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No.390 鯉降し

詠唱:レビュー

効果:ゲリラが召喚される


 雷撃が落ち、赤い獅子と偽物が砕ける。

 すると絶叫と共に炎が弾け、再び赤い獅子が出現する。数は4体と先ほどより少ないが大きくなっている。炎で作られていた体はより実体を持って動いている。偽物の撃破が条件だったのか、視界の揺らぎと聴覚のノイズが少し減る。


 ノートから指示が出され、基本陣形から変化。JKによる耐久から攻撃手の攻撃が解禁され、スピリタスが前に出る。


 〔血染生壁〕で腕の防御力を強化。勝負師の能力で被ダメをアップしダメージ量を増強。

 近づいた事でヘイトが変動し赤い獅子がスピリタスに向けて炎を吐くが、耐火のバフを積んだスピリタスはジャストパリィで炎を反射。距離を詰めて獅子の飛び掛かりに対して更に大きく踏み込むと鼻っ面にカウンターパンチを綺麗に入れて吹っ飛ばす。


 【鯉降し】

 ランク50にて習得したスピリタスが習得した格闘スキル。

 発勁とカウンターの派生スキルで、タイミングは非常にシビアながらも指定部位にジャストタイミングで攻撃を当てる事で敵の飛び掛かり攻撃に対して強力なカウンターを可能とする。

 この時スピリタスは一時的なスーパーアーマーに近い状態になるので、重量差をある程度ひっくり返して敵を吹っ飛ばせるのが魅力的だ。通常のプレイヤーであればこのカウンターが決まっただけで発勁の効果も乗るのでダウンしかねない。獣でも人相手でも通用する強力なスキルだ。


 無論、タイミングは本当にシビアで、ミスれば攻撃を受けるのはガードもしていないスピリタスの方だ。なので非常にリスクのあるカウンターではあるのだが、リスクが大きいほどスピリタスの職業である【勝負師】は効果を発揮する。リスクを緩和しメリットを増幅する。


 仲間が吹っ飛ばされたことで他の赤い獅子たちもスピリタスに飛び掛かるが、スピリタスは体格差をものともせずに投げて、弾き、カウンターをして、まるで赤い獅子がじゃれているかのようにしか見えないレベルで全てを的確に捌く。

 無手の一番強い点は幅広い技能。投げもカウンターも直接攻撃もできる。


「《マナネイルガン》!」


 獅子を殴った手ごたえから半実体だと察すると、スピリタスはより効率よくダメージを与える魔法も利用し始める。金属性魔法で体内のエネルギーを増幅し、波動と共に敵のボディに直接打ち込む。ただ殴られるよりも内部にダメージが通る攻撃は半実体系にはよく効くのか、獅子は後ずさる。


 最初はスキルや魔法の使用に難色を示していたスピリタスだったが、戦っているうちにその有用性を認め、自分のスタイルを崩さないようにしながらもスキルや魔法を最大限生かす練習をした。結果、スピリタスの習得するスキルや魔法は補正が殆どなく使い手の技能にほぼ100%依存するような、本来扱いが非常に難しい物ばかりになった。だが、それでいい。人類最高峰の格闘系の才を持つスピリタスにとって補正は寧ろ邪魔なのだ。


「かかってこいやっ!」


 獅子との相性が非常に良いと察したスピリタスは、赤い獅子を一手に引き受けた。




[赤傷扁の女王シャザーラリーラ・ハディマド] 


「そぅれ!」


 スピリタスが赤い獅子たちを相手に大立ち回りを始めた一方で、トン2はうっすらと姿見えるようになり名前が表示されたボス本体に攻撃を行う。


 

 無手に対し、相手の実体が完全に補足できていない時に便利なのが薙刀の様な長物だ。

 透明な腕を躱して薙刀を振るうと火の粉が散り、同時にダメージを与えたことで条件を満たしたのか遂にボスの名前が表示される。


 ボスの揺らぎが大きくなり、透明な腕が燃え上がりトン2目掛けて繰り出される。それを半分勘で回避し、カウンターの切り付け。薙刀の力の流れを利用して更に次の攻撃へ。

 トン2の動きは点ではなく常に線で動いている。力の流れを理解し、適性な動きをその場その場で取ることができる。そして敵がどう動き、どの様に動けば相手のペースを崩せるかなんとなく理解できる。

 誰かに教わったわけではない。トン2はそれがなんとなくできた。この『なんとなく』の部分を習得しようと一生かけて努力しても会得出来ない人間がゴロゴロいる一方で、トン2は生まれつきその能力が備わっていた。


 遊佐家(ユリン)の様にスポーツ関係のエリートの血筋でもなく、九条家(スピリタス)の様に自然と有能な血筋が揃う家庭でもなく、土御門家(鎌鼬)の様に射撃界のサラブレッドでもない。沖田家(トン2)は本当に平凡なサラリーマンの家庭で生まれ、親族にもスポーツやゲームで名をあげた人物が存在しない。

 そんな沖田家の中でトン2は正にバグの様な存在。誰の何を遺伝しているか不明なレベルで世界最高峰の才能を宿して生まれてきた。


 PvP(対人)PvE(対エネミー)ではもちろん勝手は異なる。ユリンは繊細なバランスで成り立っている動きをする為に試合では長剣、プライベートでは双剣とスタイルを変えているが、トン2の場合はなんでも大抵武器として使えるのでこだわりはない。敵が人でも獣でも機械でも、相手のパターンさえ見えてしまえばあとは動きを逆算できる。 

 ALLFOの場合は敵の動きが非常にリアルなので、トン2からすると逆にやりやすい。仮想人格から相手の行動パターンを読み解き、最適解で返す。


 同じくボスを相手に攻撃をするユリンとフィーリングで合わせながら、見えない敵相手にもトン2は果敢に攻撃を行う。






 スピリタスとトン2が前衛として飛び出した一方で、鎌鼬は相も変わらず狙撃を続ける。

 スピリタスが投げ飛ばした赤い獅子を撃ち、赤い花からゆらりと湧き出してくる偽物の原型を撃ち、大ぶりの攻撃を狙うボスを撃つ。JKという要塞の後ろから視界の歪みを物ともせずに次々と銃を撃つ。

 ノートに弾丸の幻影をかすめさせた紛い物とは違い、鎌鼬の射撃は正確無比。本来プレイヤーの動きを強制するモーション補正が、逆に鎌鼬の動きに合わせるレベルで鎌鼬の動きは理にかなった動きをしている。


 そんな鎌鼬ですら、安定して優勝できず、世界ランク1位を一度も取ったことのない魔境がVR・クレー射撃という世界である。競技人口の多さに加えて選手生命が比較的に長いために世代交代がかなり緩やかなこの分野は、上を見上げれば化物ばかり。モーション補正を乗りこなすというより、むしろモーション補正が動きを参考にするレベルの理想形と人間に実現可能な動きの中間をとる事ができるのは当たり前で、その上でどのレベルまで集中力を研ぎ澄ませるか、点の取り合いで相手を妨害しつつ自分の得点を稼ぐかの勝負になる。

 鎌鼬レベルになると、どんな銃かは深刻な問題ではない。癖があろうがブレようが反動があろうが、何度も何度も撃てば体が最適化を行う。モーションと自分の動きと銃の性能ですり合わせを行い、理想形を実現可能範囲に落とし込む。


 弾丸、発射機構、ライフリング技術、スキル、魔法、それにパラメータ。色々な点で全てが成長をしていきたことで、鎌鼬の狙撃技術は更に磨かれていく。

 流れるように動くトン2のすぐそばを通る一発。

 スピリタスの頭の横を通過するような一発。

 ノートが操る死霊の股を抜くような一発。

 どれこれもスレスレを狙う発砲で、常人であれば一発放つだけでも手が震え脂汗がにじみ出る厳しい狙撃だ。アニメや小説で、一発逆転のほぼ実現不可能なプランの射撃。アニメなら1話、漫画なら5話くらい引っ張りそうなミラクルショットを、鎌鼬は当たり前のように撃ってくる。

 躊躇いはないのか。怖くないか。周囲は鎌鼬に問いかける。

 もし鎌鼬がミスをすれば、味方は背中から撃たれてそのまま総崩れになるかもしれない。鎌鼬のミスで戦線が崩れたことが明確なだけに責任はより重くなる。なのにどうして平気で撃てるのかと、皆は問いかけ、同時に鎌鼬には恐怖心や緊張といった概念が存在していないのではないかと考える。


 だが、そうではない。

 そのミラクルショットが鎌鼬にとって効率的だからで、恐怖しても迷っても結果は良くならない。それを知っているから、鎌鼬は小難しい事を考える前に撃つ。

 頭はクールに、心はもっとクールに。恐怖心も凍らせる研ぎ澄ました理性が指先の神経まで支配し、鎌鼬に理想的な射撃を可能とさせるのだ。



「(温存してもいけそうね)」


 鎌鼬は近くに湧きかけていた紛い物を散弾銃で吹き飛ばしながら余裕を滲ませていた。




ダンジョンや深霊禁山などで度々言及される『視覚補整』に関してわかりやすい参考映像がありましたのでURLを提示しておきます

https://youtu.be/nC-bVtpIMd4

もぺもぺ みんな好きだよね



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― 新着の感想 ―
[一言] 何か赤が多いなぁ。この赤って赤月の都とかんけいありますか? 視覚補正bgmも変わるんですか? bgmって何ですか
2023/07/01 16:36 わたしはたわし
[良い点] ネイルガンw ps高い人はどんどんピーキーなスキルが増えますね。 [一言] ALLFOでは、宝箱やミミックの扱いはどうなっていますか? ○クシー大根の親戚とも言えるピ○ミンの4が出ま…
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