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17 呼び出されし者 (改訂)

【呼び出されし者】をお送りします。


宜しくお願いします。

「……まだ目覚められませんか父上? 」

 トーリはルバンスの額に水で絞ったタオルをのせているカインに背中から声をかけた。



「ああ、私の事はよいからご学友の方々に食事頼む」



「わかりました」

 そう言ってトーリは食事の乗った皿をテーブルにどんどん運んで行く。そのテーブルでは深刻な顔で、ジークフリード達が本国に使い魔を介して連絡を行っているところだった。


 

「はい、そうです。これはその様なレベルを超えた話しだと考えます」



『だが、その場合はアリストラスと事を構える事となる。ランドルフ家としてはわが家臣団の中から選抜して護衛を出すのが精一杯だぞ』



「構いません。タイランド家からも護衛を出して貰いますので、では此れにて」

 テーブルに乗った梟が青い炎と共に消えた。使い魔はその家によって様々な動物を使役する。ランドルフ家は梟、タイランド家は白鳩、ラゲージ家は猫を使い魔として長年使役している。



「これで何とか帝都までの護衛と、この家の護衛は確保した」

 この時、やっとルバンスが目覚めたとカインに伝えられ、皆がルバンスを囲うように恐る恐る覗き込む。



「……うっ……て、敵は? 」

 ルバンスはゆっくり目を開けるが、まだ朦朧としている。



「敵は排除しました。もう大丈夫です」

(……かなりのダメージだ。あの刀に神霊力を持って行かれた事が原因か……なんなんだあれは……)

 ジークフリードはルバンスの額にに手を翳して、神霊力を注ぎ込む。こうやって持って行かれた神霊力を少しでも補充しているのだ。



「そうか、済まない。俺が不甲斐ないばかりに……」



「何を言われます! 我らはクライン様を御守りすると誓ったのです。本国から撤収命令が出ようとも誓いを破る事は御座いません」




◆◇◆



 常世の祭壇の側に置かれた椅子に腰をかける銀髪の男は、小さな木箱から紫の布に包まれた物を取り出して床に置く。

その布を解くと中から頭蓋骨が出て来た。



「……現世より持ってきた呪物が役に立つとはな……」



 そう男は呟くと、なにやら両手で複雑な印を結ぶ。さらに低い声で、呪文を唱えると頭蓋骨の額に逆十字が浮かび上がってくる。そして自らの親指を噛み、そこから血を流して、頭蓋骨に振りかける。



「……オン ジュラアロア バラロカキャナソワカ! 怨念の渦に身を焦がす悪霊よ! 汝が呪いし因果を呼び覚ませ!

出でよ!! 」



 男の暗闇から響き渡る様な詠唱と共に頭蓋骨が光輝きだす! そこから立ち登る禍々しい黒い霧が段々と形を為して行く……鎧を来た武者が現れた。



「……我を呼ぶは何者ぞ?! 」



「新皇陛下! 我は貴方様の王国を建国する手助けをする者……」



「……その呼び名を知るのか?! 貴様は?! 」



「我れの事は、蘭丸とお呼び下さい」



「共を許す! なれば我が覇道を手伝うがよい! 手始めに我が軍団を復活させるぞ! 生きとし生ける者共を根絶やしにするのだ!! 」



「はぁはあ! 仰せのままに! 」

 銀髪の男はフードをまぶかにかぶっていて、その表情はわかりにくいが、口元だけを見れば、余りにも邪悪だった。




◆◇◆



 この魔導学園内にある魔導図書館、さらにその薄暗い一室に集まる者達がいる。各々が本校の制服を着用しているところを見ると生徒の様だが、普通の生徒とは明らかに雰囲気が違っていた。



「ジークフリードは転んだか? 」

 四角い色眼鏡をかけた細面の男が話しかける。



「ふん! あやつはお坊ちゃんだからな……真っ直ぐ過ぎるのさ」

 胸の前に熊のぬいぐるみを抱き抱えてそう話すのは、まだ幼い女の子だ。



「帝国を守護するナイトオブラウンズの筆頭としては甘すぎるな……」

 顔を全て包帯でまき、右目しか見えていない。声からすると女の子だ。



「どちらにしても、粛清対象だな……表の筆頭と言えども免れまい。あの男共々な」

 長髪で切長の涼やかな目元をした青年は掌に青い焔の玉を浮かべやがら呟く。



「……ならば異存は無いな! 彼奴等が学園に戻り次第、状況を開始する」

 四角い色眼鏡を右手の人差し指で、少し上に上げながら、そう結論付けた。



【呼び出されし者】をお送りしました。


(映画 【シャッターアイランド】を観ながら)


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