No.Ex 対米鯖第三≠五臨時偵察小隊 ⑱
P5Rよりランス6(エロゲ)の方がクリアに時間かかってるの笑うしかないね
「これは戯言として聞き流してほしいのだが、俺の知り合いにオカルトの系統している奴がいてな。所謂自称霊感持ちと言う電波野郎だ」
「はぁ…………」
急に彼らしくないオカルト話に私は首を傾げた。話題転換にしてはあまりに変だったから。
「さっきアイツからは変な電波でも出てるんじゃないか、と言ったが、奴は違う言い方をした」
「何か祟り神めいたものに憑りつかれているとかですか?それとも無数の女の生霊に憑りつかれているとか?」
この手の話でありがちな話だ。物語で腐るほど見た。
「何か気色の悪いヤバい化物がくっ付いている、色んな生霊に纏わりつかれている、までは合ってる。しかし正解ではない。正解は、アイツの生霊が寄ってきた化物やら他の強大な生霊を食虫植物みたいに捕えて貪り喰ってるらしい」
「ぇっ…………」
絶句。ただのオカルト話でこの言葉がしっくりくる無言になってしまうと思わなかった。
物語だと凄い化物とかに憑りつかれていて他の霊を払っているとかみたいなのはよくあるが、本体の生霊が化物を超えてくるパターンは初めてだった。だからだろうか。荒唐無稽なオカルト話なのに完全否定ができなかった。
「俺はな、奴の電波発言が100%の嘘っぱちだとは思ってない。類まれな妄想力から来る強烈な思い込みが大部分を占めているだろうし、更に多少盛って話すような癖があるから普段の発言でも70%くらいに見積もっていた方がいい信頼度だが、0%じゃない。実際は共感覚に近い何かを感じていると俺は予想している」
「科学的根拠が0%ではない、と?」
「統合失調症は人にあり得ない現実を見せる。人の脳には周囲から受け取った情報を脳みその中で弄繰り回す機能が元々備わっている。最初はちょっとした色や形のブレに対し、霊感系のアニメを見ることで脳が自分の中で消化しきれなかった謎の感覚に対する誤った答えを得てしまった」
睡眠中の夢の中で現実とはかけ離れたような世界が現れたとしても、それはどこか今までに見てきた映画やアニメが下地になる傾向がある。全くの0からオリジナルの世界を描くことは難しい。
統合失調症の人たちが妖精をみたり魔法使いの様に振舞ったとして、それは彼らの全くのオリジナルと言うわけではなく、先に何らかの形で妖精や魔法と言った概念が頭の中にあるから妄想の中で出現させる事が出来る。統合失調症の人たちがいきなり母国語とは異なるオリジナルの言語を流暢に話し始めたみたいな事は授業でも聞いた事がない。狂気の中にも何かしらの理は必ず存在している。
「アイツは頭の良さも常人離れしていてな、観察力もシャーロックホームズの如き観察眼をしている。その観察眼と強烈な思い込みの強さと共感覚が悪さして、脳みその中で強引に一つの情報として実像を結ぼうとする時、奴の頭の中には常人では見えていない何かが見えてしまうように出力されている可能性がある。既存の何かに当て嵌めようとする脳の修正機能。それがアイツの霊感の正体だと俺は踏んでいる。これはアサイラム統領も概ね同じ見解だった。あまり表立って言う事は憚られるが、この手の奇妙な感覚を正気のまま尖らせられる連中を、カウンセラー界隈では『神ガカリ』なんて揶揄する事がある」
そんな人物が、アサイラム統領を見て周囲の霊を貪り食う生霊を持つと評したのは。
「類稀な観察眼が描く霊はな、これが意外でもなくその人物の本性を言い当てている。単なる思い込みの電波なだけなら当てにならんが、アイツは観察眼と図抜けた頭の良さがベースにあるからな。その強大な存在感で周囲の強力な存在を引き付けて捕まえ、それを餌に更に新しい霊を引き寄せる。指揮官として参考にすべき存在かもしれないが、魅入られるなよ」
最初はどのようにオチを付けるのかと思いましたが、恐らく魔人バブゥさんが私に伝えたいのは最後の一言なのでしょう。魅入られてはいけない。その忠告はよくわかる。この場に居ないのになお生産組組合でもその存在感は強大だ。恐らく先生も含めて、皆彼に魅入られている。
彼の事を知るのは参考になるのかもしれないが、必要以上に探るのはあまり良くないと感じた。
「そう言えば……先生の……いや、何も言うまい。その辺りは絶対に深く踏み込むなよ」
「先生の御息女の件でしたら……すみませんそれも聞いてます……それで女帝から先生への敵視が強まっているとか…………」
「…………抜刀斎さんだな」
「黙秘で…………」
誰がかなり踏み込んだことまで漏らしたのか魔人バブゥさんも察したようだ。それにしても、魔人バブゥさんがさんづけで誰かの名前を呼ぶのを初めて聞いた。
生産組組合の裏番長こと抜刀斎さん。
男か女かもみんな知らないという謎すぎる人。生産組組合の上層部はリアルでの接触も多いようだけど、抜刀斎さんだけは一度も姿を現したことがないらしい。
表舞台に滅多に出ないから知名度が私よりも低いけど、一度深く内部事情を知ればあの人との接触は避けられない。
先生ですらあの人に何かを指示をしているところを見たことがない自由人。神出鬼没。私が圧倒的な強者と見た4人ですらあの人1人に挑んで勝てなかったと聞く。それぐらい一人だけ何か違う。ギャルズ三姉妹ですらあの人の前では敬語で直立不動になる。本当に逆らったら不味い相手を天性の才覚で判断するあの三人をしてその態度が正解だと感じる相手なのだ。
アサイラム統領が先生の首を最後の最後で取り損ねたのも、結局は先生の策謀が勝ったというよりは最後の番人である抜刀斎さんを突破できなかったというのが事実という疑いが私の中にある。
長い付き合いであるはずの上層部ですら「先生の親戚らしい」という情報しか持っていないのは一体どういうことなのか。
正直聞いてなくても皆がそれとなく情報を漏らすアサイラム統領より、抜刀斎さんの方が不明な点が多くなっている状態だ。
「魔人バブゥさんって先生よりも先に彼と知り合っていたそうですが、どんな子供だったんですか?」
一度話始めると魔人バブゥさんの口も軽くなったのか、少しずつ語った。先生の娘とアサイラム統領の関係まで知っているとなれば黙っているのも無駄と判断したのだろうか。
「俺が見つけた時には、既に指揮センス自体は完成していた。人を従わせる力は勝手に身に着けていった。あの地獄の戦場で、風当たりも非常に強かった世界で、それを逆手に取っていた。アイツからすれば周りの身内2人以外全部敵みたいな状況は慣れっ子なんだ」
馬鹿にされ、揶揄われ、そんな状況で舐められたくないなら必要なのは勝利だった。
いざ周囲を巻き込む時に厄介なのは敵よりも無関心な大衆で。何せどんな反応をするか読みにくいから、敵の方が動きを読みやすい分まだいい。だから周囲を全部敵にしてでも少数の絶対的な味方を作るようにした。
非力だったから手は選ばない。使えるものは全部使う。自分ですら道具にして勝利をつかむ。
人は勝利についてくる。
人は歓喜についてくる。
だったら楽しませてやればいい。
俺が一番お前を楽しませられる。
味方に立っても、敵に立っても。
周囲にそう思わせることができれば、人は勝手に集まてくる。
「俺が教えたのはPKのやり方だけだ。唯一心意気で教えたことがあるとすれば『ゲームを最も楽しんでいると胸を張れるプレイヤーに成れ。絶対的な味方が欲しければお前が1番の敵に成れ』とは教えたな」
その教えは、私にとって頭を殴られるような衝撃を受けた。
当たり前の事であるのに。特にオンラインゲームというジャンルではこの当たり前の事を忘れていく。
オンラインゲームにソロゲーの様な深いシナリオは期待してはいけない。
何故ならシナリオと色んなプレイヤーが同時に動くシステムのバランスを取る事は実質不可能だからだ。
オンゲに深いシナリオなんていらんのや(暴言)
上位層しか追えないシナリオなんて意味ないしね
なお勝手に独自ルートで深掘りしまくってNPCからも警告されるノート君
某B氏「まだ早いって言ってるでしょ!」




