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No.Ex 対米鯖第三≠五臨時偵察小隊 ㉑

本日3話目





「思い出しました、あのサメの召喚と炎の魔人…………オーストラリアの初期特疑惑…………」


「奴らが日本サーバーから複数の国へ出る方法を確保しているというのはこれで完璧に証明されたという事だな」


 始まるDDによるUADDへの劇的な反撃。狩る方から狩られる側へ。DDは容赦なく襲いかかるがその中でも初期限定特典勢の活躍は圧倒的だった。

 無論、初期限定特典そのものの性能が高いのは当たり前として、それを使うプレイヤーたちの能力が高い。誰も初期限定特典に振り回されているようには見えない。


 刀を振り回しているのは、確かGingerだったか。次期金メダリスト候補。本当に初期限定特典はランダムに配布されたのか疑わしい。知れば知るほどそう思う。もちろん離脱した人がほとんどなのだから確率論なのかもしれないが、この段階まで残っている初期限定特典勢のリアルの肩書が大体おかしい。


「あの鎧は、日本でも目撃があったな。アメリカの初期限定特典持ちだと噂があるが」

「正直、もう少し大きくしたらボス敵で通じそうな見た目ですよね」  


 盾にぶつかった魔法が反射されたように跳ね返っているが、ただでさえ防御力極振りっぽい初期限定特典に反射能力まで与えるなどALLFOを一体何を考えているのか。


 ゲームは敵がいるから盛り上がる部分はあるが、初期限定特典勢の無法さはそれに通じる部分を感じる。それを一番体現しているアサイラム統領のせいでそう見えやすいのかもしれないが。


「他アサイラムメンバーが全然出ていませんね」 

「手札を伏せているつもりか、どこかに仕込んでいるか。さすがにここからではわからん」


 アサイラム統領は今回どれほど手を抜いてUADDと向き合っているのか。一見舐めているとしか思えないが、第三者的に観察していた私たちですら理解できない瞬殺決着を見せられると何も言えない。


 こう見てると、本当にあの輸送作戦が成功しようと失敗しようとあまり関係がなかったのではないかと思ってしまう。

 何か根本的な部分で全員がアサイラム統領の思考を読み間違えていた感覚。きっと彼は私たちが知らないALLFOのルールを知っている。それを見れただけ今回は少なくない成果があったとみるべきか。


 そんな事を考えていた私の脳みその内部に花火を放り込まれたような衝撃が走る。

 初期特3人に襲われて最後まで頑張っていたUADD残党が殲滅された瞬間、そのアナウンスは起きた。



【規定条件の達成を確認】

【Jail Breaker/Hypnopompia Protostar/»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦が出現しました】

[Warning:特殊災害(スペシャルハザード)が発生します]

【ワールドシナリオβが進行しました。ワールドの『¿¼¤­Èù¿ç¤Ë¤¢¤ë¿À¡¹』の 活性率が変化します。一部フィールドの変異を開始します。

『Jail Breaker』との邂逅により特殊称号『邂逅者:Jail Breaker』が与えられます

『Hypnopompia Protostar』との邂逅により特殊称号『邂逅者:Hypnopompia Protostar』が与えられます

特殊災害(スペシャルハザード)を発生させたので『特殊災害(スペシャルハザード)の引金』の称号が与えられます】  


[Warning:特殊エリアの強制介入が発生します]

[Warning:イレギュラーイベント『都市防衛軍・異章決戦休火山要塞』を開始します。

【特殊環境:強制参加】

『このクエストは強制参加です』


【緊急クエスト:休火山都市の岐路】

『『戦闘』か『逃走』を選択可能です。選択によりイベントのクリア条件と報酬が変化します。

セーブポイントが変異します。

戦闘:一定時間内の»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦の撃退

逃走:一定時間以上の»à¤»¤ëº½¤ÎਹԲ¦からの逃走』

[Warning:強制カウントダウン執行 0:59:59]





「なんか出た―――!?」

「このアナウンスじゃま!?」

「前が見えなっ!うわやべっ!!」


 そのアナウンスが発生したとき、誰にも知らないところで逃げまとう4人が居た。

 岩肌でところどころ金属質な足場の悪い坂を全力で駆け下りている最中に、急に目潰しなどされたら何が起きるか。

 コケる。


「「「あぁぁぁぁぁぁ!?」」」 


 悲鳴を上げながら転がり落ちていく三人。視界がシャッフルされて何が起きてるかまるで分らないが彼女たちは自分たちに回復魔法を打ち続けるというほぼ唯一の正解を選んでいた。


 それを見ていた純戦闘職のヌルはため息ののち、大型の盾と糸を駆使してボードで滑るように高速で斜面を滑走し始めた。最初からこれをやらなかったのはおいていくとギャルズ三姉妹が絶対にうるさいとわかっていたからだ。

 では三人も乗せて同じことができるかと言えば無理だ。凹凸の激しい斜面でちょっとでもバランスを崩せばギャルズ三姉妹の二の舞だ。一人だけだとしてもぶっつけ本番で同じ超人プレイが可能な人間などほんの一握りだろう。


「(一体何がどうして…………彼女たちだけが原因?)」


 ヌルにとってもそのアナウンスは初めて見るものだった。

 直前の言動だけを見ると容疑者はギャルズ三姉妹。

 ただ、少し疑問が残る。この規模の大破壊が、ちょっと火口に物を投げ込んだくらいで起きるだろうか、と。それこそ同じことはギャルズ三姉妹以外でもやった可能性は低くない。

 それはゴミを捨てるという目的だけではなく、どれくらい深いのかとか、どこからダンジョンなのかを図るために何かしらの物を投げ込んでも不自然ではない。


 何かすごく珍しいことをしたわけでもないのに、こんなことが未警告で簡単に起きるだろうか。

 噂ではどこかのサーバーで地面の亀裂かなにかをゴミ箱代わりにしていたらお仕置きエネミーらしきものが出現してとんでもないことになったと聞いたことがあるが、その時に聞いた時の規模感と違いすぎる。そもそもこんなアナウンスが起きるような敵なら世界規模で話題になっているはずだ。


 ともかく、この気温の上がり方と言いまともに戦ってどうにかなるものではない。そう判断したヌルは逃走を選択した。





「場所を移すぞ!」

「はい!」 


 私たちの居る場所は異常の発生地点とUADD本拠地の直線状ではないが、近いエリアにいる。万が一巻き込まれたり観察していたことが知られると面倒な事になるのは確実なので、魔人バブゥさんの号令で私は走って移動し始めた。


「これは一体どういうことなんでしょうか?」 

「わからんが、あの火口はギャルどもが向かった場所ではないか?」

「言われてみれば」


 けれど、彼女たちがあんな災害を引き起こすような事をするだろうか。無自覚にやりそうで完全否定はできない。けど、お目付け役のヌルさんがいる。明らかに壊したら不味そうな祠を壊したみたいな事はないと思いたい。


 一応チャットで連絡を試みるが既読はなし。それどころではないのだろう。


「あの、デカさはっ」 


 坂を駆け下りつつ、視界は火口に。空まで明るくなるような光を放ちながら、それは姿を現した。双眼鏡無しでも大まかな形がわかってしまう。つまり、それだけ対象が大きいという事。おそらく今まで戦ってきたシナリオボスなどよりも大きい。


 アナウンスの内容を見るに、あの怪物相手に都市を守り切れとALLFOは言うのか。

 タイミング的にはUADDの全滅がトリガーに見えるが、それだとまるでUADDがあの化け物を封印していたように思えてしまう。けれどUADDにそのようなことができるだろうか。口は悪いが、UADDにそんな切り札を持てる力や知能のあるプレイヤーが居たようには思えない。そうでなければあんな偉そうに生産組組合に教会関連の情報開示を迫ってきたりはしなかっただろう。


 生産組組合の情報部が現在進行形でUADDのネガキャンをして完全にトドメを刺しにいっているはずだが、その中で何か情報が上がってくればこちらにも連絡が来るはず。こんな規模の災害を起こせる敵にまつわる情報が一切秘匿されているとは思えない。


 という事は、状況的には疑わしくあるがUADDは無罪と考えるべきなのだろう。




  

明日までは更新する

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 転がりながら回復魔法を撃ち続ける 相変わらず生存能力高いですね。というより本能?
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