16 妖刀村雨 (改訂)
【妖刀村雨】をお送りします。
宜しくお願いします。
蛇頭騎士団団長サルトリアス。
アリストラス皇國の暗部部隊長。
アリストラス超帝国から連綿と続く、アリストラスの血脈を守る為に、皇國誕生より存在する闇の組織。
サルトリアスは円月刀を抜き放ち、音もなくルバンスに近づいてくる。まだ間合いは遠い。がしかし、いきなりルバンスの目の前を白刀が横切る!
「取ったと思ったが……咄嗟に避けるとは、さすが殿下」
「……我の事を、知っていながら刃を向けるか? 皇弟よりの指示か?」
「皇弟殿下の指示なれど、かの御仁の思惑と我ら暗部が動いた理由は違います……貴方の血は濃すぎるのです。その濃い血の力は、災いになります」
「災いになる? なにを馬鹿な?! 災いを撒き散らすのは、地位を略奪したい皇弟であろう?! 」
「……皇位にはエレクトラ様が上られます。それが皇王陛下のご意志です」
「馬鹿な! エレクトラを巻き込むと言うのか? 」
「貴方様のその御身に流れるアリストラス超帝国の血の濃さが危険なのですよ」
円月刃をルバンスに向かって投げる。円月刃をかわして、ルバンスがサルトリアスに接近し、発勁を叩きこむと思われた瞬間、円月刃が後から戻ってきた! 間一髪でそれを避けるルバンス。
「操気術か? 」
物体を操る念動の一種だ。さらに短剣を三本ルバンスに向けて投げつける。それを交わすと、同じ様にルバンスに向かって短剣が戻ってくる。
「下郎が!! 」
ルバンスが両手の指を鳴らすと、円月刃も短剣も全て炸裂し粉々になった。雷精霊の術を同時に二つ無詠唱で発動させた。
「なっ! ……その力です。常人には同じ系統とはいえ、二つ同時に術を発動させる事など不可能ですよ。それも無詠唱とくれば尚のこと……だから危険なのです。その力を利用しようとする者も出てくるでしょう」
その言葉を待たずに、ジークフリードがサルトリアスに上段から斬りかかった。
「ルバンス様は魔法を制御なされている。そして、他人にそれを漬け込まれる様なお方では無い!! 」
その剣を簡単に避けて、
「学生とはいえ、他国の騎士を引き込む、そのカリスマも危険だ! アリストラスには絶対に争いを持ち込ませはしない!! 」
サルトリアスがそう言ったその瞬間、ルバンスは腰の剣で、居合い斬りの抜きを放った!
サルトリアスに刃が触れる瞬間、爆発が起こり、サルトリアスは消し炭になった!!
何が起こったのか?
「ルバンス!! 」
カインが暗部の一人を叩き斬り、ルバンスに駆け寄った。
「剣の力を使ったのか?! いかん! 」
ルバンスは剣を握ったまま天を仰ぎ呆然としている。焦点があっていない。次の瞬間、剣が凄まじい閃光を発し始めた!! カインが必死に剣を鞘に収めようとするが、なかなか入らない。まるで剣に意識があるように……今度はジークがルバンスの剣を握る指を一つづつ、外していく。
ルバンスが剣を離した途端に、閃光はやみ、剣は鞘に収まったが、ルバンスはそのまま倒れてしまった。
「なんなのです? この剣は? 」
ジークフリードは剣をルバンスから離して、地面に置く。
「……言わばエネルギー変換機械の様な物だが、普段は殿下の巨大な神霊力を封じ込める役割を担う……だが今の暴走はなんだ? 」
「エネルギー変換? 暴走?! 」
ジークフリードには何の事かわからない。
「ルバンス、いやクライン様の潜在的な神霊力を呼び起こし、自らがその神霊力を魔力へと変換する魔導器の一種だ。その昔、災厄の渦が発生した時に、別の世界から転生した織田信長と言う男が持っていた一振りだ」
「織田信長……転生者? 」
「……その後、災厄の渦が防がれ、その太刀はアリストラス皇國が管理する事となった。約一千年前の話しだ。その名を【妖刀村雨 】と言う」
「……ルバンス様は? 」
「意識を失っているが、大丈夫だろう」
◆◇◆
この階層はほぼ手中に収めた。
魔物共を抑えるのは骨だが、此奴らは後の戦力となる。
一千年の眠りからこの大迷宮は目覚め様としていた。
魔物を一体一体と調伏してゆく。この男が手を翳し、呪文を唱えると、魔物は不思議とおとなしくなった。
「魔物の遺伝子に刷り込まれたプログラムは生きている」
最下層に男はたどりつき、両開きの扉を開いた。その奥には常世の祭壇と呼ばれる、アリストラス超帝国が残した、ある制御システムがある。
「……やはり一千年の刻の間に自己修復している。完全な封印に至らなかったようだな……くっうくくっ……」
男は含み笑いを堪えながら、祭壇の周りに小さな窪みが八つある中の一つに、懐から取り出した光る球をはめ込んだ。
宝珠と呼ばれる魔神を制御する球だ。
「あと七つ……」
男の笑みは更に邪悪さを増した。
【妖刀村雨】をお送りしました。
(映画 【ゴッドファーザー】を観ながら)
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