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No.78 天才VS天才①

(´・ω・`)3日か4日周期くらいで定期更新するようにしようと思うのですが、皆さん何時ぐらいに投稿して欲しいですか?



「へ~!ここPvPできるの~?ふ~ん?」


 ミニホームの闘技場に案内され、錬華(トン2)は戦闘フィールドを興味深そうに歩き回る。


 錬華、PLネーム『トン2』と露奈、PLネーム『鎌鼬』が新たに加入した『祭り拍子』は、一旦ログアウト用に設置したミニホームを撤去し、幽霊馬車で腐の森の手前の結界まで戻ることにした。


 馬車の中で話題になったのは基本的にノート達の動向。ノートとユリンが初期限定特典を取得したところから始まり、今まで何が起きて何をしてきたのかをトン2と鎌鼬にノートは説明した。


 しかしながら、長く一般プレイヤー側にいたトン2と鎌鼬はノートの語る出来事があまりにも意味不明で、半分以上は理解しきれなかった。だがいちいち聞いていては会話が進まないのでなんとか疑問を押しとどめ全てを一旦聞き終えた。


 そしてノート達のミニホームに足を踏み入れた二人は絶句する。見た目の数十倍は広い室内、見たことのない素材、極めつけは自立し、会話し、そしてプレイヤー達を鼻で嗤う生産力を持つNPC達。

 

 ネオンやスピリタスよりゲーム的な感覚のある二人からすれば、全てが全てコメントに困るほどあり得ないことだった。


 

 しかしこれだけ色々と隔絶していれば、あの動画の内容も納得できる。

 割と早い段階で驚くことになれたトン2と鎌鼬は、まずホーム内に個室を増設してもらいセーブポイントを更新。

 その後ノート達の案内でノートの死霊たちと顔合わせをするついでにミニホーム内を案内してもらった。


 トン2と鎌鼬に対する死霊たちの反応は概ね良好。バルちゃんはまだ引きこもっていて顔合わせはできなかったが、それ以外はアグちゃん含めて全員と会話しきちんと『祭り拍子』の一員として認められた。


 タナトスがほぼ常駐する調理室、アテナが日々創作に励む作業室、ゴヴニュの城である鍛冶室、ネモの支配する農場、それら施設を見て回りノートが最後に案内したのは『闘技場』だった。



 そこで今まではただのんびりとついてくるだけだったトン2が俄然興味を示す。

 ガランとしたコロシアムが珍しいのだろうか、いやそうではない。

 子供のように楽し気にコロシアムを走り回っているようで、トン2はしっかりとコロシアムの面積を走って体の感覚で測っていた。

 そして徐に刀を抜き放つ。


「PvP、できるんでしょ?」


 最初に出会った時と同じような言葉を繰り返すトン2。しかしそれは今までの眠たげ間延びするような、幼げな口調ではなく、明確な意思の籠められた鋭い言葉。

 トン2の刀と視線の先には、獲物を前にした獣の様にニィッと獰猛な笑みを浮かべるスピリタスがいた。

 


 お互い、言葉を多く交わさずとも本能的に理解していた。

 

 

“コイツ”は絶対に同類だと。  


 武器を構えていないのに、近づいた時から感じる試合前の張り詰めてヒリついた空気。好敵手を前にした時に起きる胸の騒めきと、熱気と寒気が入り混じる奇妙な感覚。

 今までは敢えて双方会話をしなかった。もし交わせば、“我慢できなくなりそうだから”だ。

 しかし長い長い我慢の末に戦闘する場所を与えられ、2人の理性は限界に近づいていた。


 トン2のこれ以上にない挑発に乗り、一歩足を踏み出すスピリタス。しかし彼女を2人の手が阻む。


「………ぁんだよ?やめろってか?」


 これがノートだったら、スピリタスはもっと突っかかっただろう。女が増えたことに関してスピリタスもノートにはまだ色々と言いたいことはあるのだ。庇う気か?と噛みついたかもしれない。

 

 しかしそのスピリタスを止めたのは、ヌコォと鎌鼬。意外過ぎる組み合わせに、スピリタスの困惑が闘争心を僅かに上回った。


「先に私達がやる」


「お互いの実力差も測れるはずよ。私達に前哨戦を任せてもらえないかしら?」


 トン2も意外な2人からストップがかかり、首を傾げる。しかしヌコォは問答無用と言わんばかりにコンソールを開いて闘技場の設定を行う。


「形式は1on1。5射先取。スキルあり?なし?武具とアイテムは?」


「そうね、純粋な能力値を測りたいところだけれど、ゲームである以上それは困難でしょう。ブロッカー20の、3戦、スキル・魔法は射撃系のみ許可、武器とアイテムの制限は無し…………やっぱり移動系のスキルもあり、でいいかしら?」


 初対面ながらスムーズにルール設定を行うヌコォと鎌鼬。

 因みに5射先取とはHPを削り切ったほうが勝利ではなく、先に5回矢をヒットさせた方が勝ち、という変則ルールだ。

 スピリタスとトン2はいきなり割り込まれて不満を表明しようとするが、楽しそうにニヤニヤしているノートが口を挟む。


「先にやらせてあげてくれ。2人もわかるだろう?同族に出会った時の高揚感。どうせお前らの方が戦闘時間は長い。先にどういう形式でPvPするのか決めておいてくれ」


 早い者勝ちだろ!?でしょ!?とごねる二人を何とか丸め込み、ノートはスピリタスとトン2をなんとか上の観客席まで引き下がらせる。

 それと同時にヌコォがPvPの設定を決定。だだっ広い円形のフィールドに突如として人一人が余裕で隠れられる程度の四角柱が等間隔で出現する。


「な~にするの?なんで後なの~?」


「そうだっ、説明をもっとしろ!」


 観客席に引っ込められたトン2とスピリタスは大人しく黙っているわけでもなく、その不満をノートにぶつける。しかしノートは動じることなく説明する。


「一人は『単純射撃能力』なら世界最高峰の天才、一方はFPSでトップクラスのプロと真っ向勝負できる『戦闘射撃』の天才だ。タイプも似ている。

 冷静で正確無比、人並み外れた空間認識能力、弾道予測能力を持っている。

 畑は違うが、同類ってことぐらい何となく察したんだろ。

 だから頭の片隅で前々からずっと考えていた。自分だったらどう戦うか。ヌコォが素早く闘技場の設定を考えていた。同様に考えていた鎌鼬もそれにすぐ乗れたわけだ。

 お前ら戦うことばっかり考えてて、ここがゲームってこと頭からすっぽ抜けてただろ?」


 ノートの指摘通り、スピリタスとトン2は闘争心が先行しすぎていて細かい部分を見落としていた。外野にいたからこそノートは感じてとれていた。ヌコォと鎌鼬、スピリタスとトン2の間に抑えきれない闘争心が見え隠れしていることに。

 そしてスピリタス達が先走ることまで読めていた。


「まあ、とにかく見ていようぜ。きっと面白いもんがみれるぞ」





 闘技場の戦闘フィールドの両端に向かい合って立つヌコォと鎌鼬。視界にはホログラムのカウントダウン。その数値が0になった瞬間、二人は同時にボウガンを取り出し素早く放った。

 機械のように正確な一矢。その矢はお互いの『足』目掛けて飛んでいく。それだけで相手が相当PK慣れしていることをヌコォと鎌鼬は双方理解する。


 まず、ALLFOに於いて射撃武器は『弓』と『ボウガン』の二つが用意されている。ファンタジー系の作品では『弓』の方がなぜか強いイメージがあるが、ALLFOでは扱いはほぼ同じ。

 ではなにが最も大きく違うかと言えば、プレイヤーに対する『モーション矯正率』だ。


 単純な話だが、液晶の中のキャラクターをコントローラーで動かすのとVR空間の中でアバターを動かすのは天と地の差がある。


 まだVR技術が一般化される前のアーチェリーなどの試合を見ればわかるが、プロでさえも“止まった的に正確に狙った場所を撃ち続ける”ことは非常に困難だ。

  

 ゲームの中ではそこにスキルなどの要素が噛んでくるし、的となる敵は平気で動き回る。素人が弓を使ったところで、まともに当たることは無い。

 

 しかしそれでは面白みがない。ゲームというのはほんの少しの現実を織り交ぜた非現実の世界であるが故に楽しいのだ。

 その結果、色々なゲームで様々な対応が為された。


 例を挙げると、ある程度適当に撃っても矢は当たる仕様、武器の性能に完全に依存する仕様などが存在する。これはかなりゲーム的な趣向の強いシステムだ。


 ではALLFOではどんなシステムを採用したか。

 それは所謂『モーションサポーターシステム』という物だ。


 このシステムはプレイヤーの動きからその意図を読み取り、それに対する最適な動きへとその動きを矯正してくれる画期的なシステムである。

 サポーターシステムに慣れないうちはサイズの一回り小さい服を着ているような窮屈さを覚えるが、慣れてしまえばそのサポートに沿って動くだけで理想の射撃が可能になる。


 22世紀現在、ハイクオリティなサバゲーと化した一般的なVRFPSゲームでもそのほとんどがこのシステムを採用している。


 問題はこのモーションの矯正率。『弓』という武器は、実のところその矯正率は最後の的を絞るところ以外は割と緩い。なので矢を射る最中になにか起きても柔軟な対応が可能となっている。


 一方『ボウガン』は非常に矯正率が高い。その設定は大体世界大会も行われるFPSゲームの矯正率に準拠しており、慣れていないと相当難しい。

 勿論、設定から矯正率はある程度変えることはできる。しかし矯正率は下げた分だけ合理的な動きからは逸脱し、命中率は目に見えて下がる。


 ここで『ボウガン』をメイン武器に据えたプレイヤーは選択を迫られる。

 いっそのこと矯正率を0にして自分のプレイヤースキルの向上に頼るか、矯正率を変えずに“サポートに自分が適応する”か。


 “サポートなのにサポートされる側が合わせる”のは本末転倒に感じるが、このサポートは極めて合理的なのだ。

 矯正率を下げないという事は柔軟性を失うという事だが、そのサポートに適応できる者はまるで矯正など無いかのように自由に動き回る。


 サポートを“サポート”として生かす事ができる。


 これを可能とするプレイヤーは、その射撃までの速度を見ればそれに精通している者には一目で見抜ける。

 最短で精密機械の様なスムーズな装填。人間の反射速度ギリギリの照準決定速度。そして一切体のブレない正確な射出。


 大量のモーションデータを蓄積したAIにより、彼女たちは人類史上どんな英雄、戦士でさえも超える完璧な射撃を可能とする。

 天賦の才はただ一人。天才故に孤独に修練に励み、その才能を磨いたのだろう。しかしそのモーションデータは大量の人間から導き出される“最適解”。如何なる英雄でさえも到達しえなかった領域にまで人間を導くことができる。


 それが類稀なる射撃の才能を持つ彼女たちにマッチすることで、常人では到底不可能な、史実の英雄達を超える射撃が可能になる。


 ヌコォも鎌鼬もメイン武器は“銃器”。そして銃器は『弓』などの原始的な武器と異なり、“いつどんな風に撃っても同じ性能を発揮する”。

 『弓』の様に本人の力量で射程が勝手に変化するより、常に同じスペックを発揮する『ボウガン』のほうが彼女たちには余程扱いやすい。


 また、狙った場所も重要だ。射撃能力に優れた者は初手で大ダメージを与えられるヘッドショットを狙う。

 だが互いにある程度の技量がある場合、射出しながら頭の位置をずらす事くらい当然の様に行う。


 簡単な話、頭は的が小さく人間の構造上大きく位置を動かすことができる。極論、アニメの様に頭を横へ軽く逸らすだけでも避けることは可能なのだ。


 ならば狙うべきベストな場所は?PKプレイヤーでも熟練の射撃武器使いはこう答えることが少なくない。

 人間が一番咄嗟に動かしにくい場所、つまり『足』だと。


 人間は行動を起こす時に必ず動かせないポイントがある。

 頭だけを動かすなら首は動かない。胴ごと動かしても腰は動かない。では全身を移動しようとする。その時のポイントは足だ。

 踏ん張るにせよ、ジャンプするにせよ、回避するにせよ、『足』が一番最後に動く。


 意図的に足から動かせばいい、と思うかもしれない。しかし人間の体は両脚の位置を同時に動かすように設計されていない。無理にやろうとすれば却って動きがブレて次の動きへ続けられない。1射目を避けられても2射目で詰みだ。


 故に、初手で『足』を狙う。しかしこれは単なる定石の一つ。問題は二手目だ。




(´・ω・`)何度読み直しても誤字脱字が酷いから1話目から全部やり直してきます。地獄の始まりだ ………

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― 新着の感想 ―
[一言] そう言えば銃器で斬る動作で撃つと弾道曲げられるような事できるとか聞いたけどできるのかしら?
[一言] 唐突に前話で出てきたトン2って錬華のPNかよw ノートの打ち間違いかと思って誤字報告送っちゃったよw 自己紹介ぐらいしといてくれよw
[気になる点] そりゃ本名じゃなくてPNあるわな、と今更気づきました。 錬華→トン2、露奈→鎌鼬ですね。覚えます。 [一言] 最近ちょっと説明多い…多くない? 6人(+5人?)もいるのに今話11語しか…
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