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No.53 闘争之化物

【システムログ❷(予約投稿)】


( ・ω `)……ミニ……は予想より…ザザ……重大なダメーj………


(´・ω...:.;::..ここにいるのは……ゲリラの………ザザッ…亡霊………


(´・;::: .:.;:..………丸語が……ザザッ…ゲリラは……死せず………




「本当にやるんだな?」


「ノート達がランク10で、オレだけ9ってのも納まりが悪いしなっ。それをタイマンで撃破すりゃ確実にランク10になれんだろ?」


「ああ、ほぼ100%な。しかしそれだけキツイってことなんだぞ」


「ああ、だから回復と“ばっふぁー”、だっけか?それは任せるわ」



 第一次おまいう合戦を終え歓迎会を締めたノート達は、その後にスピリタスの強い希望で闘技場に来ていた。


 闘技場の観覧席にいるのはまだ酒を飲んでいるバルバリッチャと、甘いものは別腹と言わんばかりに大量にデザートを持ち込んでいるアグちゃん。

  戦闘フィールドの端にユリンとヌコォが控え、ノートとネオンはスピリタスの後ろに立っていた。



「アグちゃん!準備が整ったから頼む!」


「わかったわ!」


 アグちゃんはノートの指示を受けて立ち上がると、蜘蛛と三つの角を持つカブトムシ、コーカサスオオカブトアトラスを合体させたような昆虫(偶然できた新種らしい)を戦闘フィールドに投げ込む。そして自らの技能を行使し、すぐさま新たな悪魔を生み出す。


「ネオン!」


「はい!」


 その二つの存在をアグちゃんが支配しネオンが強制的に合成。真っ黒な光が広がりそしてその中から恐ろしき存在が産声をあげる。


 それは筋骨隆々の蟲の人型悪魔と言うべきか。黒光りする鎧のような外殻に覆われた体長2m級のボディ。筋肉と鋼を混ぜ合わせてギチギチに詰め込んだような太い手足。その八つの目は緑色な怪しげな光を放ち、3対の腕が威嚇するように広げられていた。


 ——————あ、強くなりすぎちゃったかも


 その時のアグちゃんの顔は明らかにそんな表情だった。おいしいものをたくさん食べてハイテンションになっていたことがミスに繋がったのだ。

 それは何度も植物悪魔と闘ってきたノート達にも実感できた。コイツはおそらく少しは劣るとはいえ般若面蟷螂人に通ずるヤバい奴だと。


 しかしただ一人、目を爛々と輝かせているバトルジャンキーだけは獰猛な笑みをうかべた。


「最高だぜ、ノート…………コイツは首筋がチリチリくるヤバさだ…………!」


 こいつはもう止まらない。そう確信したノートは意識を切り替えた。


「わかった。絶対勝ってこい!」


「おう!!」


 そして始まったのはゲームジャンルを間違えているとしか思えない超絶技巧から生まれる凄惨な殺し合い(殴り合い)


 ノートは自分のできうる限りのバフをスピリタスにかけて、ネオンはひたすらにスピリタスを回復。

 前しか見えていないスピリタスを援護する。


「なんつう闘い方をしてやがるんだアイツは…………」


 其処にいたのは人間ではなかった。しかし獣の様でありながら獣でなかった。

 まさしく戦闘に生きる悪鬼。速度やその他諸々で勝てないことを瞬時に理解すると、敢えて攻撃を当てさせ自分は相手の急所を確実に攻撃する「肉を切らせて骨を断つ」を実践してみせた。

 人間、それが例えゲームとわかっていても殴られるのは怖い。それがいかにも悪魔然とした筋肉の塊みたいな敵から繰り出される高速の攻撃ならば猶更怖いだろう。


 だが、スピリタスは一歩も引かない。寧ろ前進している。楽しくて仕方がないと言わんばかりに歯を剥き出しにして獰猛に嗤っている。

 状況は明らかにスピリタスが劣勢なのにも関わらず、スピリタスがその悪魔を押していた。一つ拳が交差するたびに、スピリタスの拳の鋭さは増す。その場で学習しているかのようにその獣じみた反射神経と動きが洗練されていく。


「す、すごすぎる…………」


 ポツリと漏れたネオンの呟きに、ノートはケラケラと嬉しそうに笑った。


「ああ、あれこそ俺とユリンと共にあの頭のオカシイ世界で暴れまわり(かつ)て『Little Orge』と呼ばれた奴だよ。アイツは生まれた時代と性別を間違えてるんだ。アイツはあの時からなにも変わっちゃいない。むしろ蓄積された戦闘経験で更に化物になってる。

ネオン、あれは参考にしちゃダメだぞ。あれは直感型の最終地点みたいなもんだ。俺はあれに対抗可能な直感型なんて一人しか思い当たらない。そいつも真正の化け物だけどな」


 ネオンはスピリタスが昔からあの状態、というより『アレに対抗可能な存在がいる』というノートの言葉に絶句する。






「あの人、本当に人間?」


 ネオンが呆然としている一方、もしスピリタスが負けた時のために壁際に控えていたヌコォもポツリとつぶやく。


「あれはね、魂だけ戦国時代から持ってきちゃったような存在だから。機関銃の掃射を直感のみで裏拳使ってパリィする化物だよ。

 一応、二度目はほとんど通用しなくなるけど搦手を使われると弱いっていう弱点はあるけどねぇ。第一、アイツは(にぃ)相手に“負け越してる”んだよ。まあ(にぃ)も大概『アドリブと奇策と策謀の化物』だけどさぁ」


「負け越してる?」


 その意外な言葉にヌコォが首をかしげると、聞き間違いでないとユリンは頷く。


「そう、もちろんノート兄とのタイマンで。ステータス差がでるALLFOじゃもう無理だろうし、あっちもあっちで更に化物と化してるけどさ。なんて言えばいいのかな?戦闘における勘が人外じみてるんだよ。それを逆に利用できる(にぃ)レベルの頭のキレがないと真正面から闘った時には確実にぶっ潰される」


「ユリンなら、どう戦った?」


 ヌコォの中ではユリンは間違いなく近接戦闘の天才だった。しかし、スピリタスはタイプが違うとはいえそれを超えるような凄まじい戦いを繰り広げていた。故にヌコォはユリンならどう考えるのか気になった。


「簡単だよ。戦わない。逃げるだけ。あとは勝手にじれてミスるからそれを待つだけ。(にぃ)が初戦でとった戦法を丸パクリだけど、あのタイプはそれでいいんだよ。ただ、自慢になるけどアレがガス欠に陥って自爆するまで逃げ切る身体能力か頭のキレが必要だけどね」


 そういうユリンとヌコォの視線の先には、劣勢だったはずなのに獲物を追い詰める獣のような笑みを浮かべ、ステータスが劣っていたにも関わらず僅か10分で互角に殴り合い始めているスピリタスの姿があった。


「たぶん理論至上型のヌコォには一番の鬼門かもしれないね。ハマればあっさり対処できるけど、それを乗り越えられたら即座にアドリブで切り返せなきゃその瞬間に詰みだから。

 あの人は考えてるようでなんも考えてないよ。考えるより先に身体が動いてるから、思考スピードがそれを上回らない限り対処は不可能だね」


 スピリタスはなんだかんだ言って、ユリンが認めている3人いる内の2人目の師匠だ。ユリンは何度もブラッディメアリー(スピリタス)に挑み惨敗した。だがその戦闘は確実にユリンの戦闘技術を大幅に向上させた。

 お互いに直感天才型だからこそ、勝負を通して学び合えたのだ。

 因みに一人目の師匠は当然ながらノートだ。如何に相手の裏をかくか、意表を突くか、それが無意識に刷り込まれるまでユリンのバトルスタイルにはノートの思考が染みついている。直感型天才の癖に流れるように奇襲・悪辣なフェイクができるからこそ、ユリンは非常に恐ろしいのだ。


 そんなユリンは双剣を手の中で弄びながら、獰猛に笑ってみせる。


「でも、今なら真正面からタイマンできるよ」



 自分の力を試したく仕方がないような、そんなユリンの様子を見てヌコォは思う。

 この二人は、本質的に同種なのだと。


 そしてヌコォは頼もしい新戦力を観察し、これからどうパーティーを組むのか冷静に分析を始めるのだった。





「うっしゃぁ!んじゃこっからが本番だぜ!!」


 状況が動いたのは、ノートのフォローもそろそろ限界に近付いてきたころ。

 それに合わせてスピリタスは更にギアをあげる。


「〔金剛頑強〕!」


『今まで徒手空拳だけで殴り合ってきた』スピリタスはそこで“初めて”スキルを発動させる。それはオリジナルスキルで忘れられがちだったが強力な無比なユニークスキルの一つ。スピリタスの腕のガードにその剛腕が突き刺さり、今までならガードごと吹っ飛ばされていた。しかし、その代わりに硬い金属同士が激突しひしゃげた様な音がした。


「ハハハハハ!自分の攻撃で拳がお釈迦になったか!!」


 一時的に異常な硬化を遂げたスピリタスの腕をまともに殴ってしまった蟲の悪魔の腕の一本は砕け散って使い物にならなくなっていた。


「まだまだいくぜぇ!〔修羅の道〕!!」


 スピリタスも今までずっと馬鹿正直に殴られていたのではない。ノートの援護がきつくなるまで遊んでいた…………ところはなくはないが、真の狙いは別だ。


 ユニークスキル〔修羅の道〕。自分より強者に対し一定時間戦闘を続行しなおかつ『喧嘩師』の職業である場合、それまでにその敵からくらった攻撃分だけ、自分が徒手空拳で与えた蓄積ダメージ分だけ、徒手空拳の攻撃力を激増させるニッチなスキルだ。


 それにより威力が激増したスピリタスの拳が今度は虫型悪魔のガードした腕に突き刺さり、そしてその全てを跳ね返してきた堅牢なる鎧は悪魔の宿ったその拳にぶち抜かれた。

 その衝撃にガードを強制キャンセルされる虫型悪魔。

 今まで一度として見せなかったその無防備な状態となってしまう。


 スピリタスの目が餌を前にした捕食者のようにギラっと光る。


「〔覇道阿修羅憑き〕ィ!!」


 そして三つ目のユニークスキルを発動。スキルの熟練度が低すぎてたった三つのスキルを使っただけで(あまり育っていなかったとはいえ)ランク9にもかかわらずMPは枯渇、〔覇道阿修羅憑き〕も本来は長時間発動できるものだが10秒未満しか発動できない。

 だがそれだけあれば十分だった。


 そのスキルを発動するとまるでブレたようにスピリタスが3人重なって見える。

 それは一時的に自分を三人分に増加させるというオリジナルスキルに迫る凶悪なスキル。その分被ダメなども三倍化する危険なスキルなのだが、今のスピリタスにはそれが短時間しか発動しないのはプラスとなる。


「死ねえええええええ!!!」


 三つのスキルを組み合わせた怒号のラッシュ。一発一発がその装甲を粉砕し、腕を破壊し、頭をへこませ、今までの全てを仕返しするような連撃に次ぐ連撃。


『GUGAAAAAAAAAA!!』


 今まで一言も言葉を発しなかった虫型悪魔が悲鳴を上げる。


「《ルナティックレイジ》!」


「《バーサークスピリッツ》!」


 そこにノートの支援魔法と、回復から支援に切り替えたネオンの強力なバフ魔法が発動。スピリタスから赤と黒のオーラが膨れ上がりより凶悪な見た目になる。


「これで終わりだあああ!!」


 その援護を受けたスピリタスは大きくジャンプすると、完全にスタン状態になっている悪魔の頭を一番の得意技である回し蹴りで吹き飛ばした。



 余りに強力な一撃だったのか、首が勢いよくぶっ飛ぶ蟲の悪魔。

 スピリタスが着地した瞬間、それと同時に祝砲を挙げるが如く赤いポリゴン片が大爆発するのだった。





(´・ω・`)暫く休むといったな、アレは嘘だ(ってわけでもないのです。話の区切りがいい所まで予約投稿したのです)


PLネームのたくさんのご応募、誠にありがとうございます。

最後に、滑り込みで本日23:59までに締め切りを延長いたします。

その企画今日知ったんだけど(怒)という方、既にアイデアを出しているけどもっといい物が思いついたという方、大歓迎です。予想以上の盛況ぶりだったのでここまで無制限な参加型企画はこれが最初で最後になるでしょうが、一度企画を立てた以上しっかりと最後までやり切ります。

皆様のご応募を心よりお待ちしております。<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっ!?作者さん消えるな~ww [一言] PL馬鈴能斗(じゃがーのうと)
[気になる点] 「ああ、あれこそ俺とユリンと共にあの頭のオカシイ世界で暴れまわり嘗かつて『Little Orge』と呼ばれた奴だよ。アイツは生まれた時代と性別を間違えてるんだ。アイツはあの時からなに…
[一言] > その企画今日知ったんだけど(怒)という方、既にアイデアを出しているけどもっといい物が思いついたという方、大歓迎です。 そこまで言われるならば、ちょっとだけ別の方向のアイデアを提供する。 …
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