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No.288 ジャックオランタン

シャンフロを読むのだ



「うぉー、すげーーー」


「てか唐突だなこのイベント」


「心臓部にある『ジャックオランタン』を引っこ抜けば倒せるんだよね?」


「ハロウィン要素雑じゃね?」


 イベント襲来する機神の大きさは平均4m程度。ただし、これはあくまで平均だ。【Heorit】は個体ごとに全く動きが違うという手の込みよう。実質的に、何百種類というレイドボスが世界に解き放たれたのと同じだった。

 そんな【Heorit】もコラボ限定の弱点があるらしく、心臓部分にある『ジャックオランタン』を引っこ抜けば殴りあって完全に破壊しなくてもお手軽に倒せるらしい。だが、形状が一体一体違うので心臓部分がそもそもわからないというしょうもない仕様となっていた。コラボになると世界観をあわせようとして設定が多少雑になるのはよくあることだが、それはALLFOも同じだったようだとゲーム脳なプレイヤー達も直ぐに理解した。


「もう少しハロウィン要素欲しくない?」


「こんな仮装グッズがギルドで売ってたぞ」


「何そのシーツ」


「メジェド様」


「私はヴァンパイア〜。見て見て付け歯もあって攻撃にも使えるんだよ!ALLFOはヴァンパイアっているのかな?」


「見てみて俺も!じゃじゃーん!」


「なんでハシビロコウ?しかも半裸で双剣?しかも変なタトゥー入ってるし」


「コスプレだよ!知らないのか!?このタトゥーはコスプレ用のシールでな、元ネタはシャングリおわぁ!?」


 ただ、ALLFOもそれだけでハロウィンイベントを終わらせる気はないらしく、一応仮装イベントなども同時に進行しており、聖女達が率先して仮装することでイベントを盛り上げ、ストーカー、もとい、聖女親衛隊は泣いて喜んでいた。

 残念なのは、【Heorit】は仮装に興味が無かったことだろう。自分の仮装について話しているプレイヤーに目掛けて襲来と同時に一切の容赦もなく襲いかかってきた。


 剣と魔法の時代で科学が止まっていたALLFOからすれば、ビームや銃を平気でぶっ放す【Heorit】達は災害そのものだった。故にプレイヤー達は慌てふためき、しかし、楽しんでいた。直近に起きた決闘騒ぎの蹂躙劇よりもちゃんとゲームをしていたからだ。


 だが、どういうわけか、『亜祭羅武連合』が滞在中の地下帝国には『Heorit』の中でも極めて攻略難度の高い個体が送られてきた。まるで迷惑料のツケとでもいうかのように。楽しいという感情が湧く前に、『亜祭羅武』のメンバーは闘争に身を置くこととなった。



 


「うぉ~~~~!?バカバカバカバカ!」


「キャ~ップ!回復テーブル間に合わな~い!」


「6秒待機!カるタ、A陣形!メギドはカバー!レクイエム、音波!クロキュウ、アシュラはゴロとスイッチ!」


「ノート兄さん、L1」


「オロチ、カニ吐き出せ!」


『オロロロロロ』


「全員M陣形、イザナミ落とすぞ!」


 祭り拍子は、数々の修羅場を潜り抜けてきた。三章のシナリオボス『金燈の幽童エリヅ』はかつてない死闘だったと断言できる。そこに更に強力なメンツが加わった。向かうとこ敵無しだ。

 そんな調子に乗って伸びた鼻をへし折るどころかロードローラーで鼻ごと真っ平にするが如く、ハロウィンはコラボはアサイラムに対しては“ガチ”だった。コラボは楽しんでもらえてなんぼ、みたいなそんなお気楽思想をぶち壊す様に【Heorit】の強さは本物だった。難易度がインフェルノしていた。


 【Heorit】は生きてるありとあらゆる生物がムカつくのか、プレイヤーだろうがMOBだろうがお構いなしに襲いかかってくる。おとなしかったのはイベントアナウンスがあり、カウントダウンが終わって、空間の裂け目から不時着したようにボロボロの機神たちが不時着してサポートAIによる運営のアナウンス中に立ち上がるまでのほんの30秒くらいだった。


「死ねぇ!」


 蟷螂を組み合わせた人型Heoritの首下のフレームにヌコォがフックを引っ掛け、メギドが思いきり引く。ゴロワーズが泣きながらヘイトを集めている間にその真正面から突撃したアシュラとクロキュウが鎌の斬撃を躱し、羽のターボを引っ張って更にフレームを引きはがす。そのフレームとフレームの間の僅かな隙間に突っ込んだ堕天使が心臓部のジャックオランタンをぶち抜いた。


 途端に黒い液状になり溶けて消えていくHeorit。苦労して倒しても、単なるHeoritの一体に過ぎない。蟷螂人型は汎用シリーズなのか同系統のHeoritがまだわんさかいる。蟷螂型に思うところがあるらしいメギドはいつも以上に元気だ。


 Heoritは『街』に襲撃する。ただし、それはプレイヤーのいる街だ。故に、地下帝国はノート達がいるせいでその対象になった。問題はノート達が少数先鋭なことで、さらに言えば、地下帝国自体が天然の要塞になっているので、通常より多く、通常より強いHeoritが送り込まれたことだ。


 ノート達はチーム分けをしてHeorit撃退に挑んだが、そのチーム分けは極めて特殊。全てのチームにノートが入っているというノートの脳をパンクさせかねない状態だった。だが、それ以外に方法が無かった。


「のっくんヘルプ~!」


「こっちもヤバいっすね~!」


「βはU!γはH!βに俺が移る!グレゴリはγカバー!スピリタスは下がってメギドとスイッチ!トン2は3s突撃、キサラギ来い!」


 とめどなく、頭の中で溢れかえる予想図の中から一番真面そうな物を現実とする為に次々と指示を出していく。もはや言葉で指示することすら煩わしいように、死霊達には脳内で先に指示を与えながら戦況を操作する。


「掴まって!」


「サンキュー!」


 鎌鼬の手を掴み、強引にキサラギ馬車の上にノートは乗り上げる。

 同時にその後ろから飛び込んできていた蟷螂人型Heoritに銃で牽制し、すかさずキサラギ馬車に取りつけられた銃を掴むと連射する。


「そろそろこのウェーブは捌けそうね」


「そうでなきゃ困る!」


 ノートはキサラギ馬車に細かく指示を出して攪乱するようなコース取りをする。その間にも矢継ぎ早に指示を出し、3つのチーム同士が接触しないようにバランスを保つ。

 ノートを総合指揮官として、α、β、γに、ヌコォ、ゴロワーズ、カるタが副指揮官として割り当てられ、それ以外はノートの指示によってその場その場でシャッフルされる。長らく『祭り拍子』の副指揮官だったヌコォは当然として、ゴロワーズ、カるタも指揮能力持ちだ。ゴロワーズは任されたメンバーに、カるタはノートの強引で直感的な指示にまだ馴染めていないが、そこはノートがフォローしてなんとか回している。一体一体捌く方が楽に決まっている。だが、それではつまらないし、練度が上がらないと、敢えて負荷をかけてノート達は戦っていた。

 人数が多くなれば強くなる。それは当然だ。一方で、ALLFOはハードな事に挑まないとランクが上がらない。これを両立するには普段の攻略からハードな事をするに限る。ノート達にとってはいつもの事だが、ゴロワーズとカるタはまだついていくので精一杯だった。


「ウララララララ!!邪魔だカスぅ!!」


「ゴロ助!テンション上がりすぎて前出すぎんなよ!」


「うぃよ~ん!」


 メイスと背中の盾、銃の三刀流で暴れるのは最近まで偽ロストモラルを実質的に率いていたゴロワーズ。ALLFOでは後衛でセーブし、裏でひっそり近接系技能を磨く日々が続いていたが、もう弱いフリをしてする必要は無いのだ。ゴロワーズはキチゲ解放をするようにノビノビと戦っていて、ハイになっていて、いつも以上に感情の起伏がハリケーンだった。

 それでも尚周囲に回復を打ち、攻撃をしながらヘイトコントロールを行い、パーティーを回転させる。ゴロワーズ本来の強さが、徐々に、徐々に、ALLFOでも完全に蘇り始めていた。


 近接では確かにユリン達には敵わなかった。遠く及ばなかった。絶望的なまでの才能という絶壁があった。いくら努力しても、頭痛がするほどログインしても、欠片も届くことはなかった。壁の頂点すら見えなかった。

 指揮センスでも、ノート程のスピードも、同時処理量もなかった。ジアの様な全てを自分の力で引っ張り上げられるほどの力もなかった。

 ヒーラーセンスもそこそこ。これもセンスの世界なので、幾ら鍛えて学んでも、セオリーは理解できても実際に動けるかは別問題だった。


 だが、これらすべてのセンスをバランスよく兼ね備えている人物というのも、極めて希少だった。バーサクヒーラーなどという際物ビルドで尚且つ指揮もできる。これがどれだけ特異な才能なのかをゴロワーズ自身が一番良く理解できていなかった。

 そしてその才能は、ノートという絶対的な指揮官がいることでより強力に作用する。直接的な現場指揮という観点に於いては、ノート達と比較してもゴロワーズは頭一つ抜けていた。


「スピ姉さんソイツこっちへ引き付けたら頭下げて~!ん、おっけ~。メギちゃん今戦ってる奴抑えといて~!」


 その指揮とは対照的な指揮センスを見せたのはカるタだった。その場その場のアクシデントを咄嗟に処理していくゴロワーズの指揮とは違い、カるタの指揮は緩やかで、咄嗟の判断は各自に任せるスタイルだった。これはカるタがFPS畑の指揮官という事情があった。

 VRFPS、厳密には非常に高度化したサバゲーだが、これは咄嗟の指示があまり通用しない事が多い。どのルートで、どんなものを使って攻めることを事前に説明はできても、実際に接敵したら最悪は音速より早く結果が決まる。決まってしまう。最終的なジャッジは、現場に強く依存する。なので、非常に緩い指示を与え、あとは自分でスナイプするか回復魔法でフォローして問題を解決するというスタンスに落ち着く。


 ゴロワーズはその場凌ぎだが指示は明確で、カるタは先読みの指示だがかなりアバウトな指示。前線でガンガン殴りに行ってヘイトをコントロールする指揮官と、後衛で狙撃しながら回復でフォローする指揮官。

 異なるタイプの指示に咄嗟にメンバーが合わせられるのも、ノートのフォローがあるのは確かだが、死霊は機械的で、ユリン達が柔軟に対応できるだけのプレイヤースキルを持ち合わせているからこそだ。


 『亜祭羅武』が完全なチームとして機能するには、まだもう少し時間がかかりそうだった。

 




シャンフロPV公開されているので見ましょう。見て。お願い

https://youtu.be/liQQP06ac00




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― 新着の感想 ―
[一言] シャンフロの原作もアツい場面だし、アニメももうすぐくるし、ゲームも出るしファンとしては最高に楽しいですね!つかPVカッコよすぎ 問題は、目先のソムリエ試験がむずすぎて泣きそうなこと
[一言] シャンフロはVRMMO界隈に大打撃を与えた 唯一誇れることは投稿当時から見れてたこと
[気になる点]  >ALLFOはヴァンパイアっているのかな?  あれ?ノーブルディブルヴァンパイアとかインフェクテッドスレイヴヴァンパイアとか黒死撒疾鬼とかってひょっとしてALLFOにおけるいわゆる…
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