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No.348 PKK

Put on Happy Faceace


 


「まさか、アイツらか!?逃げろ!」

「こ、殺される!」 


 PK団体は、その一見中堅プレイヤー達にしか見えない10人程度の団体が移動しているのを見ると慌てて逃げようとする。しかし、もう遅い。彼らの動きは『姿を消して上空から視覚を共有する死霊(グレゴリ)によって全て見られている』のだ。


「グレゴリがマーカーを張りつけている。ソイツらだけを狩ってくれ」  

『了解』  

 

 ノートいう名の狩人の元で動く猟犬達が瞬く間にPKプレイヤー達を殲滅する。彼らにとってはこれが本業、得意分野。散々シナリオボスに吹っ飛ばされた鬱憤を晴らすように一方的にPKプレイヤー達を狩っていく、その勢いはすさまじく、PKプレイヤー達が集まるエリアでリスポンしたPKプレイヤーにより瞬く間にPKプレイヤー狩りの噂が流れた。


 PKK。PKkiller。

 それはPKを行う悪質なプレイヤーだけを専門に狩る対人勢の事を指す。ハロウィンのアップデートによりPKプレイヤー達に対する規制が強まり、プレイヤー達がPKプレイヤー達を退治する旨味も増えた。それによりPKKを積極的に行うプレイヤー達もかなり増えてはいたのだが、そんな奴等とは比較にならない脅威度をノート達は持っていた。

 そのPKは対人戦ではない。狩りですらもない。ただの殲滅。PKプレイヤー達には人が多く入り混じるキャンプ地の中、なぜ自分達だけを正確に攻撃できるのかまるで理解できない。まさか上から監視されていて、PKプレイヤー達を判別するスタンプが幻影で張りつけられているなどと想像もしない。 

 『生産組組合』も治安維持のために最悪PKも辞さないが、下手に戦うと対人勢が逆に活性化するためにできる限り戦闘は避けていた。だが、ノート達の場合は違う。戦闘にならないのだ。PKプレイヤー達が出現した場所をまるでリアルタイムに中継されているかのように認知し急行。直ぐにPKプレイヤー達を殲滅する。


 戦いもさせず、逃げも隠れもさせない。街の外周を回りながらノート達は次々とPKプレイヤー達を狩っていった。魂を寄越せと、一匹残らず害虫達を潰してく。


「どういうことだ?『生産組組合』が対PKチームでも結成したのか?」

「わ、わかんねぇよ。気づいたら地面に倒れてたとか、首切られたとか、良くわかんねぇ話が多いんだよ」


 PKプレイヤー達は混乱した。

 『生産組組合』に対抗し、あるいは他のPKK団体に対抗し、PKプレイヤー達も徒党を組んでキャンプ地の一角に集まっていた。言わばキャンプ地の中の暗黒街。『生産組組合』も完全にPKプレイヤー達を追い出さずにひとまとめにすることで治安の強化を図っていた。故にPKプレイヤー達の中でその情報が回るのは非常に速かった。

 

「所属とか、誰か分かんねぇのか?相当PK慣れしてんだろ?同業じゃないのか?誰かしら知ってても…………」


 なんとか一部のプレイヤー達がピントも会ってない様なスクショして情報を回しても、誰もそのプレイヤー達を知らない。青い髪の女に率いられた者達が暴れている事しか殆ど情報らしい情報がない。途中から一団を二つに分けたようで、そのPK団体の神出鬼没さが増していた。


「どうする?本当にやんのか?」

「今更なんだってんだ。壁は絶対に壊す!イベントだってもう終わりだ!ここでやらなきゃ意味がない!」


 『生産組組合』が中心となり治安維持に努めているが、如何せんキャンプ地が大きくなりすぎた。『生産組組合』と同盟関係にあるアメリカや中国の攻略組や、それに乗っかりたい他の国の攻略組も『生産組組合』に繋がりを持つきっかけとして協力を申し出た。それを期にネットワークは更に広がりはしたが、それでも尚完璧に全てを見張ることは不可能だ。故に『生産組組合』もそれを見越してPK陣営を隔離した。壁を作り、PK団体が自分達の側に面した穴を開けようが切り離せるようにしている。

 だが、自己顕示欲に溺れた連中は止まらない。暗黒街に面した壁に穴をあけ、更にそこからトレインを行い勢いに乗じてPK団体を隔離する壁までぶち抜こうと計画した。やり方は既にギガ・スタンピードで示されている。キャンプ地周辺にスタンピードで大量に湧く敵性モンスターをトレインし、一気にキャンプ地の中に突っ込ませるのだ。 


 特に、今のキャンプ地は通常の括りを超えて限界以上に敷地を広げている。壁の外に更にキャンプ地を作ってそれを覆う壁を作り、その更に外にテントを置く者達が現れ、壁を作る。今の4章キャンプ地は増設に次ぐ増設で5つにもなる壁が展開されていた。

 中央にいるのは当然『生産組組合』を中心とした団体。治安の良さは屈指だ。その中央区の人口密度が高くなりすぎたので後からきた組が中央区の周りに纏まってキャンプ地を置き、その更に外に『生産組組合』主導で壁が作られた。こうして区画整理が行われ作った複数の壁と門を『生産組組合』が管理するからこそ、『生産組組合』主導でのバス事業が成立している。


 だが、『生産組組合』はPK団体を隔離してからそのエリアには一切手を出さなかった。円状に展開しているキャンプ地は暗黒街だけは徹底して隔離しているので、円が長いU字状に抉れているのだ。なので暗黒街は中央から外へ向けて縦長に広がっている変な状態となっている。それはつまり、暗黒街の最外壁さえぶち抜いて皆が上手く連携すれば、一番治安のよい中央壁まで一気に魔物の群れを突撃させることができるという事である。

 ただしそれはある意味自分たちの安全圏となる暗黒街に自分たちで穴をあける様な行為だ。だからこそ、PK団体も討伐イベントが終わりそうなギリギリまで事を起こすタイミングを計っていたのだ。どうせ追い出されるなら最後は派手にやってトンズラしてやろうというどこまでも迷惑な連中である。


 キャンプ地はシステム上、ALLFOの“歪み”が必ず現れる。多くのプレイヤー達が集まる場所でありながら、中立エリアの為にPKが可能。普通のオンラインゲームでいうなれば、街の中なのに戦闘行為が可能なのだ。暴れようと思えば幾らでも暴れられる。キャンプ地はリスポン地点も兼ねているが、キャンプ地内に教会が結界を張るまでは各自のテントしかリスポン地点として機能していない。一度トラブルになりお互いのテントを破壊すれば泥沼の抗争の始まりだ。足の引っ張り合いはいくらでもできる。

 その火種は国ごとにある確執だったり、PK団体とPKK団体だったりと色々な事が考えられる。彼らにとっては彼らなりの主張あっての戦闘なのだが、火種は小さくても引火してどうなるかは誰にも予測できない。子供の単なる火遊びが街一つを焼き尽くす災いにだって場合によってはなりかねないのだ。故に『生産組組合』はPKK団体にも「討伐イベント中は暗黒街に手を出すな」と警告していた。

 人は喜んで自己の望むものを信じる。始めた時はそれがどれ程の善意から発したことであっても、時が経てば、それではなくなる。地獄への道は善意で舗装されている。

 PKK団体からすれば暗黒街にPK団体が集まっている今、PKプレイヤー達を一網打尽にできるチャンスだ。自分たちはALLFOの悪性腫瘍であるPKプレイヤー達を狩っている、“みんなの為に”。

 一見、善行の様に見える行動だ。だが、争い自体が危険な火種になる。窮鼠猫を嚙むように、不要に追いつめればPK団体がどう暴れるか定かではない。故にそっとしておけと『生産組組合』は口を酸っぱくして暗黒街に手を出すなと警告し続けていた。暗黒街にある間仕切りに治安部隊が常駐しているのは何も暗黒街を見張る為だけではない。本質的にはPKプレイヤー達と変わりない「自己顕示欲に飲まれ最善をはき違えた正義マン」が暗黒街に突撃するのを防ぐためだ。

 PK団体というのは油から燃え盛る火だ。一方で正義は水の様な物である。いたずらに少量の水をかけるだけではむしろ火を爆発させるだけ。やるなら消防車も斯くやと言う勢いで水を掛けなければ鎮火などできない。

 

 そう、それこそ、PK団体を抵抗もさせずに一方的に殲滅できる程の戦力が無ければダメなのだ。


 故にPK団体からしても、急激に行動を起こしたPKK団体の出現は完全に予想外。しかも進路が徐々に暗黒街へと向かっている。PK団体の首領たちは焦りながらキャンプ地周辺にスタンバイしていた味方陣営にGOサインを出した。

  

 


Then everything's Okay

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― 新着の感想 ―
[一言] >青い髪の女 青米様の女装だぞ!教団の者ども出あえ出あえっ!w
[一言] ギガスピ時の優秀なPKたちはそういえばいるんかな?
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