表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/879

No.71 反転スル天祀ノ結界・開錠セシ不浄ノ門・来タルハ冥途ノ渡シ船④

(´・ω・)起き抜けのゲリラ。

前回は好評だったようで何よりです!感想をくださる方々、ありがとうございます!まだブクマ・評価してないよって方はよろしければお願い致します。レビューを下さるととても嬉しいです。




【天宝・十二天の祈り・聖女の加護】

『聖女達の祈祷が開始されました。プレイヤーに特殊加護スペシャルプロテクション『聖法の担い手』が一時的に付与されます。これはイレギュラーイベント『反転スル天祀ノ結界・開錠セシ不浄ノ門・来タルハ冥途ノ渡シ船』に参加するプレイヤーのみが対象です』

『大聖堂の臨時結界が発動します。一時的に強制的にアンデッドの活性率を低下させます』



 急に訪れる全体アナウンス。ノートはその恩恵にあずかることはなかったが、アナウンス自体はノートにも届いていた。


「(ああ、あの光の柱か。何かと思ったが、そういうことね。しかしアンデッドの活性率の低下は痛いな)」


 ノート達『祭り拍子』を除き、そのアナウンスによりプレイヤー達は大きな歓声をあげた。その声はまだ墓地周辺でアンデッド狩りをしているノートにまで聞こえるほどだった。


 他のプレイヤー達からすると死活問題だが、ノート達はミニホームのお陰で必要な物は全て揃っている。なので街を積極的に守る気はサラサラない。

 というより死霊を狩るだけ『祭り拍子』の絶対的中核であるノートが強化されていくし、いくらダメージを負ってもネオンの初期限定特典であるパンドラボックスの『味方のHP・MPを自動で回復する』チート効果のお陰で特にアイテムを消費することもない。

 この効果のお陰で、通常の方法では回復しないノート達(死霊含める)もずっと闘い続けられるのだ。


 なのでアンデッドの活性率、つまり、ポップ数が減るのはあまり嬉しくない。

 そんなノート達の気持ちに応えるように、続けて2つ目の全体アナウンスがかぶせるように発せられる。

 

『全体のアンデッド進行率が上昇しました。イレギュラーイベント『反転スル天祀ノ結界・開錠セシ不浄ノ門・来タルハ冥途ノ渡シ船』が2ndステージに突入します』

『2ndステージ突入により、アンデッドの活性率が上昇します。出現するアンデッドの上位個体が多く出現するようになります』

『上位個体が多数出現したことにより異常個体(イレギュラーワン)が出現しました。全体のアンデッドの活性率が上昇します』




「(キターーーーーー!運は俺に味方してくれている!!)」


 それは多くのプレイヤー達にとって最悪のアナウンスであり、ノート達にとっては福音に等しいアナウンス。ノート以外の『祭り拍子』の面々は、何となくこのアナウンスの原因がノートにあることをやんわりと察していた。


 そして彼女たちが気付くと同様に、ノートもその原因が自分にあることに気づく。


「(つまり、この場にいるアンデッドが強大なほど、その進行率は上昇し強い個体とも戦えるってことか。雑魚個体はもう10万に届くストックがあるから丁度いいか。そうすると、これからどうするかな…………もう少しアンデッドを増やすか?)」


 アンデッドに上位個体が多数出現するようになるということは、保有しているMPも多くなるということ。

 ノートがドレインして得られるMP量も増えるので、欲を出せばあともう1、2体は中級死霊を召喚できそうな感じだった。

 しかしMPが常にカツカツでは万が一の事態が起きた場合に対応できない。そう考えるとノートも悩みどころだった。


「(この馬車に乗ってる限りはどうにかなりそうな気はするんだよな。バウンティハンターが消えたのは嬉しい誤算だし。しかしこのままこの地獄()絵図()をALLFOが許すか?)」


 藪をつついて蛇を出す、なんてことはしたくない。そう考えるノートだが、既に藪を突くどころか爆弾を投げ入れているとは考えついていない。

 ノート達と通常のプレイヤー達には現状の認識に大きな乖離があるのだ。


 そんな時、ノートに特殊なメッセージが送られてくる。


『中級死霊の成長値が限界に達しました。自己進化を開始します。中級死霊が上位個体にランクアップします』


「はぁ!?」


 簡易召喚は、あくまで簡易召喚だ。本来成長することもないし、ましてや進化などあり得ない。

 しかしノートが召喚した死霊は『特殊環境下に於いて成長する』その一点に持ちうるリソースの大部分が割かれている。それはある種のロマン的なリソースの分配の仕方で実践ではとてもではないが使えない。


 しかしそのロマン仕様が極限まで合致するあり得ない事態が、あり得た場合…………“限界突破”という希少な現象が起きる。


『中級死霊が全て上位(グレーター)化しました』


 といっても、やはり本召喚ではないので完全な進化ではない。ザックリというならば、中級から上級に至ったわけではなく、中級の最上に到達した感じである。しかしそれもまたアンデッドの成長に他ならず、エリアのアンデッド進行率は上昇する。


「(なら追加で召喚をする必要はないか。なかなか優秀だな、中級死霊)」


 ノートが馬車からチラッと外をみると、明らかに召喚したときより2倍~3倍くらい大きくなり厳つくなった中級死霊たちが旨そうにアンデッドを喰い荒らしていた。


「(よく食べる子はよく育つわけだ。敵に回らなくてホッとしたぜ)」


 下手すると、あの六体を相手にしたら自分達が全力を出しても敗北しかねない、と感じてノートは強化されまくった中級死霊のパラメータを見て身震いする。

 しかもその中級死霊はネクロノミコンにより更に強化され、そのスペックは上級クラスに届き得る。


「(しかし残念だなぁ。あれが続けば本召喚も考えるんだが、マグロが泳ぐのをやめると死んでしまうように、アイツら餌が足りなくなった瞬間に死んじまうんだもんなぁ)」


 そう、そこまで強力な死霊なのになぜノートが1体も本召喚で召喚を試みないかと言えば、成長性に全てを詰め込みすぎていてやはり(確実に長期的な面では)実践登用できる代物ではなかったからだ。


「(てか、アナウンスで言ってた異常個体って奴らより余程ヤバそうな感じになってるよなぁ)」


 ノートは人ごとのようにそんな中級死霊達を遠くから眺めていると、急にパーティーチャットがくる。


「(ユリンか。なになに、『異常個体』はどうするか、だって?)」


 ノートは中級死霊がかなりやんちゃしているのでそちらに気が向いていたが、ユリンはどうも『異常個体』が気になったらしい。確かに異常個体という響きはどことなくロマンを感じさせるし、討伐すればなにかを得られそうだ。

 ノートがどうしようか考えていると、ユリンのパーティーチャットに反応したのかヌコォ、ネオン、遅れてスピリタスからも『異常個体』をどうするか、という旨の質問が届く。


 そこでノートは逆に皆がどうしたいかを聞いてみる。




――――◆パーティーチャット『祭り拍子』◆――――

ユリン:ボクは討伐したほうがいいと思う!というより、プレイヤー達に下手に成長する機会を与えたくない


Neon:私も一度事態の収拾を図った方がいいのではないかと思います


ヌコォ(ΦωΦ):アンデッドの活性化率、ノート兄さんがなにかした?ノート兄さんが活性率をコントロールできるなら、討伐してもいいと思う


スピリタス:ノートに全部任せる!だが倒していいって言うなら倒す!


――――――――――――――――――――――――



 返答は個々のスタンスがしっかり現れており、ノートは思わず苦笑する。というより結構乱戦のはずなのだが、馬車というある意味無敵フィールドにいるわけでもないメンバーが普通にパーティーチャットに参加できていることに驚く。



――――◆パーティーチャット『祭り拍子』◆――――

NOTO:話の流れをぶった切るようで悪いが、チャットに普通に返信してるけどそっちはどうなんだ?


Neon:私はアグちゃんが守ってくれていますので、全く問題ありません


ヌコォ(ΦωΦ):ネオンはかなり恵まれている。こちらは完全隠蔽状態になって木の上をセーフティポイントにしている。ゴヴニュは特に問題ない。盾をもって走るだけでいいペースで討伐している


スピリタス:ネモが冬虫夏草みたいな植物をばら撒いているせいでこちとら出番がない。寧ろ暇なんだよ


ユリン:この程度の敵ならアテナが糸で絡めて丸ごと倒せるよ。というよりピアノ線みたいなあの糸を張っておくだけで勝手に突撃して勝手にアンデッドが死んでいくからね


NOTO:なるほどな。んでヌコォの質問に対する回答だが、前のアナウンス含めて俺が原因だと思うぞ。それとある程度なら活性率はコントロールできそうではある。


ヌコォ(ΦωΦ):一体なにをしたの?私から見えてる変なクリーチャーがその答え?


NOTO:ちょっとばかし大盤振る舞いで特殊な中級死霊を数体召喚したんだが、この状況にうまく合致して思いのほか強くなったんだ。

どうも活性率はアンデッドの量というよりはアンデッドの質に左右されている気がする


ユリン:だからアンデッドがさっき少しだけ強くなったんだね


NOTO:そういうこと。まあ確定ではない。あくまで状況的な推察だ


スピリタス:こっちからもデカい狼男が見えてるな。あれは異常個体じゃなくてノートが召喚した死霊って事か。オレ達には一切目もくれず暴れてるから変だとは思ったぜ


NOTO:たぶん、今の状態だとスピリタスがタイマンで勝負しても極めて危ういぞ。はっきり言ってメギドより強い


スピリタス:そりゃいいな


NOTO:おいまて、暇にかまけて闘いを挑んだりするなよ。アイツら俺のオリジナルスキルで結構強引に支配下に置いているようなもんだから、変な真似すると暴走しかねない


スピリタス:つまんないな


Neon:私の方には、巨大な蠅の群れが


ノート:それも俺が召喚した奴


Neon:スケルトンが集られて、離れたと思ったら急にブクブク膨らんで、蠅がブワッと孵って


ユリン:やめて!実況中継しなくていいから!


ヌコォ(ΦωΦ):ネオンって案外グロ耐性高め?こっちはピンクの肉の塊みたいなものが掃除機のように何かを吸い込み続けて肥大化している


ユリン:だから!やめて!


スピリタス:ユリンの方には行ってないのか?


ユリン:知らない


ユリン:あ、もしかしたらいたかも。何か強大な芋虫か百足みたいなのが這いずりまわってる


NOTO:それも俺が召喚した奴だな


ネオン:では異常個体はどちらにいるのでしょうか?


ヌコォ(ΦωΦ):もう少し街に近い位置だと思う。スキルを使って探したけど、2の森にいるボスエネミー程度の強さはある


NOTO:まあプレイヤー達に下手に狩られるよりは、こっちで手柄を奪った方がいいか。全部こちらで倒せばまたぞろなんか手に入るかもしれないし


スピリタス:ってことはプレイヤーと接触する可能性があるが、どうする?殺していいか?


NOTO:これ以上引っ掻き回すと、バウンティハンターより厄介な物が出てきかねないから今回は無しで。まああまり手札を見せないように一撃で仕留めてくれると助かる


ヌコォ(ΦωΦ):ノート兄さんに賛成。これ以上手を出すと、強制的にこちらを排除する何かがあってもおかしくない


スピリタス:これオレ達が介入しないと日本サーバー完全につぶれんじゃねぇの?


NOTO:流石にそんなことはない、と思う、が


スピリタス:なんか不安そうだなおい


Neon:あまり参考になるデータかは分かりませんが、確か2の森のエリアボスは大体ランク7~9前後の難度だったはずですよね。

それで、スレッドのコメントから考えるに今のプレイヤーの皆さんは最高でもランク4。平均してランク2だったはずです。ボスだけならば対処可能かもしれないですけど、この消耗した状況下では対処できるかどうか


NOTO:消耗してるってわかるのか?


Neon:私、アグちゃんのお陰で暇だったのでスレッドなどを見て情報収集をしていましたから、あちらの状況は何となく分かっています


ヌコォ(ФωФ):これは有能、グッジョブ


NOTO:確かにあっちの事情が分かるのは助かる。となると、マッチポンプしますかね。

バルちゃんたちへはこっちから連絡入れるから、ユリン達は死霊をその場に待機させて自分たちだけで異常個体の討伐をしてくれ。

ネオンは単独行動が厳しいだろうからアグちゃんと移動していい。なにか異常が起きたら各自の判断で撤収。墓まで逃げてくれ。

異常個体討伐後の動きは各自に任せるが、何もなければプレイヤーとは接触せずにアンデッド狩りを続行で


ユリン:了解


ヌコォ(ΦωΦ):了解


スピリタス:はいよ


Neon:了解しました


――――――――――――――――――――――――



 ノートはそこでパーティーチャットを切り上げ、馬車を街の方向へ走らせ始めるのだった。



 



 


参考までに言っておくと、今の中級死霊は人形兵器よりも確実に強いです


(´・ω・)くそげ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 中級の時点であの『速い、硬い、強い』でお馴染みの人形さん達より強いだと… 死霊のポテンシャルってすごいのね…
[気になる点] ノート:まあプレイヤー達に下手に狩られるよりは、こっちで手柄を奪った方がいいか。全部こちらで倒せばまたぞろなんか手に入るかもしれないし 気になって調べたら、またぞろって悪いことに対す…
[良い点] 更新ありがとうございます! 再開された時から一気に読みました! 素の戦闘力<環境依存の死霊達がまさにハマったと言える状況ですねww [気になる点] 上級死霊のレッサーヴァンパイアの方がポ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ