No.552 どうして空は青いの?
暫くWitcher沼に失踪しようとしていたがパソコン君がぶっ壊れたので…………(グラボが死んだ!この人でなし!)
あと感想いっぱいもらえたからゲリラ
「今までの傾向的に、確実に指揮系統を崩壊させたり信頼関係を歪めるギミックはあるだろうな。薬物の暗示から更に踏み込めば幻覚、幻聴、視力の低下、精神抵抗の弱体化、あとは何が考えられるか………薬物の蓄積段階が上がる事で肉体の動きにデバフが発生し、近接が後衛のフォローをしにくくなる。あるいは後衛の攻撃の照準が乱れて近接にフレンドリーファイアをすることを誘発してくる、辺りか」
「うげー、めっちゃ戦いにくいじゃん。ガスマスクとか付けてたら軽減できるかなぁ?」
「ユリンの考えはあってるだろうなぁ。今までの他の女王たちも寺院とかで事前に得意技を予想できるようにしていて、ちゃんと対策していけよって示してたからなぁ」
赤の女王なら炎、熱。
青の女王なら凍結、酸など。
ある程度予想できるヒントは出ているのだ。
であるならば、毒液やガスなどの散布が目立った黒の寺院から考えれば黒の女王の得意技もおのずと絞られる。
「Ummm………リーダー」
ノートを司会として他のメンバーからも予想は出るが、大まかな部分ではノートの物とあまり変わらず、少し行き詰まりを見せたところでJKが手を挙げた。
「少し話が変わるんだけどね、赤の女王は火属性、青の氷属性だったよね?だったら黒は闇なのかな?」
「あー、多分、そうだといいんだが。そうすると防衛面では結構楽になる」
ノート達アサイラムは闇や呪の属性に親和性が高いのでその系統の攻撃を受けてもあまりダメージが出にくい。これは逆もまた然り。ノート達の得意属性は其方に偏っているので、敵が闇属性寄りならこちらのダメージは通りにくくなる。
裏を返すと地力での殴り合いになるため、確実にアサイラムよりも推奨ランクが高い黒の女王に競り勝つのは相当厳しいことになる。死ににくいが勝ちきれない、という状況になりかねない。
となると、弱点属性となる光や聖属性などが必要になってくるのだが、そこでGingerがハイ!と手を挙げる。
「ウチあんま魔法とか気にしたこのなかったんじゃけど、闇属性ってなんなんじゃ?」
「え?……あー…………」
Gingerの素朴な疑問。Gingerは実はALLFOが初のゲームである。ゲーム歴でいえばネオンと同じだ。Gingerは自分からALLFOを購入したわけではなく、VRチャンバラの選手として第七世代への切り替えになれるためにも、その手の事にGingerが異常に疎いと知っていたコーチ陣がなんとか調達してきたものをただただ使ってみただけである。初期限定特典もくれるというのでよくわからないけどもらっておいた、というノリだ。
アニメなどのサブカルチャーはともかく、本すら全く読まなかった弊害でファンタジー知識レベルがネオンを更に下回ったGingerにとって、まず魔法という概念を理解するのに時間がかかった。ただあまり難しく考えなくても、『斬れば殺せる』をモットーにしたような天叢雲剣のおかげで色んなものをスルーしてしまっていた。
この天叢雲剣は闇系統を除けば魔法さえデフォルトで切断可能なのだ。Gingerがあまり魔法を脅威と考えたことがないのも仕方がない。
しかしそれでは不味いとノート達からアサイラム製マニュアルを手渡され、本当に最低限ここだけ読めと言われた部分を眠い目をこすりながらなんとか読んだ。
それでもまだわからないことが多い。
ファンタジーに疎いからこそ、Gingerは根本的な疑問を呈した。
火属性はわかる。燃やせば生物を傷つけられる。
氷属性もわかる。凍れば体にダメージが入る。氷がぶつかれば痛い。凍ったら動けない。
けど、闇属性は?闇ってなんだ?暗いってこと?
Gingerはよくわからんと首をかしげる。
「暗いだけでは、人は痛めつけらないじゃろ?」
どうして空は青いの?
そんな風に子供にいきなり質問された親の様にノートは一瞬口ごもる。ゲームに慣れてくれば闇属性の概念など野球部がみんな丸刈りなくらいオリジナリティーのない要素で、改めてそれでどんなダメージが発生しているかなんて考えないのだ。
「闇属性の魔法って、火みたいだったり水みたいだったり雷みたいだったり、あとはビームみたいだったりするんじゃが、そういうもんなんじゃろうか?」
Gingerはあまり魔法に興味はない。だが、相手がどんな攻撃をしてくるか理解をすることで迎撃や回避に大いに役立つことは経験則として知っている。
その点、火属性も氷属性も攻撃時のイメージができる。しかしノートやネオンが使う闇魔法は特定の形を持たない。これでは発生して起動を見るまで回避のためのイメージができない。どういうことなの?とGingerは首をかしげる。
「光と闇は、それそのものは無形あるいは、強いているなら基本形はビームに近いものなんだと思う。光がプラスのエネルギー、闇はマイナスのエネルギーって感じだろうな。それが火や雷のような動きをするときは、元が火属性や雷属性の魔法に闇属性が相乗りして発動しているって俺は考えている。だから俺がよく使う涅玄鑓雷とかは雷と闇の両方の属性を持つ魔法になっている」
『闇属性』というのは火や氷と違い現実に実態を持たない物。それをどう解釈し、具現化するかどうかは製作陣の嗜好が反映されやすい。
初期限定特典の都合上、闇系統しかほぼほぼ習得しないノートからすると、闇は『負のエネルギー』の具現化というイメージが強かった。
「じゃあ黒の女王がどんな形の闇魔法を使うかわからんって事になるのじゃな?」
「いや、そこは絞り込める。まず赤と青とは被らない様にするから確実に炎と氷は無し。雷は希少属性だし涅色の遺跡のアンデッドが一体も使ってないから無し。風も同じだな。逆に煙状の魔法は確認できてるから、こっちは使ってくるだろうな。黒霧で視界封じとか如何にもやりそうだ。あとは土属性に相乗りさせて拘束系の魔法として使ってくるとかあたりか。赤が魔法火力特化、青が遠近両用なら、黒は搦手……最悪本体は防御特化型であとは薬物などのデバフで削り殺すみたいな悪質な事しそうじゃないか?」
赤の女王も青の女王も、それぞれが治める遺跡において近い技を使うボス敵などは確認されているのだ。
初見殺し的な技ばかり使う女王達だが、まるっきり準備をさせてくれないかと言うとそうでもない。
完全に対策してないにも関わらず今まで勝てた女王戦は、運が良かったからどうにかなった分もないとは言えない。それでもまだどうにかなると楽観視する事もできるだろうが、ラヴァーリザードを倒して得た称号やら何やらが悪さしているのか敵の強さが全体的に跳ね上がったのだ。挙げ句の果てに地下ダンジョンでは全く油断していなかったのに全滅一歩手前まで追い詰められた。
だからこそノート達はわざわざ作戦会議などをしているのだ。
アタッカー偏重型のアサイラムにおいて、1番楽か最悪かで真っ二つに評価が割れるのが防御特化型だ。
防御特化型はリソースを防御に割いているので、攻撃のパターンは多くない。なのでその重装甲をブチ抜く火力さえ出せるなら楽なボスになるし、アタッカー偏重寄りですら抜けない防御力だった場合は一気に最悪のボスに化ける。
そして今回の黒の女王。遺跡内で重装甲タイプが確認されている為に女王も装甲が硬めの可能性があるのだ。
別のパターンであり得るのは、デバフとスリップダメージ系の全体攻撃でタンクを実質無効化してくる搦手型。
タンクはヘイトを自分に集中させる事で敵の攻撃を強制的に自分の方向に向ける事ができるが、そのタンクが苦手とするのが全体攻撃系。
例えばの話、JKが盾を構えてネオン相手にタンクスキルを使っても、ネオンが超広範囲を薙ぎ払うタイプの魔法を使ってきたら攻撃の方向を自分の方向に向けることができても周囲までの損害はどうしようもない。
それが単純な魔法ならまだいい方で、煙の様な指向性が薄くその場に残留する系統の攻撃だとタンクのヘイト集中が途端に意味を無くす。煙そのものは意思を持たないのでヘイト集中したところで全く意味ないのだ。
実際涅色の寺院では煙系の闇魔法を使われてJKが上手く攻撃を防げず、後衛のネオンや鎌鼬、カるタ、VM$、ケバプ達が先にピンチに陥るというパターンがあった。
なのでノートの予測してはこのどちらかのタイプか、考えたくないがこのハイブリット型が黒の女王の可能性が高いと見られた。
おまけにここに薬物を裏テーマに置いた独自のデバフで指揮系統を壊しにくるとしたら、準備不足では敵う敵ではなくなるのだ。
「うーむ、チーフはよく考えておるんじゃのぅ」
ノートの推測に疑問や反論などは思い浮かばず、なるほどと頷くGinger。ツナはおぉ〜とキラキラした目でノートを見ていた。
「あくまで予測だからな。全然違う形態でぶん殴ってくる可能性も全然あるから」
予測して対策が出来るという事は、それは開発側も同じ。つまり対策を弱体化させる様な技を持っていてもおかしくない。
ラヴァーリザードの一件などから、ノートは悪い意味でALLFOを信頼していた。
「まあ、正攻法で殴り合うだけがALLFOじゃない。生産力の底上げで今まで出来なかった事もできる様になってきたからな。それを踏まえて、予測される具体的なパターンとその対策方法について解説していこうと思う」
そう言うとノートは楽しそうにプレゼン資料を次のページへ捲った。




