No.77 アグちゃんの裏切り・リターンズ
「OK、わかった。どこから話す?出会った時からでいいか?」
ノートはその場に座らされ逃げ場を失う。こんな時にバルちゃんでも来て暴れてくれればいいのだが、彼女は色々とはっちゃけた反動で休眠中。タナトスたちはホームの中で各々の作業中。
助けは来ない。
いや、違う。出発するといってホームから出たっきり動きがないのを不思議に思ったのだろう。アグちゃんがポテチが山盛りになっているバスケットを抱えたまま、ホームの玄関扉から顔を覗かせた。
ノートはそんなアグラットに視線を送る。目をかっぴらいて「思いよ届け!」と言わんばかりに。
『HELP!!アグちゃん!!今は色々準備が整ってなくて分が悪い。クールタイムが欲しい。だから今こそ、時間を少し作ってくれ!お菓子倍にするから!』と。
しかし、ノートの願いは虚しくアグちゃんは悲し気に首を横に振る。どうやら魔王でも女同士のピリピリしたやり取りに首をつっこみたくはないらしい。『頑張れ!』とノートに言いたいのか、小さくガッツポーズするような仕草をアグちゃんはして、救いに通ずる扉は無情にも閉じられた。
あれ、こんなこと前にもなかったか?とノートが現実逃避していると、女性陣の圧が高まったので気を取り直す。
「実を言うとだな、そもそもこの二人と知り合うことになったのはユリンがいたからなんだ」
それはユリンが『チャンバラ』のとある大会で圧倒的な強さで優勝し、小学生ながら特殊強化選手に選ばれたころの時だった。
話は少し変わるが『チャンバラ』を始め、VR・EスポーツはEスポーツではあるが肉体の性能はリアルの物がダイレクトに反映されていた。つまり、ただのEスポーツと違って本人がもやしっ子でも勝てる競技ではない。
なので実際にトレーニングをして体を鍛えなくてはならない。VR・Eスポーツであれど、その点は普通のスポーツと変わらない。
しかしVR機器があればOKなVR・Eスポーツは選手同士の繋がりが薄くなりやすい。視野が狭くなりやすい。
なので、日本では18才未満のVR・Eスポーツの選手を集めて競技関係なく合同で合宿を行う催しが毎年開催される。
チャンバラの強化選手であるユリンも当然それに参加させられた。
そこにいたのが露奈と錬華。既に彼女たちは世界のトップ層とも互角に渡り合っており召集対象外レベルなのだったが、今後世界で活躍する先達として特別コーチ枠で合宿に参加していた。
ユリンとしてはあまり参加したくなかったが、スポーツ選手である父親と母親に『もし本気でチャンバラの選手を考えるのなら、そういった物にはきちんと参加するものだ』と言われてしまい半ば強制参加。
ユリンはノートと引きはがされ不満たらたら。合宿に参加しても周囲と距離をおき、空き時間にSNSでノートとやり取りをするのだけが楽しみだった。
そんなユリンに強く興味を惹かれたのが錬華。元々中学生がメインの中で小学生にして声を掛けられていたユリンは目立っていたし、合宿で手を抜いていたユリンの才能を錬華は見抜いていた。いや、彼女がノイズとして弾かないほど、歪んでいてしかし心躍る様な“メロディー”がユリンから聞こえたのだ。
それ以降、鬱陶しいほどに錬華はユリンにあれこれ話しかけ、その錬華の親友でありお目付け役的な立ち位置の露奈もセットで付いてくる。
ユリンからすれば、なんでこんなに他競技のコーチに引っ付かれなくちゃいけないんだとイライラ。
あの手この手で逃げ回るも錬華は野生の勘でついてくる。
そのイライラをユリンはノートに吐き出してなんとか解消していた。ノートも文面から相当いら立っていることは予想できた。なので積極的に毒を吐き出させてやった。
しかし予想以上にユリンが弱っているようなので、ノートは気を利かせて合宿最終日に合宿している場所へ直接ユリンを迎えにいった。
当然、ユリンはノートのお出迎えに大喜び。御主人様を見つけた犬のように嬉々として少し早めにやってきたノートの元へ向かう。
しかしそれによってユリンに興味を抱いていた錬華達もノートと接触する。
近づく者すべてに噛みつくような猛犬が、見たことないほどに心を許す相手。気にならない筈がない。
そしてそのころのノートは色々と若かった。自分のコミュニケーション能力に少し酔っていた節があった。
ノートは持ち前のコミュニケーション能力であっという間に2人と打ち解け、SNSのアカウントまで教え合った。
ノートからすれば、綺麗な同年代の少女、しかも雑誌で取り上げられるのを見たことがあるくらいの有名人と仲良くなれるなんてラッキーだと思っていた。
有名人と個人的な知り合いというちょっとした優越感。それはノートの気を少し大きくさせる。
一方、錬華達も今までにないタイプの同年代の男子とのやり取りは思いのほかとても楽しかった。
幼少期から強化選手として選ばれておりどこでも特別扱いされたので、2人が周囲から常に浮き気味だったのも大きかった。彼女たちは今まで同年代の男子と気軽に会話をすることに興味も機会もなかったのだ。
強い新鮮さも相まって、なんだかんだやり取りは続く。
そしてある時、ノートは2人をとあるゲームに勧誘する。それ以降、ノート、ユリン、錬華、露奈はゲーム仲間となり、色々なゲームを共にするようになる。
彼らの関係は、そんな状態がずっと続いている稀有な繋がりが元になっているのだ。
「つまりだな、もう一度言うように、ユリンの才能に二人が興味を惹かれたから俺とも接触する機会があったんだ。それに、その時はまだ2人とも超有名人ってわけでもなかったしな。
いや、まあ、偶然読んだ雑誌で見たから知ってはいたぞ。しかしそこに下心があったわけではない、断じて。雑誌に載る様な人と仲良くなれるなんてちょっとラッキーだな、くらいの気持ちだったんだよ」
実は「弟分を正しく評価してくれる人がちゃんといるのか」という嬉しさから積極的に仲良くなったという理由もあったのだが、それはあまりに親バカならぬ兄バカすぎてノートも口にしたことがない。
この部分だけはノートも墓まで持っていくつもりだった。
因みに、ノートが普段読まないようなスポーツ雑誌を読んでいたのも、特集でユリンが『チャンバラ』の新進気鋭の選手として載っていたからである。
「いや待て、肝心の部分が抜けてんぞ。そのゲーム仲間になにをどうしたら“こうなる”んだよ?」
だが、その説明だけでは満足することはなくスピリタスの鋭い目線がトン2達に向けられる。
並の人ならそれだけで竦みあがるほどその目つきは鋭かった。一部の隙も許さぬような獣の目だった。だが彼女らはそれを真っ向から見返す。
「わたしは~出会ったときから、面白いメロディーが聞こえる人だな~って思ってたよ?ずっと聞きたくなるような、癖のあるメロディー。他にはないリズム。そのメロディーがもっと聞きたくなって、初めて自分のメロディーを強く合わせたくなって。あ~、好きだな~って、思ったの、ね」
それは錬華だけに聞こえる“メロディー”だ。
彼女だけの感覚。他人には理解できない感覚。しかしヌコォ達にはなんとなく彼女の言いたいことがわかる気がしなくもなかった。
「そうね、具体的に説明するのは些か難しいわ。それは誰だってそうではないかしら?それでも敢えて言うならば、彼は私に色々な楽しみと喜びを教えてくれた人よ。賢いようで、時々子供のような振る舞いをして、放っておいたらどこまで飛んで行ってしまいそうな人。少し気になって、なんとなく目で追っていたら、いつの間にか目が離せなくなっていた。それだけの事なのよ」
なにかそこに鮮烈なドラマがあったわけではない。自然とそうなっただけ。露奈は真面目にそう答える。それは聞いているほうが恥ずかしくなるほどの彼女の真っすぐな本心と偽りのない事実だった。
「逆に聞かせてもらうわ。貴方達は、どういう関係なの?」
嘘偽りなく彼女らは全てを説明した。だが、気になっているのはなにもヌコォ達だけではないのだ。露奈達からすれば、ヌコォ達こそ一体誰だと問いかけたいのだ。
「私はノート兄さんの従妹」
「ええ、話には聞いていたわ」
「無表情で、美人で、小さくて、胸の大きな子!」
トップバッターはヌコォ。余計なことは言わず、自分とノートの客観的な関係性を述べる。
個性的で可愛げのある自慢の従妹だ。ノートはゲーム性が異なったのでヌコォと錬華達を引き合わせはしなかったが、その存在については二人に話していた。
そんなヌコォの特徴のみを錬華は挙げる。一切手加減無しの火の玉ストレート。バッターから大きく外れたストレートは観客席のノートに突き刺さる。
ヌコォからの視線に気づいたノートは思わずヌコォから目を反らす。そんなノートにヌコォは「別に、怒ってない」と小さく呟く。
ノートは男にしては珍しく、綺麗だとか可愛いだとかをハッキリ言葉にして言えるタイプだ。それが本当に綺麗ならば、綺麗と言って悪いことなど何もない。ノートはそう思うからこそ、本人を前にしても褒められる。
なので本人から直接言われることはヌコォも少し慣れていた。
だがそれを他人の口から聞くのは、思ったよりヌコォに刺さった。端的に言えば、非常に珍しいことに照れているのだ。
「オレは、ユリンを除けばノートの一番古いゲーム仲間だ。暫く会えなかったが、またこうして再会ができたってわけだ」
「へぇ、貴方が」
「聞いてるよ、それ。ノっくん貴方の話するとき、いつも楽しそうだったな~。“ブラッディメアリー”…………貴方のこと、でしょ?そうだよね?」
そして、ノートはスピリタスに関しても話していた。ノートにとっては寂しくも大切な思い出。それ故にゲーム仲間にはその思いを共有してほしかったのかもしれない。
スピリタスの一件はノートから直接聞き、錬華達もよく知っている。
スピリタスがニヤっとしながらノートに視線を送れば、ノートは「なんだよ」と不満そうな目でスピリタスを見つめるばかりだ。
それが照れ隠しだと分かっているからこそ、スピリタスはより愉快そうに笑う。
「それで、貴方は?」
「え、わ、私、ですか?」
そして最後の一人。ノートの背後で影を薄くしていたが、ネオンは逃げられない。
どうしたものか。ネオンは回復傾向にあるとはいえ、過度なプレッシャーに弱い。露奈自身はそこまでしているつもりは無くとも、大人びて隙の無い彼女の姿は常に力強く覇気があった。それは普通の人でもかなりプレッシャーになる。
おまけに露奈は有名人。プレッシャーは倍以上になる。
ノートも思うところがあったからこうして付き合っている。だが、なりふり構わなければこの流れを断ち切ることはできなくはない。
これはやはり止めるべきだろう。
ノートはそう思って自分の口からネオンについて説明しようと口を開くが、それより先にか細い声がノートの背後から聞こえた。
「わ、私は、ノートさんの、パーティー、メンバー、です」
伝えられたのはたったそれだけ。しかしそれはネオンにとってはまた一つ大きな成長だった。
墓地の攻略を任されながら、数値では圧倒的に有利だったのに自分の心の弱さが作戦を破綻させかけた。これはネオン自身が一番許せないことだった。
パーティーのお荷物にはならない。その一心でネオンは頑張った。そして今も尚現在進行形で頑張っている。
だからここで立ち止まれない。出来得る限り、やる。その決意が彼女の口を動かした。
今に座り込みそうなほど足は震えている。すぐにでも縋りつきたくて目はノートの背に向けられている。それでもネオンは膝をつかず縋りつくことなく、一人で耐えた。
「…………会ったことのない、タイプね」
「不思議、ちぐはぐ。変なメロディー。でも“綺麗”。ノっくんが側に置いてる理由、なんとな~くわかるかも?」
“ネオン”は、霜月朝音という人物は、露奈と錬華が知りうる限りノートが側に置いておかないタイプの人種だった。厳密に言えば、“側に居続ける事ができない”のだ。
ノートは無能を好まない。拒絶はしないが、駒として扱うだけだ。身内としては見ない。
更に言えば、ユリンという番犬が常に居る。ユリンはノート以上に苛烈だ。ノートのお荷物になる人種を決して許さない。故に近くに居続けることができない。
もしかすると、自分たちの知りえない価値があるのかもしれない。ここはゲームだ。ゲーム的な視点での価値という物が存在する。
しかし、それだけでは駄目なのだと露奈と錬華は知っている。
彼女たちも長くノートの傍らでゲームを楽しんできたのだ。厳密には、PKプレイヤーの同志の一人として。
PKプレイヤーというのは色々な面で難しい。簡単な話、PKプレイヤーなんてものは全体の利益より個人の快楽を優先できる奴らだ。つまり自分勝手で、普通の人より我が強い。
その中で頭角を現すプレイヤーというのは、圧倒的な我の強さを保つだけのなんらかの『ストロングポイント』がなければならない。
敢えて王道から逸れてPKプレイヤーとして活躍するだけの人格と才能、それがなければ話にならない。
そんな癖のある連中を纏め上げ指揮することに才能のリソースを多く割り振ったのがノートだ。
PKプレイヤーは全員が常に捕食者。ノートの周りにいる者は自然と一癖も二癖もある連中ばかりだ。
狩られる立場にある軟弱な“草食動物”が混じっていられる場所ではない。
飛びぬけた才も揺るがない個性もある。それは常人なら目が潰れるほどの明るさを放つ膨大なエネルギーの塊だ。
それに適応できなければ彼らの圧倒的な“我”に磨り潰されて死んでしまう。
以前から二人がよく知っているユリンはともかく、少しの会話でもヌコォとスピリタスがノートの近くに居られるだけの『他人に干渉されようともブレない強い個性』を持っていることは錬華と露奈にもわかる。
戦闘能力も、自分たちを感知してから素早く戦闘態勢に移ったこと、そして足捌きや隙の無さから察することができた。
この人たちは間違いなく対人戦に生きる者側なのだと、同じ立場にいる彼女たちには見抜けた。
では、ネオンは。
言葉はたどたどしく、身震いしている。見る限り被捕食対象。草食動物の中でも最もか弱い存在。少なくともノートの近く居続けることに耐えられるタイプではない。
ネオンを品定めするように、獲物を前にした獣の様に、錬華と露奈はネオンをじっくりと不躾なまでに観察をする。その手の視線に敏感なネオンは更に委縮し、震えてしまう。
過剰な干渉を察知し、それをノートが遮った。
「錬華と露奈の言いたいことは分かる。
でもな、ネオンは凄いぞ。記憶力とそのストイックさは俺が今まで見てきた中でもトップクラスだ。そして、MMOどころかゲームすら初めてでありながら、ネオンはずっと俺達と行動を共にしている。行動を共にできている。
わかるよな、この意味が」
PKプレイヤーはゲーム慣れしていなければ難しいポジションだ。
もっと言えば、“ゲーム”という物がどういう物かよく熟知し、ルールの中で最大限自分の要求を通せる人種ともいえる。一歩間違えば迷惑プレイヤーとしてアカBANも覚悟しなければならない立場だからだ。
PCのオンラインゲームの様に液晶越しにやり取りするのではなく、現実に近い状況でやり取りを行うのがVRMMOだ。そこに付き纏う責任と求められる身の振り方のレベルは非常に大きく高くなっている。
そんな危険な綱渡りを快楽の為にやってみせる。それがPKプレイヤーという生き物だ。
その上、ノートが側に置く人種は繰り返すようにユリンを始めとして才能に溢れ我が強い。というより常にユリンが側に居て、強力なフィルターの役割を果たしている。
しばらく行動を共にすればユリンの才能に圧倒され、自分がお荷物になっていることが分かり自ずから潰れてしまう。
露奈と錬華は知っている。強い輝きに惹かれて近づいてみても、近づくほど強くなるその眩しさに耐え切れず去っていく者の多さを。
露奈も錬華も世界最高峰のプレイヤーだ。自分の前から去っていった人など数えきれない。
劣等感を抱えたままいつまでも平気でいられるほど、ノートの近辺は平和ではないのだ。
例え、なんらかの意図でノートが引き留めたとしても、そこは針の筵でしかない。
何度見てもネオンは“最もか弱い草食動物”だ。しかしそんな存在がノートの側に居続けられる。
つまりそれは『ただの草食動物ではない』という証明だ。
少なくとも、状況に追いつけるだけの才を兼ね備えており、ノートに近づくには必ず接触することになるユリンという、性格も才能も苛烈で強烈な狂犬に噛み殺されないだけの価値はある人間なのだ。
ユリンという人物は、ノートよりも更に“無能”を嫌っている。非生産的な“無能”がノートに縋りつくことなど決して許しはしないのだ。
ネオンがノートの近くいることができる時点で、それはユリンの査定を乗り越えているという証明である。
錬華と露奈は一通り聞いて、ヌコォ達の事をある程度推し量ることができた。
「まあ、これで全ての疑問が双方尽きたってわけじゃないだろう。しかしこれ以上は後にしてくれ」
完全にスッキリしたかと言えばそんなわけがない。ノートはそんな彼女らの雰囲気を敏感に感じ取る。
だがお互いに最低限知るべきことは知れただろう。よって双方がある程度冷静さを取り戻した。そう判断したノートはここで一度話を打ち切ることにする。
「それで、なんの用だ?」
そして話題転換の為に錬華と露奈に徐に問いかける。
といっても、話題を変えるために聞いただけで、ノート自身その答えなど分かっている。
わざわざユリンを挑発して情報を聞き出す。普通のプレイヤーなら現在決して寄り付かないし来れないであろうこの場所に訪れた。
その理由など明白ではあったが、ノートは一応聞いておく。
「わたしも仲間にい~れて!」
「パーティー、入れてくれるかしら?」
微塵も断られることなど考えていない堂々とした態度。印象は柔らかいが、その目はどこまでも真剣。そこに議論の余地は無さそうだった。
「先に警告しておくぞ。俺達のパーティーに所属すると、色々なメリットはつくが、恐らく金輪際街には出入りできない。まともにイベントにも参加できない。
それでも構わないか?」
しかし、ノート達のパーティーは気軽に参加できる物ではない。
ネオンの初期限定特典『パンドラの箱』は味方対象(パーティー/クランメンバー)に『幸運・極大』、『全体強化・超絶』、『自動HPMP回復』というぶっ壊れバフを常時発動する。
その代わり、性質が連鎖する『チェインテンパーメント』という厄介な効果を持つ。
ネオンの性質は初期限定特典により『極悪』固定。性質は極悪であるプレイヤーは今後一切街に出入りすることは不可能になる。
さらに、パーティーの加入はどこでも行えるが、解除は街の中でしか行えない。つまり一度ノートのパーティーに加入すれば二度と抜けることはできないのだ。
そのデメリットを前にしても、錬華と露奈の回答に迷いはなかった。
「わたしは~ノっくんと一緒にいるよ~。だってそれが一番楽しい!」
「ゲームの楽しさ、教え続けてくれるんでしょ?」
ゲームのメリット・デメリットなど微塵も気にしていない。
“貴方”とゲームがしたい。
彼女たちは真っすぐな瞳でノートを見つめる。
ノートがパーティーメンバーに視線を送れば、ユリンは苛立ちながらも何も言わず、ヌコォは何を考えてるかわからない無表情、ネオンはノートに任せると言わんばかりにコクコクと頷き、スピリタスは上等な獲物を前にした獣の様に目をギラつかせる。
二人への態度は各々異なる。胸の内には色々と抱えているだろう。だが、直接的に加入に反対する者はいなかった。
ノートとしても、確実に自分にかかる負担が倍増すると分かっている。
しかし世界最高峰の才能に加え『長く自分とゲームを楽しみそのスタイルを熟知している』存在を突き放すことなどできない。
ノートは疲労感と共に喜びを滲ませた何とも言えない表情でパーティー申請を二人に送ると、即効で受諾される。
こうして、パーティー『祭り拍子』に二人も世界最高クラスの才能を持ったプレイヤーが加わった。
追記:感想からご本人様の許可を得て掲載
『おめでとう!《女の戦いは魔王も食わぬ》をクリアしました!』
『称号《魔王を退ける者》を獲得しました!』
『称号《延命処置の達人(恋)》を獲得しました!』
『プレイヤー トン2 、 かまいたち がパーティーに加入しました!』
『《修羅場》の形成を感知しました!』
『EXモード《恋は戦争》を展開しました!』
『特殊シナリオ《主任のピンチ~地獄変~》を開始しました!』