわけでは無い! 今だけだ! それに貴様との決着も必ずつける! 」
たった九人で屍人の軍勢を暴風の様に蹂躙してゆく。その目の前にニ体の巨大な暗黒騎士が立ち塞がる。
「ダークナイトか! 対死霊防御! 俺とジークでやるぞ! 」
ライラックとジークは、ルバンスの脇を走り抜け、ダークナイトに突進して行く。剣戟を繰り広げる二人を尻目に、ルバンスはその間をさらに進んでいく。その先に更に巨大な重装甲の首無し暗黒騎士が立ち塞がる。
「デュラハン! ルバンス様、下がって下さい! 」
ソリウリスが槍の連撃を放つが、全て弾かれた。装甲にあたる直前で目に見えない障壁によって塞がれる。ルバンスは歩みを止めずに、さらに前に出て、デュラハンに向かって右手をかざす。
「ソリウリス! ルバンス様から離れろ! 」
エルトリアがソリウリスに叫ぶ!
ルバンスの右手から発動した不可視の力の奔流がデュラハンを飲み込んだ。デュラハンの重装甲が軋みを上げてぐちゃぐちゃになり、更に圧縮された鉄塊へと変わる。
「なななんなの?! これが【風獣】の力? 」
ミランはルバンスの力に冷や汗が止まらない。物理的な力全てに干渉する不可視の力。依代を失ったデュラハンの悪霊が鉄塊から逃れる様に立ち上る。それをルバンスは左手で持った剣で薙ぎ払う。剣は鞘に収まったままだが、デュラハンは耐えきれずに消滅した。
【妖刀村雨】はデュラハンの神霊力を吸い取って打ち震えている。
その力を魔力へと還元し、さらに【風獣】の威力を上げてゆく。
(いままでの生徒会との戦闘などは手加減されていた。この凄じい戦闘力は伝説の十剣神に匹敵する。我等が勝てないわけだ……)
ジークフリードは改めてルバンスの戦闘力に驚嘆した。これがアリストラス超帝国の血統か。ルバンスは遂に敵首魁目前まで近づいた。
「……蘭丸よ、あれは何だ?! 」
平将門は隣りで控えていた蘭丸に投げかけたが、そこに蘭丸の姿は無かった。
「端っこいい奴め、まだ何か策謀しているのか。まあいい……それよりもあの小僧、なかなかだ。素晴らしいぞ! 」
平将門は悦に入り、巨大な屍の馬を前に進め、ゆっくりとルバンスに近づいてゆく。
ルバンスはゆっくりと平将門へ向かって右手を上げて指を、パチンっと鳴らす。
平将門の騎馬の足元から火炎流が吹き荒れた! が、一瞬でその炎が掻き消えた。
「小童!! 面白い事をするではないか! 」
将門の悦にいった瞳が、邪悪な色に変化するのがわかった。
【超帝国の血統】をお送りしました。
(映画【伊賀忍法帖】を観ながら)
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