第5話 ロクサス
「お、リクス。どうだった?」
オーナーの部屋から出ると
真っ先にルッツが聞いてきた
「案の定だよ」
「アハハ、大変だね。今日はもう帰るのかい?」
「あぁ、帰らせてもらうよ」
「そうだ、ロクサスちゃんも今日はもう終わりだから、一緒に帰れば?」
なぜ、俺がロクサスと帰らないといけない?
「なぜ」
「だってほら、最近、怪事件が起きてるだろ?ローズの隣の町でも死体が発見されたみたいだし。安全のためにもね」
「ロクサスが犯人に負けるなんてないと思うけどな」
「そういうことじゃないだろぉ~、いいからいいから。多分もう、外で待ってるよ」
「あぁー。分かったよ」
ということで
ロクサスと帰ることになった
ルッツがどういう意図で
そうさせたのかは分からない
外を出ると、出入り口の前で待っていた
「ごめんね、待った?」
「いえいえ、待ってませんよ。じゃ、行きましょっか」
「はいよ」
夜の街を2人で歩く
そういえば、ロクサスとは仕事以外で
一緒に外で歩くことがなかった
こんなことは初めてだからかな
変な感じがする
喋ろうとしても
上手く言葉が見つからない
ロクサスからも
喋りかけてくる気配はない
仕事中はあんなにも
話しかけてくれるのに
「なぁ、ロクサス。仕事以外でこういう風に一緒に歩くことなかったよな。なんか変な感じしない?」
少し場の空気を和ませるために
軽い感じで話を振った
「そ、そうですね。あ、ごめんなさいね!私、全然喋らなくて」
なぜかオドオドしている
仕事では堂々としているのに
こんな一面もあるのかと知ると
ロクサスが可愛く見えてきた
「ハハ!オドオドし過ぎ!そういうところもあるんだね、可愛い」
「えっ」
ロクサスが固まった
俺なんかまずいこと言ったっけ?
「オドオドし過ぎ」が悪かったか?
顔がどんどんと赤くなっていってる!?
怒らせてしまったか!?
「ごめんごめん!オドオドし過ぎって言って悪かった!」
「…とですか?」
「え?」
「可愛いってほんとですか?」
な、なんだこの雰囲気は
すごく甘い雰囲気だ
それにロクサスは上目遣い
「あ、あぁ。可愛いぞ」
そう言うと
ロクサスはニンマリと笑い
見るからにテンションが上がっていた
「ふふふ♪」
うん、なんか歩き方が変わっている
若干、スキップしている
なんか嬉しくなること言ったかな?
ロクサスは少し走り
俺の方に振り返って言った
「リクスさん!この後、予定とかあります?」
「ううん、ないけど…」
かすかに感じた嫌な気配
俺の勤務時間外を消すような
そんな気配がした
くそったれが
プライベートの時間を削りたくないんだよ
「ちょっと、用事ある。すぐ戻るよ」
「リクスさん、あの気配でしょ?裏路地の方からする」
ロクサスも感じ取っていたか
でもプライベート時間を削るのは俺だけでいい
彼女もずっと仕事をしていたから
疲れているだろう
だから、ここは俺がさっさと片付けてこようか
「いいよ、ここにいて。2分で戻ってくるから」
「あ、でも」
「じゃあ、すぐ終わらせてくるよ!」
俺は深呼吸をして
全速力で気配の方に向かった
「あぁ、行っちゃった。ほんと仕事しかしない人だな。でもリクスさんの、そういう真面目で優しいところに惹かれたんだけどね、私は」
××××××××××
さて、ここら辺から感じたんだけど
右側に3人の人影が見えた
そっちに方向転換し
3人の前に胸を張って立つ
「お前らはここで、何をしているのかな?」
こいつらがあれか?
怪事件とやらの犯人か?
いや、それにしては動き方が雑い
こいつらは素人だな
道に迷った、って訳でもなさそうだ
「おい、何をしているのか聞いている。答えろ」
「う、うるせぇ!」
3人のうち、1人が襲ってくる
見たところ刃物を隠し持ってそうだ
「相手の行動を警戒せずに、考えなしに接近するのは危険だぞ」
俺は氷魔法を使って
襲ってきた奴の下半身を凍らせて拘束した
ついでに、後ろの2人も拘束した
我ながらに仕事が速い
こいつらは国に提出しないといけない
けど、ロクサス待ってるしな
あと今から、提出しに行くのは
流石にめんどくさいよ
そうだな。うん。
今はこのままにしておくか
氷も自然とは溶けないからな
「お前らさ、晩飯食ってきたかは分からんけど。今日は抜きで。一晩ここにいてもらう。明日の朝、ちゃんと迎えにいくから安心してここにいてくれ」
なんていい考えをするんだろう
ほんとに天才だよ俺は
よし、ロクサスの場所へ戻ろう
2分は過ぎて4分経ってしまったが
2分過ぎてもそんな変わらんだろ
でもなるべく早く戻るか
俺は急いでロクサスのところへ戻った
××××××××××
「ごめんね、お待たせしました」
「お帰りなさい。さっきの気配の人たち、どうでした?」
ここで正体ははっきりとしなかったと言えば
絶対に国に今から提出しに行くことを進められる
だから、ここは嘘をつくか
「あぁ、道に迷っていた人だったよ」
「あんなところ、迷っている人でも行かないでしょ」
やばい、こいつも頭がいいな!
正直、迷っている訳じゃなさそうだったよ!
でもそれを知られる訳にはいかない!
ここは強行突破だ!
「迷っている人だった!迷っている人だった!」
「ほんとですかぁ~?」
「ほんとほんと!」
冷や汗ダラダラ
「ま、リクスさんは仕事をちゃんとする人ですもんね!」
これはごまかせたのか?
「ちゃんと、途中で放り投げたりしないですもんね!ね!」
あぁ、ごまかせてない
しっかりバレてたわ
明日の朝、急いで3人取りに行こ