13 皇位継承権 (改訂)
【皇位継承権】をお送りします。
宜しくお願いします。
生徒会長のジークフリードも、
ルバンスも格闘技棟の床に座って話しを始めた。
全てを知るエルトリアも黙って見守る。
その二人を囲む様に、ドリスと副会長のヨシア、そしてフェルミナも静かにルバンスの言葉を待つ。
「俺の出自を聞くと、後戻り出来なくなるかもしれない……」
「私を甘く見ないで貰いたい。このジークフリード・ランドルフは、ゴドラタン帝国ナイト・オブ・ラウンズ筆頭家にして、次期当主となる者。この帝国の全てを知る必要がある。ましてや、ラウンズ序列三位のタイランド公爵家の次期当主が知っていて、私が知らぬでは我が家の立場が無い」
「?! タイランド公爵はルバンスでは無いの?? 」
ドリスとエルザが混乱した。
「……僕がタイランドだよ。エルトリア・ラ・ボナパルト・タイランドは僕だ……」
「じゃあ? ルバンスって何者なのよ?! 」
「……ドリス嬢もこう言っている。もう話しても良いのではないか? 」
ジークフリードは話しを促していく。彼の言葉には全てに裏表がない。
「……俺の本名は、サージェス……」
「サージェス家って……まさかあの? 」
ドリスとエルザそして、フェルミナの声がはもる。
「……アリストラス皇國皇位継承権第一位のクライン・ラ・サージェス皇太子殿下とお見受けしますが、宜しいですね? 」
ジークフリードと、ヨシアは片膝をついて皇室の礼儀に準ずる。
「……そこまで畏まらないでくれ、おれは流浪の身だ……」
「……こここ皇太子殿下??!! 」
ドリスは目眩を起こして、倒れそうになったところをエルトリアに支られた。
ことの次第をルバンスは少しづつ話し始める。
「……二年前に母上と共に王宮を抜け出し、ちょうどアリストラスに駐在武官として派遣されていた、元ラウンズのカイン・アルバインに匿われ、タイランド公爵殿が帝国での後ろ盾となってくれた」
「何故、皇國を出奔なされたのですか? 」
「我が叔父に毒を盛られた……未遂に終わったが、母上は確信し、國を出られる決心をされた。俺が十四歳になり、元服する迄……」
「叔父……皇弟殿下が毒を? 」
それに関して、証拠はないが、出奔した二年間で六回刺客からの攻撃を受けた。全て返り討ちにしたが……
「ジークフリード殿、この話しを聞いた以上は態度を決めて頂かなければなりません」
エルトリアが話しかける。
「ああ、タイランド公が後ろ盾という事は、皇帝陛下もご存知と言う事。私はクライン殿下の盾となり、剣となろう」
「よいのか? 何も報いてやれぬかもしれぬ……」
「騎士は名誉さえあればよいのです。略式ですが、いまここにいる我らの騎士叙勲を! 」
「……すまぬ。我が身の不徳。そなたらに報いる事が出来ぬやも知れぬ。」
ルバンスがそういうと、各自が右膝をついて、俯く。ルバンスはジークフリードの剣を受け取り、各自の右肩、左肩に剣で触れてゆく。
「我らこの身を殿下に! 賊より殿下を御守りいたします」
「其方らの忠義に応えよう」
ルバンスの右手にはパンツが3枚握り締められていた……
◆◇◆
ゴドラタン帝国とライアット公国との国境付近で、黒ずくめの馬に乗った一団が荒涼とした大地を疾走していた。統一性の無い装備は、傭兵かそれとも……
「もう少しで国境を越える。各自警戒態勢! ゴドラタンはライアットの様に容易くはないぞ」
「団長! ここからタイランド領までは三日ほどです。情報屋とのコンタクトはガラールの街で行います」
「……その東洋人……信用出来るのか? 」
「ここ数年、大陸での闇情報を一手に集める男です。容姿は銀髪の美麗。だだしそれ以外の特徴などは不明」
「胡散臭いな……だが、我らとて表には出ない闇の騎士団。同じ様な物か……」
この一団の長と思える男は、一瞬笑みを浮かべたが、さらに馬の速度を早めた。
◆◇◆
カイン・アルバインは教会の懺悔室に入って行く。村に一つだけの教会。この教会の神父は帝国の正ケルン教団から派遣された高位の僧侶で、帝国との中継ぎを行なってくれていた。
「……昨日、アリストラスからの刺客と思しき一団がライアット公国より国境を超えた。明日にはガラールの街に到達する」
神父も懺悔室にはいって、小さな窓越しにカインへ話しかける。
「傭兵ですか? 」
「蛇頭騎士団だろう」
「蛇頭騎士団?! あのアリストラスの暗部が? 」
珍しくカインは焦る。歴史の闇でアリストラスに仇なす者を屠ってきた闇の騎士団だ。
「ガラールに入り、情報屋と接触すれば、あと五日でここまで来るぞ。タイランド公も察知されている。たしかルバンスは夏休みに入るな……」
「……ルバンスには帰って来ない様に伝えます」
【皇位継承権】をお送りしました。
ついにルバンスの出自が明かされました。
(映画 【仮面の男】を観ながら)
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