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11 手加減無し (改訂-3)

【手加減無し】をお送りします。


宜しくお願いします。

 魔導学園に併設された、帝立大図書館は古今東西の学術書籍を閲覧可能な場所で、帝国の始まりとともに設立された由緒正しい場所でもある。

 エルザ・エルメラインはこの大図書館の学芸員でもある。十五歳で学芸員試験に合格する事だけで非凡な才がある証明だった。



「……アリストラス戦史、アリストラス皇家家系図……あれ? どこだったかしら? 」



 エルザはグラスゴー・エルメライン子爵家の次女で、姉は帝国武官として名を馳せている。家は代々、大図書館の学芸員を輩出していて、グラスゴー・エルメライン子爵自身、この大図書館の館長を襲名していた。



「……あったわ、アリストラス騎士団戦史」



 その図書に手を伸ばした瞬間、後からハンカチで口を押さえられて、目の前が暗く落ちていった……




◆◇◆




 ルバンスが目覚めると、ドアの隙間から、手紙が差し込まれていた。宛名もなにも無い。その手紙を一読し、剣を掴んで部屋をでて、真っ直ぐにエルトリアの部屋を訪ねる。



「……なんて事を……エルザが?! 」



「ああ、攫われた。俺が巻き込んだんだ……明日の生徒会との邂逅で大人しくしろだと? 馬鹿が! 今から助けに行く! 」



「君の落ち度では無いよ……多分、ブラームスの差金だろう」

 エルトリアも自分の剣を確かめて、準備を始める。



「来るなと言っても行くからね。奴はもう許せん。学園生徒としてではなく、タイランド公爵家の一員として、帝国に仇なす者はほっておけない」



「……わかった。行こう! この件に生徒会は絡んでいると思うか? 」



「それは無いだろ? ジークフリードが知れば、ブラームスは処分されているさ」



「……ならブラームスをとっ捕まえて、ジークフリードに引き渡す」



「ああ、多分奴はあそこだ」




◆◇◆



 ルバンスとエルトリアは、目星を付けていた、歓楽街の非合法酒場【悦楽の底】に到着した。



「どうする? 裏にまわるか? 」



「いや、正々堂々と正面から行こう! 」

 言うやいなや、ルバンスはいきなり風獣を纏わせた足で、扉を蹴破った!!


ドカカカンカンンンン!!!


 思いっきり吹っ飛んだ扉を踏みつけながら、中に踊り込んで、ズンズンと奥に進んでいく。

 呆気にとられた酒場の用心棒が道を塞いで威嚇する。



「なんだ! てめえらは?? ここをどこ? うっ! 」



 言い終わるよりも早くルバンスが用心棒の股間を刈り上げて瞬殺した。手加減はまったくしていない。男は天井に頭をぶつけて落下し、そのまま気を失った。それを見た他の男達が一瞬、動きが硬直したが、我に返って剣を抜く。



「……剣を抜いたな! もう手加減はせんぞ! 」

 ルバンスの殺気が膨れ上がった! どうみても十二歳の少年が放つ殺気では無い。エルトリアも呆気にとられたが、さらに奥の両開き扉がカーテンに隠されている事に気づいた。



「ここか? 開けるぞ! 」


 中に男達が六人いて、その内の一人がブラームスだった。

 男達はいままさに、エルザの服を引き裂いて慰みものにしようとする寸前だった。

 ルバンスの髪が逆立っていく。



「……貴様ら! 終わったぞ!! 」



 いきなりトップギアを入れたルバンスは目の前にいた大男の右の肋骨に凄じい掌底突きを見舞った。口から血を吹き出して、前のめりに倒れ込む。

 別の男が慌てて上段から剣を振り下ろすが、それを人差し指で止めて、後ろに吹き飛ばす! 右側からもう一人の男が、横殴りに剣を振るうが、簡単にかわして、首筋に手刀を叩き込む! 肩甲骨が叩き折られた。



「ひひぃぃいい!! 」



 片目の男が叫びを上げて扉から出ようとするが、エルトリアが剣を突きつけて、その場に拘束する。

 壁際にもたれかかっていた用心棒らしい男がゆっくり剣を抜いた。この男も凄じい殺気を放つ。



「小僧ども! やり過ぎたな、首を切り落として豚の餌にしてやる」

 用心棒は右手に剣を、左掌に青い炎を発生させ、炎をルバンスめがけて飛ばした!

 ルバンスが左手をかざすと、その炎はその左手に吸い込まれてかき消えた!



「?! ななにをした?! 」



 男が後ずさる瞬間、ルバンスが男の鳩尾に強烈な一撃をあびせ、前のめりになった男の顎を下から殴り上げた! 顎が砕けた男は血飛沫を撒き散らせながら壁に激突する。



「きき貴様ら! なんだ! 俺を誰だと思っている?! 」

 ブラームスが腰を抜かして、這いずりながら後ずさる。



蛆虫(うじむし)の名などしらん! 」

 ルバンスがブラームスの膝を踏み抜いて、膝を砕いた!



「ぐっががぁぁあ! 」



「蛆虫が人間の言葉を喋るな!! 」

 手加減なしにブラームスを蹴り続け、目に狂気がやどっている。



「よせ! ルバンス! もういい! 」

 エルトリアの静止で我に返って、ルバンスは止まった。



「エルザ! 大丈夫か! 」

 エルザはルバンスを見ると力が抜けて、ルバンスにしがみついて泣き出した。



「もう大丈夫だよ。大丈夫さ……」



【手加減無し】をお送りしました。

ブチギレたルバンスは誰も止められない。


(映画 【悪い奴ほどよく眠る】をみながら)


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