表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

第10話 黒

ダリアの案内でいい場所に

連れて行ってもらったり

美味しいご馳走も奢ってもらったりと

俺は満足した観光ができた


「今日は色々とすいません。観光とか、奢ってもらったりとか」

「いえいえ!護衛してもらったのでお礼ですよ!お気になさらず」


やはり、俺はダリアが黒とは思えない

黒と思わせる部分は全くないじゃないか

オーナーと言えども

仕事でミスする時はあるだろう

その時が今日だったってことかな

オーナーの方を見ると

いまだにずっとダリアのことを見ている

粗さがしでもしているのか?

疑われていることを知らない

ダリアはこちらを振り返って

気さくに言った


「では帰りますか」

「そうですね」

「はい」


そうして俺達は監視の1日目が終了した

こんな日があと6日続けばいいな

仕事もせずに監視のボーナスが入るから


××××××××××


「では、今日もお願いします。今日は品を引き取りに行くだけなので、到着まで楽にしていて下さい~」

「了解しました~」

「分かりました」


馬車に乗り込んで、出発した

少し、馬車の中でいい匂いがする


「なんか、いい匂いしますね」

「お、気づきました?流石、リクスさん!馬車の端っこに細い棒と液体が入っている瓶があるでしょ?それから匂っているんですよ。昨日ね、商会からお試しでって言われて、貰ったので使ってみているんです」


なるほど、いわゆる芳香剤という物か

甘すぎず、ほんのりと酸っぱい匂いが

丁度よくて、不快にならない

あまり、好きではない物だったが

これは割と好きだ

オーナーはというと

凄く嫌そうな顔をしていた

運転をしているダリアには

見えていなかったので

よかったと思った


出発して1時間くらい経った時

馬車が止まった

止まる時はダリアが

言ってくれると思うのだけれど


「到着したんですか?」


俺が御者席の方に向かって

聞いてみても反応はない

何か変だな


「おかしい。おい、リクス。構えろ」


オーナーに言われて

構えようとしたが

体が痺れて動けない

必死にもがいてみたが

結果は変わらずだった

陸に上がった魚のような

動きをしていたと思う

それを見てオーナーは

状況を理解し

何かあった時、危ないから

俺を馬車の端っこに寄せる

外が、気持ち悪いくらいに静かだ

オーナーが様子を見る為

馬車から降りようとした時

ダリアの声が聞こえて来た


「すいません、すいません、お2人とも。トイレがしたかったので席を外していました」


そういうことだったのか

返事を言おうとしたが

何故か体が痺れているせいで

声が出ないようになっていた

代わりにオーナーが

言ってくれるのかなと思ったが

黙ったままだ


「あれ?寝てます?」


ほら、言っているじゃないか

速く、返事しないと

心配させてしまう

そんなの申し訳ない


オーナーが俺に囁いた


「安心しろ。私が付いている限り、お前を死なせない」


死なせない?

何を言っているんだ

ダリアはトイレに

行っていただけだったし

いや、魔物が近くにいるのか?

よく考えてみればそれも違うな

その場合、外にいる

ダリアはもう襲われているはずだ


あれ?ダリアは?

さっき、声が聞こえてから

もう聞こえなくなったし

馬車も止まったまんまだ

もしかして、本当に魔物が出て

この短い時間の間に

ダリアは襲われてしまったのか!?

そうなら、護衛として

全然ダメじゃないか!

何をしているんだ!オーナー!

喋ろうとするもやはり無理だ


「危ない!」


いきなりオーナーが大声を出し

俺は彼に抱えられて

上にジャンプをした

その瞬間、馬車がボロボロになる

何だ一体!?

周りを見渡すと

数人か人がいた

その中にダリアもいる

どうなっているんだ!?

俺は抱えられたまま着地

結構高くジャンプしていたから

着地の衝撃が俺に来ると思い

体に力を入れていたが

オーナーが上手く

着地の衝撃を膝で吸収し

何事もなかった


「あれ?ユーリスの方、普通に動けているじゃん。なんで?芳香剤の匂い嗅いでるはずなんだけどな」


何だ、あの優しいダリアじゃない

オーナーが俺の顔を見る

そして、言った


「ほら、黒って言ったでしょ?リクス、1人で来てなくて良かったね。もし、1人だったら、今頃、君。死んでいたよ?」


想像するだけでゾワッとした

まだまだ俺は未熟だった

心が悔しさで一杯になる


「ユーリスは俺の正体に気づいてたっぽいね。やるじゃん!完璧に騙せていると思ったんだけどな」

「私を騙すには、ボロが多すぎる。残念だったな」


オーナーは全て分かっていたのか

これがオーナーになる人の実力か

俺はなんて情けないんだろう


「ま、そんなことで。お前らを処分するには変わりがねぇんだけどな」


ダリア以外の奴が襲ってくる

オーナーは俺を抱えたまま

それをさばいていっている

強すぎる。俺とは段違いだ

いや、動けていたら

さばけたかも知れないが

誰かを抱えたままは出来ない


「やるね。一筋縄ではいかないか。なら、確実に殺しに行くよ」


地面が動き始める

土が変形して針が形成されていく

それが地面から勢いよく

形成されるから

当たったら、刺されることになる

それをオーナーは軽々と避けていた

そのうえ、避けながら

襲ってきている奴らを

気絶させていっている


「ダリア・バウマン。お前を捕まえて、国に提出させてもらう」

「やってみろよ、ユーリス・クライマー!」


潜伏者とオーナーの戦いが

始まろうとしていた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ