No.Ex 第十章余話/NeWとNavyの現状報告❸
「まず真青米教の方ね、紹介された知り合いとの話はついたよ。君たちの教祖のリアルの知り合いって言ったらかなり食いついてきてね、結構喜んでたよ。と言ってもいきなり幹部に抜擢ってわけにもいかないから今は奉仕活動を手伝ってるよ。おにぎり配ったりとかね。それでも彼方から話しかけてくれるお陰か少しずつ周囲も僕のことを認知してきてくれてるとは思うよ」
「でしょうね」
「オメーはどこ行っても目立つしな」
身長がスラリと高く、何より顔が良い。ちょっとやそっと良いとかではない。ノートやNeWのように10人中6、7人はイケメンと判断する程度ではなく、100人中95人がイケメンと答える顔をしている。どんなダサい服を着てもイケメンと言われる程度には顔が良い。
本当のイケメンを見極めるならダサい服を着せれば良い。雰囲気イケメンは大体それでオーラが剥がれる。真のイケメンはたとえ全身タイツでもイケメンとわかるのだ。ネーヴィーの場合は全身タイツを着せてもイケメンを隠せない真のイケメンだ。三人で宅のみした時にノートとNeWが悪ふざけでネーヴィーに色々とダサい格好をさせても、上裸にももひきを履かせて変なかつらを被せてもイケメンオーラを剥がすことができずノート達の方が敗北感を味わった程度にはイケメンだ。
そんな男なので、すれ違えば女性であれば何人かは振り返る。その程度には目立つ。おまけに愛想がよくデフォルトで微笑みを浮かべているので人当たりが非常に良いし嫌味なところが全く感じられない。
雰囲気からして優等生気質で、育ちもいいのでケチをつけるポイントがない。よく連んでいたノートとNeWが結構チャラチャラしてるヤツという評価だったので余計に優等生っぽく見られていた。見られていただけで、この2人と連んでいる時点でネーヴィーも割と“いい性格”をしているのだが。
そのせいか高校時代はこのトリオを『ホストトリオ』などと呼ぶ奴らも少なくない数いた。
そんな男が熱心に奉仕活動をしていれば、当然人気は出るし目立つ。皆の印象にも残る。ネーヴィーは自分の顔の良さもその使い方も悪友共のせいでよく知っている。瞬く間に支持者を集め始め、既に小さな支部の中であれば自分の意見を出せるくらいの地位にはなっていた。
「意外と悪くないんだよね、青米ネットワーク。戦闘系も生産系も所属してるし、色んなスキルや魔法をNPCを介さずに教わることができたよ」
「それはワッシーの口説きが上手いからだろ」
「ほんと真面目君のフリが上手いよな」
チャラチャラした感じを出さずに色んな女性に声をかけられるのもネーヴィーの為せる技だ。
ネーヴィーは自分に関心を向けてくれたプレイヤー、主に女性を中心にうまいこと丸め込み、スキルや魔法を伝授してもらっていた。
無論、これは日常的に行われているわけではない。もし青米教内部での技能伝授が日常的ならもっと青米教に所属したがるプレイヤーはいただろう。技能は基本的にプレイヤーの生命線であるためにジョーク団体に所属しているよしみだけで教えるには理由が弱い。
だがそこをどうにかできるからネーヴィーはノートとNeWの親友なのだ。言葉巧みに誘導して一度教われば元々の要領の良さですぐに習得してしまう。長く深い付き合いであるノートやNeWから見ても、弱点らしい弱点がない事が弱点、という評価を受ける程度にはネーヴィーは大抵のことはできる。
「これのおかげで中立は保ててるね。あと教会を挟まずに僧侶にもなれたよ。条件は知識と一定技能なのかな?あと奉仕活動も条件に入ってるかも」
「サラッとヤバいこと言うなよマジで」
「非教会経由の僧侶系って未確定条件がマジで多いんだぞ」
現状、初期特の様なショートカットを除けば、僧侶になるにはまず教会に弟子入りし勉強や奉仕活動が必要になる。そうなると自然と性質が善性に傾く。僧侶化と善性はセットだ。これが闇墜ちすると僧侶は悪性系職業に変質化する。僧侶のまま中立に戻すのは極めて困難だ。大体は都合よく中立で止まらずに一気に悪性に傾いてしまうケースが多い。なので言葉にすれば簡単だが、属性『中立』の僧侶と言う存在はなかなかに稀少だ。
その例外ケースが、何らかの条件を満たしたことで職業候補に僧侶を出現させ、中立のままに僧侶になる事。
中立に戻すのが困難なら、最初から中立のままにしておけばいい、という根本から話を覆すようなやり方だが、これがなかなか難しいのだ。希少なだけあって中立僧侶も口をつぐんでいる事が多く、当事者たちは条件を予想できても黙秘してしまっているためにまるで情報は出回らない。
「とりあえず中立状態の僧侶は何が出来るか様子見かな。この情報はまだ君達と廃人組の子たちにしか話してないから手探りだね」
「だな。善性僧侶と悪性僧侶両方の技能を習得できるか、それとも別ルートの技能があるのか。長い目で見ていくべきだろう」
「ただなー。こんな調子のワッシーだからモデルケースになるかっていうとなー。アテにするのダメじゃね?」
「確かに」
ノートとNeWが勝手に分かりあっていると、ワッシーは少し眉をハの字にする。
「相変わらず失礼だなぁ君たちは」
「だって事実だし」
「ワッシーを平均値や中央値に置くのは馬鹿のすることだってのは俺達の昔からの見解」
「それな。絶対外れ値」
色々な場所にネットワークを張り巡らせているノート達でも全く目途が立っていなかった中立属性僧侶の案件を狙ってもないのに当たり前のように到達しているのがワッシーだ。ゲームの攻略wikiを見てみると、偶に「どうやってこの条件を見つけ出したんだろう」と思うような事が書かれていたりする。例えば『特定の風の吹いている原っぱで時計回りにクルクル意味もなく回り、カメラをセピアモードに設定して撮影状態を取り、特定のBGMが聞こえるまで待つ』とか、『ボックス1の一番左上にモンスターがいないことを確認して、データを消して男主人公を選択して最初から始める。適当でいいのでレポートを書くところまで進めて『レポートを書き残した!』の表示が出た瞬間に電源を切る』みたいな、どう考えてもノーヒントではほぼ発見不可能な条件が設定されていたりする。
そんな希少条件を、狙ってないのに達成することにワッシーは定評があった。ノートとNeWが断片的情報から正解を導く事を得意とするなら、ワッシーはその取っ掛かりとなる物を運と勘とズバ抜けた万能さで引き寄せる才能が有った。
こんな男を統計データの中に置けば必ず分析結果が歪む。ノートとNeWは親友であるからこそワッシーの特異性をよく理解しているのだ。
「もう少し発言力が増したら、ボクの方からロシアサーバーへの接触を提案してみるよ。ボクらの息がかかってるし、開国寄りの動きが増えてきたロシアサーバーならジアさんも協力的になると思う」
「それが成功すれば、ロシア支部設立の立役者としてワッシーの影響力は確立できる、か」
「悪くねぇな。ロシアへのパイプが出来るのは悪くねぇ。ジアさんも乗ってくるな」
「ああ。間違いなく乗ってくる。身内の談合だが外部は知らぬが仏だ。俺から話を通しておくよ」
ロシアを統べる女帝より支部設立の要求を呑ませれば、ネーヴィーの地位は一気に高まる。上手く動けば支部長になる事も出来るだろう。ノートが乱世の英雄なら、ネーヴィーは宰相が相応しい。人を上手く使える側の人間だ。
「これでジアに牽制かけてきてる先生にもカウンター牽制が出来る。生産を生産組合に依存させず、真青米教も台頭させる。生産組合は現地のシステムを侵食して支配していくが、真青米教は支配ではない。融和であり、そして根本にあるのはネタだ。営利団体じゃない。生産組合のあおりをくらったロシア民を引き込みノウハウを吸収してしまおう」
「問題は先生がそれを妨害してくるだろうってことだなぁ。ロシア民もどう反応してくるか。いやー楽しくなってきたなぁ。師匠連とバチると手の内お互い分かってるからな~」
「そうだね。一体どうしたものか。ねぇ、流石に僕に丸投げしないよね?ちょっと?目を逸らさないで?2人とも考えてよ?」
自分達の敵になるのは自分達を鍛え上げた妖怪爺婆共だ。
そうなればノート達も気楽に動けない。如何にお互いの手の内を読み効率よく要所を抑えなければならない。加えて爺婆は人生のボーナスモードなので時間的余裕もある。普通に働いているノート達は時間的にも不利。ネーヴィーは肩をゆするが、ノートとNeWですら疲れてる時に考えたくねぇと顔を逸らすのだった。




