No.364 ワンワン
GWは(ゴールデンウイーク)は終わったけどGWはまだ続くんじゃよ
人形がティアの手に戻ると、人形の纏う光とティアから薄っすらと放出された光が共鳴し交じり合う。ティアの姿が少し変わり、より人間らしい見た目に、透明度も減ってより実体を持った姿になった。
「なーるほどね。こうしてティアの指示に従ってアイテムを集めていくことでティアを強化していくのか」
正しくは進化とは違うが、それはある種の進化の様な物。今まで不安そうで泣きそうな顔ばかりをしていたティアは少し嬉しそうな顔をしてノートの周りをくるくると飛び回った。人形を二つも抱えているのでちょっとずんぐりしたシルエットになっているが、二つとも手放す気はないらしくしっかりと抱きしめていた。
「ノート!ちったぁ手伝ってくれっ!」
「はいよ」
ティアの喜びの舞いの一方で、ノートは耐久力の高いメギド系統の死霊を召喚。死霊は咆哮をしながら瓦礫を蹴散らし、赤黒蛇が張り付いてきても物ともしない。一瞬にして赤黒蛇だらけになる死霊だが、そこをJKとカるタの聖属性魔法で攻撃して纏めてダウンさせる。死霊は囮にしても心が痛まないし、死を恐れない。生物として歪んだアンデッドに一番的確に対応できるのは、皮肉な事だが同じアンデッドなのだ。ノートが少し動けば瞬く間に赤黒蛇は数を減らし制圧を完了する。
「それで次はどこへ行けばいいんだ?」
綺麗になった人形だが、千切れた右足はそのまま。ノートは後でタナトスに人形の修理でも頼もうかと思いつつティアに次のルートを聞くと、ティアは左ルートを指さす。
ゴールの見えない、意義も判らないマラソンは苦痛だが、ゴールが完全に見えなくてもマラソンをする意義が判ればある程度士気は上がる物だ。それにティアの実体化が進んだように目に見えて途中経過が見えると人はやる気を出す。
階段を降り、ホールに戻るノート達。湧いていた4匹のワンワン(魔法型)を倒して左通路に行くと、左側には長髪で手枷の付けられたアンデッドと、頭に金属の変な機構を嵌められたようなアンデッド、あるいは膨らんだ腹から幾つも細長い手が出てきて魔法を撃ってくるアンデッド達が壊れた牢屋からお出迎え。赤黒蛇よりも実体があるし聖属性が無いとトドメを刺しにくいみたいな特長がない分、アサイラムにとっては対処は楽。素早いし怯まないし攻撃力も高ければ呪いも魔法も平気で使う本来であれば恐ろしい敵だったが、アサイラムの連携を前に全滅。
再び通路を進み、崩れかけた階段を上り、またしても現れた金仮面をトン2と鎌鼬が連携して討伐。此度の金仮面は棒の先端に細長い三角錐を取り付けた変な武器と大型のペンチの二刀流で、もれなく三角錐の方は先端が4つにパカリと開き噛みついてきた既に見ていた為にトン2も普通に躱して鎌鼬の援護を受けつつ勝利。左の牢屋ではぬいぐるみから千切り取られた片耳が発見された。その大きな片耳をティアに渡してみると、千切れた片耳は元のあった場所と思われる部分にくっつき、ティアはまた人間らしくなると同時にぬいぐるみを強く抱きしめ泣き出した。
まずは本体。続けて千切れた片耳。残るは恐らく千切れた右脚。右を制圧し、左を制圧し、残すは正面。
「次で終わりかな~?」
「Well……I don’t think so.さっきティアちゃんに見せてもらったんだけどね、ぬいぐるみを。何かほつれた跡があるよ、左胸の部分にも」
「確かにそうだな。ぬいぐるみの修復度が上がらないと気づきにくい感じだが、確かに何か千切れた感じがするな」
「だとすると、脚か胸の何かは『地下』にあるはず」
「ヌコっちの感知に反応があるってやつっすか?」
「この正面に続く先にも反応が多い。敵はランクが高くなるほど感知しにくくなるけど、おそらくこの先の敵は敢えて感知させている。その分強い個体が大量に出現すると思った方がいい」
ノート達がホールに戻ると、番人の六脚脳犬たちは再度ポップしており、1回目と2回目の特性全てを兼ね備えた強力なアンデッドとして戻ってきていた。準備はできていますよと言わんばかりの熱烈な歓迎だ。だが、ここで長引くと面倒と判断したノートとヌコォが本格的に参加すれば1回目と同じくらいの戦闘時間で撃破する事が出来た。
そこで一度テントを張りノート達は休憩。グレゴリのギフトを使ってインベントリを整理したノート達はタナトスから送られてきた食事を採ると、遂に正面扉の奥に挑む。
もはやティアに一々聞くまでもない。ぬいぐるみを取り戻し同時に進化することで大分人間に近づき、より人間らしい反応をするようになって情緒が幾分か安定してきていたティアを以てして、見つめるだけで震える場所。
左右の扉は鍵が壊れていたのでノート達も普通に何の違和感も無く進めたが、正面の扉には大きな閂がかかっていた。それも、ホール側に。奥にある物が大事なら鍵は本来内側にあるべきだ。その閂がホール側にあるという事は、そういう事である。その上、正面扉にはよく見るとホール側にも鍵穴があり、両方からロックしている扉であることもわかる。ノート達が金仮面からドロップした鍵を刺しまずホール側の鍵を開錠。続けてさび付いた大きな閂を強引に引っ張ってこじ開ける。
「Open sesame~」
JKが先頭に立ち、気の抜けたことを言いながら重い重い扉をこじ開ける。すると、中から一気にソイツらは溢れ出してきた。
◆
「ヤバいヤバいヤバい!下がれ!」
気圧の違う部屋の扉を開けた時、扉の隙間に勢いよく空気が吸い込まれるように、扉の先にいた死霊がドーーーン!と勢いよく溢れ出てきた。
まさしくそれはモンスターハウス。ダンジョンの登場するゲームに於いては非常に初期から存在している概念で、大量のモンスターが配置されている部屋だ。プレイヤーにとっては危機感をあおられる展開ではあるが、同時に大量のモンスターと戦えるので大きなパワーアップが望めるし、モンスターハウスを乗り切るとお宝などのご褒美が得られたりとゲームに刺激を与えてくれる要素だ。
ただ、多くのモンスターを配置すると言っても限度がある。
本来であればホール側からの押戸になっていた門が、あまりの死霊の勢いに逆に推されて門をひしゃげさせながらこちら側に開く。死霊同士には極端に仲間意識が欠落しているのは元々だが、門が開き切る前に後ろから勢い押すものだから門の一番前に居た死霊達は容赦なく押しつぶされている。その動きは、狂乱ぶりは、生者を憎むが故にノート達を我先に攻撃してやろうとしている以上の意思を感じられた。死に物狂いで、ここから絶対に出てやると言わんばかりの勢いだった。
アンデッドの大きさはマチマチだが、大体は3m前後。ちょうどバスケットボールのゴールリングくらいの高さ。左の通路に出現した個体に比べて筋肉質でガタイの良い物からやせ型とレパートリーが豊富で、そのほぼ全てがしっかりとヒト型を保っていた。
特徴として言えるのは、両手を背に枷が嵌められているなど、枷が嵌められている事。あるいは、ボルトの様な物が刺さっている個体。服などはなく、肩が異様に膨れ上がり頭と癒着してるので変な見た目になっており、顔は大きく肌は赤茶色で凸凹している。その上、体の関節のどこからしらが破壊されているように変な動きをする。おまけに身体に心霊写真の様に他の顔が埋め込まれているのが質が悪い。特性は驚くほどシンプル。状態異常ウルトラメガ特盛の鼓膜を破壊しかねない病原液嘔吐、圧倒的なタフネスだけ。ゾンビの強さを徹底して極めたようなアンデッド達だった。
【おまけのおまけ】
バルバリッチャ:スリザリン
アグラット:スリザリンorハッフルパフ
ザガン:レイブンクロー
けものっ子サーバンツ:だいたいスリザリン
オロチ:スリザリン
キサラギ馬車:グリフィンドール?
タナトス:ハッフルパフ
アテナ:レイブンクロー
ゴヴニュ:レイブンクロー
ネモ:ハッフルパフ
クリフ:グリフィンドール
メギド:サツマハン
グレゴリ:グリフィンドール
イザナミ戦艦:スリザリン
ダゴン艦長:グリフィンドール
ヒュドラ副艦長:グリフィンドール
エイン:ハッフルパフ
レクイエム:スリザリン
ザバニヤ:サツマハン
ツッキー:スリザリンorレイブンクロー
骸獄:アズカバン




