No.513 狂気の沙汰であるマーケティング
GWです(しかしストックがない)
すまない………すまない ……………
ALLFOは全体的に告知が遅いというのは今までのイベント傾向からもプレイヤーは理解している。それは7世代ゲームが少しずつ増えている今でもMMORPGとして絶対的な地位を築き上げているからこそできるムーブである。
もはやALLFOは単なるMMORPGというよりは、メタバースに近い世界を作り上げつつある。
それぞれの分野であまりにも深すぎるやり込み要素があり、自由度が一周回って不親切なまでに並外れて高く、高度な社会システムが機能している。それには容姿が現実のものと似ている事も後押ししている。
ある種、第二の人生。
仮想空間内での経過時間が現実よりも2.2倍速なのもあってか、実際の体感時間がリアルと釣り合っているというの更に『第二の世界』化に拍車をかけている。
なにより、ALLFOはリアルと違って努力に対して真っ当な報酬がある。成果が目で見ることができる。AIの発達が進みすぎた結果、社会システムの発達と言う点において既に一種の完成形に至ってしまっている22世紀は平穏であるが同時に一発逆転もない。生まれた時から大体の人生の流れは決まっていて、其れに抗う必要もない刺激の低い人生。故にこそ第二の世界に刺激を求める。新しい可能性を求める。その受け皿としてALLFOは機能し始めた。
その強大な集客能力を持つALLFOとコラボする価値は既にコラボを果たした2つのゲームが示した。
トップバッターと言う重い役割を背負った『AMMⅢ』はハロウィンイベントでHeoritの魅力をプレイヤーに伝え、eスポーツの正式競技の1つとして認可された。
クリスマスイベントでコラボした『ドリーム・スラア・ピクト』では根強いファンこそあれど爆発的なヒットはしない傾向にある日常系スローライフ系ゲームでは異例のヒットを記録。対戦形式ではなく、老若男女楽しめるゲーム性なだけあってか幅広い層のユーザーを獲得した。
では次のバレンタインイベントではどのゲームとコラボするか。
有識者()の間ではまた対戦形式系のゲームとコラボするのではないかと考えられていた。というのもAMMⅢを始め、非スポーツ形式のゲームタイプの第七世代eスポーツが現状足りていないのだ。2年後開催されるEスポーツオリンピックゲームタイプ部門に向けて増えていく事は予想されていたが、入れ替わりが多いゲームタイプの競技はその年にリリースすればいいわけではない。せめて1年前にリリースされていて、観戦側も見ていて楽しめるほどの知名度を獲得している事が望まれる。
そうなると、既存の人気作のリメイクが一番安定しているのだが、それだけでは停滞するので必ず新規枠が出来る。人気のないゲームは競技から外されていくシビアな世界なのがVREスポーツのゲームタイプ界隈なのだ。
その点、AMMⅢが新規枠に選ばれたのは『昔からある根強い人気』と『新しさ』、そして『見ていて派手で面白い』という3拍子を確立しているからであると考えられていた。
ではGoldenPearが次にALLFOを使ってどのゲームを競技に押し上げるか。
第4世代で人気だったゲームの7世代用リメイクはほっといても恐らく出るので、考えるべきは新規枠。
ヌコォがテスターに選ばれていた【Pail Pilot 7Gear】もAMMⅢと同系で人気シリーズの新規だが、これは一度の試合だけでゲームが完結せず、装備などを引き継げることが重要な要素なのに加えて推奨人数がかなり多いので競技としては不向きなのでないと考えられた。
GBHW?冗談はほどほどに。
では最近リリースされたゲームは。
その中で、バレンタインイベントの告知が今の所何もない物。
AMMⅢの様に完全未告知で殴りかかってくるパターンもあれば、スラアの様に調べてみると実はコラボの気配が正式発表前にあったゲームもある。
AMMⅢの様に完全未告知のパターンも十分あり得るが、マーケティング戦略からするとこのやり方はかなりリスキーだ。よほど自信がないと下手すれば「知らねぇよそんなゲーム」と炎上する。特に表向きは西洋ファンタジー系RPGにゴリゴリのロボット系SFを一番最初にぶつけるなど狂気の沙汰であるマーケティングだ。世界観が壊れてしまいかねない。そこを上手く折り合いを付けさせたのはALLFO側の手腕か。それとも既に銃器を開発しバカスカ撃ってその脅威を世界に知らしめていたアタオカ連中のお陰か。
バレンタインイベント告知無し。且つ人気のある対戦形式ゲーム。戦略性があり、同時に詳しいルール説明がなくてもサッカーや野球の様になんとなく見ていても試合の動きが分かるタイプのゲーム。Eスポーツに相応しいゲームを絞っていくと条件は絞り込めていく。
一方で大穴もあり得た。
例えば人気はあるけど、世界観のせいでイマイチ取っつきにくい印象を持たれがちなゲームにテコ入れをしてもいい。ALLFOとコラボすればまず大失敗をすることはない。ALLFOのユーザー数は全てのゲームを過去にするほどに膨大だ。ユーザーのうちの0.01%でも興味を持たせれば従来のゲームのメガヒット級扱いだ。
その大穴の内の一つとして予想されていたのがこの『覚醒一揆~The true samurai sprit~』である。
まずもってビジュアルやテーマが既存の競技タイトルと被っていない。
オフェンスとディフェンスがハッキリと分かれているのも新規の観客にとってみれば分かりやすい。多少のキャラ性能はあれど基本的なゲームの流れは農民がオフェンスで武士がディフェンスだ。加えて主目的が直接的なバトルではなく、米を出来るだけ取るという戦闘以外の見どころもある。
この米を取るシステムも、ただ武士の目を掻い潜ってチマチマ米を取るという地味なゲーム展開が起きかねないリスクを一揆コールという独自のルールで回避している。不意打ちはたまに決まれば盛り上がるが、不意打ちばかりでは観客はつまらない。必ず攻撃の際にコールが発生するからこそ確実にバトルは避けられないし、観客側も勝負の盛り上がりどころが分かりやすい。
――――――と、メリットばかりを意図的に抜き出して考えると「ひょっとしてあり得るのでは?」と考えるプレイヤーがで始めるのも変ではない。
ノートもその1人だ。
ノートも万が一に備えて一応このゲームをマークしていた。ALLFOのコラボはコラボ先の人気キャラ適当に出して限定アイテム集めさせてはいおしまい、みたいなショボいコラボの仕方をしない。何かしら競技性があり、コラボ元のゲームを理解しておくことで有利にイベントを進められるように設計されている。
だが、今はもう覚醒一揆をコラボ相手と考えるプレイヤーは殆どいない。覚醒一揆側からバレンタインイベントの告知があったからだ。時期が遅かったのは単純に告知が遅いだけだった。
ではなぜノート、もといラノ姉がクワを振り回しているのか。
ラノ姉の姿で動いている時点である程度お察しであろう。ゴロワーズの配信の手伝いだ。ゴロワーズは雑食系の配信者なので一つのFPSタイトルにずっと入れ込まない。次々と色々なタイトルをプレイしている。これは色んな視聴者層を取り込むという理由もあるが、同時に現在固定で見ている視聴者層への配慮でもある。
ゴロワーズは活動初期からいろんなタイトルをガンガン回していくスタイルなので、そのゴロワーズを見続けている視聴者層の中には『色んなタイトルを遊んでくれるストリーマー』を好んでいる層もいる。なのでここで長期に一つのタイトルに拘泥するとその視聴者層は離れてしまう。配信スタイルの切り替えはそれなりのリスクがあるのだ。
よって個人的にAMMⅢを遊んでいても、もう配信に載せることはない。次のタイトルに手を出す。その流れでちょっと話題になっている覚醒一揆に手を出してみた、というのがいつもの流れなのだが、今回は事情が違う。
「LOWAAちゃん、もっと声出してこー!」
「ラノ姉ちん案件なのに普段通りすぎ!?」
そう、案件である。
案件が欲しいと常日頃ジョーク混じりにこぼしていたLOWAA子だが、本当に案件が来た。




