No.Ex 対米鯖第三≠五臨時偵察小隊 ⑥
やっぱぬきたしアツいよな
これはもう円盤初めて買う作品になるかもしれねぇ
だって本家が規制だらけだからぁ!!
頼む完走してくれッ………!
「初めまして、MCです。アメリカ側の支援の代表として今回は同行させてもらいます。よろしくお願いしますね」
「初めまして、生産組組合のフラミゴです。呼びにくければミゴとだけでも大丈夫です」
ギャルズ三姉妹の手配で集まったアメリカの護衛メンバー達。
その代表であるMCさんは私を見ると迷う事なく近づいて来た。
口調こそ丁寧だが差し出された手は親しげで。
私も自己紹介をしながら握手を返す。
MCさんはアメリカの有名なプロゲーマーチームの一員だ。
人口飽和を起こしているゲーマーという人種の中でプロの称号を掲げられる人物は極めて少ない。
その中でも確固たる知名度を持つプロゲーマーはほんの一握り。MCさんはその一握り側の人種。
ただ、彼女を最も有名たらしめている最大の理由が「プロゲーマーにしてはあまりにまとも過ぎる」という事は公然の秘密……という事になっている。
突き抜けた才覚を有する者は一般的な人とは何処か大きく異なる感性や価値観を持つ。
鶏が先が卵が先か。
才覚があるから一般化されないのか。
それともその強固な我が一般化への迎合を拒み才能を引き出すのか。
ビジネスマンでの成功者の様に一般への迎合化無くして成功しない分野以外、特に単独で活躍出来る分野で才覚を発揮する人物ほどこの傾向が強い。
先生は私にそう説いた。
全世界ゲーマー化が進むこの御時世、ゲーマーというあらゆる競技人口で最多と言われる分野でプロゲーマーの世界への扉を開ける人物は何かしらズレている。
AIのサポート無くしてまともに生活できない様な極端な存在も珍しくない。
その中でMCさんは異様に癖がない。
他を圧倒する得意分野はないが、何をさせても上手い。
就活生は毒にも薬にもならない水道水でしかない自分を潤滑油とよく詐称するが、MCというプロゲーマーは本当の意味での潤滑油。彼女をどこかのチームに適当に放り込めばチームがいい方向に動き出す。
それでいて常識人でありマネージャーや大会主催者の要望にキッチリ応えてくれる為、関係各所からの人気が異様に高い。
事前にギャルズ三姉妹から誰を助っ人に呼ぶかを聞いて急いで調べた限りのMCという人物像がこれだ。
本来であればUADD輸送部隊の代表者と挨拶するべきなのだろうとふと思うが、MCさんの他に代表者っぽい人物がいない。
それもそうか。
善意でその界隈のプロが手を貸してくれる。それを差し置いて私がリーダーですとは素人ではなかなか言い難い。
日本人でありプロゲーマー界隈にも明るくない私からすればMCさんにも詳しくないのであまり気後れしないけど、アメリカのプレイヤーからしたら国民的アイドルなんだから緊張するだろう。
私とてもし目の前の人物が沖田練華や土御門露菜の様な日本を代表するトッププレイヤーだったら緊張していたと思う。
けど、これは私と穏やかな微笑で握手をするMCさんの雰囲気のおかげかもしれないとも思う。
ゲームなので多少顔を盛ってる部分はあるだろうけど、それでも綺麗な人だ。身長としては160cmは確実に超えている判断できるライン。脚がスラリと長く、スタイルからしてアジア系のソレとは違う。
生まれながらにして多くの才覚を持つ人物。
プロゲーマーの中でも同業のプロゲーマーから憧憬の目を向けられる側の上澄のプレイヤーである事は少しのやり取りでもわかった。
そんな彼女に気軽に絡めるとしたら、それこそ同格のゲーマーという事になる。
「ミゴ〜?」
MCさんの背後からずいと覆い被さる様に肩を組む大きな影。
赤と青の派手な髪色に白い瞳。
目元に星型のラメを散りばめたその人物。
「アぁ、知ってる。その服、ミコフク、なんだろう?日本に旅行した時に礼拝堂で見た。マスクをつけてんのは宗教的なアレだったりするの?」
「いえ、これは自分を目立たせる為です。顔を隠してるのは、単純に自分の顔を晒すのが苦手というだけでして。改めまして、フラ≠ミゴです。貴方は……ZaylaX、さんですね?」
「そう。よろしく。日本人ってほんと顔隠すの好きだよね」
「……あまり否定できないかもしれないですね」
実際私の様な奇妙な仮面はともかく、目元や口元を軽く覆う仮面をつけている日本プレイヤーは少なくない。私が普通に街中を歩いていても浮かない程度には。
逆にアメリカは顔を晒す方が当たり前。本名でゲームをしている人も少なくない。弄れる幅に限界がある顔はともかく、名前も本名そのままというプレイヤーは日本では希少だろう。
このZaylaXも、一応プロゲーマーとしての名前ではあるけど、本名から取っているのであまり隠してる感じはない。
それにしても、背が高い。
派手なメイクもそうだが、2m近くある体格はバレー選手を彷彿とさせる。
MCさんもスタイルは良いが、ZaylaXはもっと手も脚も長い。
「ZaylaXちゃーん!今日はよろしくね!!」
「あたし達か弱いので!乙女なので!!」
「生産職なので!!絶賛護衛期待!!」
MCさんとの会話に割って入ってきたZaylaXさんはどうしたら良いのか内心考えていると、そのタイミングで先程まで別のアメリカ人プレイヤー達と仲良さげに話していたギャルズ三姉妹がワッとZaylaXを取り囲んだ。
「アぁ、いつも元気だねアンタら。言われなくても守るけど、だったらなんで前線に出てきてんの?」
「お姫様が攫われなかったら物語始まんないから……!」
「いっしょあそびたいからじゃんね?」
「ZaylaXちゃんの〜カッコいいとこ見てみたい!はい頑張ってこー!」
「「おー!!」」
「わかったわかった。守るって」
絶対的な才覚に裏打ちされた強固な自己を持つZaylaXさんをどう扱ったらいいのか。群れずしてクラスカーストのトップ層に当たり前の様に座ってる存在感に私は圧倒されかけたが、ギャルズ三姉妹はそれ以上の勢いでZaylaXさんを押し切った。
女性僧侶組に属していたメンバーも彼女達も人種で分ければこのギャルズ三姉妹に近いのだろうけど、その誰よりも彼女達は明るくて無視できない存在感がある。
「MCちゃんもよろしくね!」
「一応護衛だけとあたしら役に立たないかんね!よろしく!」
「応援には自信ありまーす」
どこまで天然でどこまで計算尽くなのかまるで見えない。足引っ張ります宣言をここまで堂々とされると怒る気もなくなるというものか。MCさんも苦笑で応えた。
「出来る範囲で守るけど、DD撃破が優先だからね。頑張って生き残って。いや死んでもいいから荷物守るべきか?」
「ZaylaXちゃんってばハクジョーもんだー」
「いざとなれば死なば諸共!!」
「カミカゼッ!」
「日本人プレイヤーがそれ言うのか?」
「え?よくわかんないけどパイセンが自爆特攻する時言ってた」
ZaylaXさんを皮切りに他のアメリカプレイヤー達も声をかけてきた。ZaylaXさんとの距離の取り方的にパーティーメンバーかもしれない。
つまり、同じプロゲーマー。
それが7、いえ、8人。
…………思ったよりしっかりとした戦力になっている。
先生から与えられたミッションは『支援物資をUADDの拠点に護送し、その途上でDDとアサイラムに襲われて荷物を奪われる』となっていたけど、下手をしなくても返り討ちにできるのではなかろうか。
これはギャルズ三姉妹に誰を呼ぶか確認してなかった私のミスだ。彼女達を軽んじていた訳ではないけどここまでのメンバーを昨日の今日で直ぐに集められると思ってなかった。
狂い始めた計画を前に私の脳が可能性を模索べく動き出すと、その思考に割り込む様にざわめきが聞こえた。
これは一般のプレイヤーだけじゃなく、プロゲーマーすらもざわめいている。
彼らの視線の先にあったのは数台の馬車を引く第二の輸送部隊。
その先頭を馬に近い生物に乗って先行する白銀の騎士だった。
女帝降臨




