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No.550  Scarecrown

ドロヘドロはいいぞ

(Netflix公式がYoutubeでクリップ出してるから試し読み代わりに視聴してアニメなり漫画買うなりするといいぞ)



「ベビーブルーの最大の特徴でいえば、人を機械の部品みたいにいじってたあの技術だよな。多分アレをやったのは青の女王で、貴族達もその技術者に近い存在だったんだろう。ツナはあまり思い出したくないだろうが、屋敷の地下ダンジョンで見たアレだ」


 ちょっと刺激強いぞ、とノートは忠告したうえで、赤銅の収容所擬きに相当するベビーブルーの屋敷の地下ダンジョンにいた魔物のスクショを何枚か見せる。ツナは思い出すのがいやなのか隣にいたエロマの肩に顔をうずめていた。一方、Gingerは目を細めて凝視していた。グロ耐性は強いようだ。


「これは…なかなか尖った見た目じゃのう。本当にALLFOの敵の写真か?ほらーげーむとやらのキャラの方があってそうじゃが」

「フィルター全外し状態だからな。本当はもっとマイルドなんだろう。でもこれ、明らかに機械の動力に人間使ってる感じなんだよなぁ」


 刑務所擬きの地下ダンジョンの人体実験は強化人間みたいなものを作ろうとしていたのではないか、とノート達は結論付けていたが、屋敷の地下ダンジョンは強化人間というより、人間を改造して機械との融合性を高めようとしていたように見えた。


「この命を使って強化って特性がアンデッドと相性良すぎなんだよな。クソ強かったわ」

「ウチ、それと戦ってみたいのぉ。涅色攻略だと半分GBHW漬けじゃったし」

「多分もう一個ある都市では死ぬほど戦わせてやる。この調子だと最難関だぞ。ケバプの読み通り、推奨ランクをオーバーするまでは敵も同じ歩調で強化されていくっぽいし」     

 

 ノートがそういうと、まぁそれならいいかのぉ?とGingerは考え込む。


「確か、あなたがあのドラゴン崩れと戦う前に土壇場で召喚した本召喚死霊も、あそこで狩った死霊達を素材として召喚しているのよね?」 

「鎌鼬が言っているのは、Scare(スケア)crown(クラウン)の事だろ?アレなー、使い勝手良すぎて涅色の例の文字伏せボス倒すときにまた使っちゃったんだよなぁ。だから次の黒の女王戦はアレに頼れないから悪しからず。それはさておき、スケアクラウンはあのベニーブルーの遺跡の思想を詰め込んだような死霊だ」

「元はJK命名だからネーミングセンスいいんだよね~。いいよね~」

「うるせーぞトン2ー。悪かったなネーミングセンスなくてー!」


 その元となった死霊は、厄介さでいえば青の女王を超えていたとアサイラムから評価された死霊。

 形状は王冠を乗せた貴族の様な豪奢な衣装の残骸を纏う大きな案山子。その衣装を覆うように金具など機械を思わせる部品が肉体に直接取り付けられており、顔面は血が滲んだような包帯で覆われていた。


 その能力はまさに凶悪。

 居るだけで周囲の味方に耐久上昇系のバフをばら撒き、その上で自分が従える死霊達のダメージを肩代わり。そして肩代わりしたダメージを強力な自己再生で補いつつ、受けたダメージ総量だけ出力の上がる精神系デバフをばら撒きまくるという害悪特化。

 おまけに案山子の中身、つまり着せられた王族のような服の下にはたくさんの死体らしきものがあって、中身のその残基を減らし切らないと死なない。例えばノートが強敵相手に使う相打ちで道連れにする魔法を使っても案山子の残機を一個減らすだけで一撃で確殺に持っていけないのだ。


 なおこの案山子本体は直接攻撃はしてこないし、形状の都合かケンケン移動なので早く動けないが、こいつが居るだけで周囲の魔物の強さが跳ね上がる。おまけにボスに匹敵するほど本体がクソ丈夫で、ネオンの魔法を直撃させても残機一つ持っていけない。此奴が周囲の死霊の残基を肩代わりするせいで死霊が得意とする自爆攻撃で死霊が死なずに戦闘続行する始末。むしろ取り巻きの自爆攻撃を使わせて先に案山子の残基を使い切らせるのが最終的な最適解とノートが判断するしかなかった本当に厄介な死霊だった。

 赤銅の方では仮称サイコと仮称パイロに苦しめられたが、JKが名付けた仮称案山子の王(スケアクラウン)はこの能力でノート達を散々に苦しめた。振り返ってみると、地下ダンジョンの難易度の高さは7割近くがこのクソ死霊のせいだと思わなくもない。それぐらい妙に厄介な死霊だった。

 


 この特性に目を付けたノートが、此奴を中心に正月イベントで狩って回った各地の強力なボス級の魂だの、骸獄の我儘を聞いた報酬として与えられたヤバい呪具だの、VM$が召喚したダメージ肩代わり系のアイテムや生物を捧げて召喚した死霊が、ラヴァーリザード討伐時にひっそりと召喚された本召喚死霊【Scarecrown】である。これでノートは遂に現状の召喚枠を使い切った。

 本当はもっとあったはずなのだが、ネクロノミコン強制進化時に代償として勝手に消費されていたのがノートの想定外である。

 ノートは自分があまりに強くなり過ぎたのでALLFOが遂に縛りをかけてきたのでは、と訝しんだが、実は当たりである。


「とりあえず居るだけで効果発揮するっていう無茶苦茶な性能してるしなアレ。本体狙われたらダメっていうわかりやすい弱点はあるけどさ。それでもメリットの方が大きいからVM$に力を借りて再召喚をした。でも結構無茶してるから、また死ぬ勢いでアイツは使えない。ってことでScareを一度置いといて、青の女王についてだ」

 

 青の女王。

 黄土雲の都の1エリア、仮称ベビーブルーの遺跡の支配者。ベビーブルーの支配者層だった貴族たちから支持を受けた王としての性格が強い存在とも言える。

 赤の女王が最初焼死体の姿だったの対し、青の女王は腐敗前の状態で凍死体の様になっていた。その本体は凍死体が装備していた腕輪。こちらも赤の女王と同じく付喪神型のアンデッドだった。種族性は氷だが、その他にも酸を使った。赤の女王が炎一本のストロングスタイルなら、氷だの酸だの近接攻撃スタイルへの切り替えだの、青の女王は器用な印象を受ける。

 赤の女王と同じとある精神疾患を患ていたと思われ、戦闘中に起きる空間の歪みやら不和を煽るような幻覚などもそれに基づいているというのがノートの予想だ。

 また、赤の女王と同様にウェディングドレス様な物を用意しており、金の鎧が発見された。


「ノート兄ぃ、これさ、赤の女王と青の女王が結婚する人が同じ人だったって認識でいいの?」


「そこなんだよなぁ。赤の女王の天守閣で見つかってる金の鎧の人の顔は塗りつぶされてるんだよな。ケバプが入った一瞬だけ顔が見えたらしいけど、これは青の女王の屋敷で俺達が金の鎧を見つけた時と似ている」


「その時トン2さんが一瞬で見た物をスケッチしたその御仁の顔ですが、恐らく私が見た人物だと思います。なにぶん不意打ち故、身構える方が先であまり観察できず断定はできないんだがね」


「との事だ」 


 そこでユリンが改めて問いかけたことに、ノートが答え、赤の女王の城を1人で再探索したケバプが補足する。


「じだいてきにも、せかいもちがうんやったらいろんなぶんかもあるやろし、あん人らがまともやったときは一人の男が色んなおんなのことなんぼ結婚してもええのかもしれんけど、一つのエリアのトップをりょーほーめとってまうことってあるー?」

 

 そこにちょっと酔った感じのVM$がツッコむ。というより画面上にお酒の缶がガッツリ映り込んでいる。

 カるタは複雑な人間関係図をしているアサイラムチームの事を思うと言えなかったその点についてストレートに言及したVM$にヒヤッとするが、顔には出さない。

 

「そもそもコイツ誰って感じなんだけどな。この金色鎧の人。イケメンなのは分かるけど、それ以外がまるで情報無し。ティアもよくわからんって首傾げてるし」

「兄さんと私は、金色の鎧の人もどこかの王とかで、政略結婚みたいなものかと考えたこともある」 

 

 そんなカるタの1人空気読みを知ってか知らずか、気にした様子もなくいつも通りのノートの言葉にヌコォが相槌を打つように続ける。


「ただ、ユニーククエストの事も考えると、これがそんな単純なものではないとも思うんだよな」

「だから今はこう推測している。この後戦闘する黒の女王もこの男と結婚する予定だったのではないか、と」


「だが、アンデッド達の様子を見る限り、結婚が上手くいったようには見えない。結婚しているならもっと交流したような痕跡を残してもいいはずだ」

「あるいは、そもそも結婚していないか」


「この結婚前後で、あの都市の時間は止まっている。つまり、ユニーククエストの肝は結婚式の前後で何が起きてしまってあんな状態になったか」

「それに関するヒントは既に得ている」 


 赤月の都も最初からあのような場所だったわけではない。

 カオナシが見せた過去の出来事では、カオナシが何かを召喚してしまったことが、あの都市が崩壊し、民がアンデッドへと化けてしまったことの原因と考えられる。これと同じ事が黄土雲の都で起きたのだとしたら、誰かがカオナシと同じことをやってしまったのだと推測できる。


「これがユニーククエストの文面に書かれていた『呪縛』なんだろう。俺らがやるのは、このネームドキャラ達の誰が都の人類死霊化計画をやらかした犯人かってのを当てる作業なのかもな」 



 

 

ノートだから強制ログイン不可2日の代償で済んだだけで

ノート以外が骸獄の起動をしようもんなら…………

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― 新着の感想 ―
結構時間飛んでて曖昧でALLFOが始まって何年目なんですか? 二年目?三年と半年?
更新感謝! そろそろスタッツとかスキルまとめ見たい あれ長いけど見ちゃう
>ノートは自分があまりに強くなり過ぎたのでALLFOが遂に縛りをかけてきたのでは、と訝しんだが、実は当たりである。 確か反船終わった辺りで「ノートは気づくことなく、『シナリオ』に“誰よりも沿っている…
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